債権法改正後の民法の未来 22
役務提供契約(1)
橋田法律事務所/ 岡本正治法律事務所
弁護士 橋 田 浩/弁護士 宇 仁 美 咲
3 議論の経過
(1) 経過一覧
会議等 | 開催日等 | 資料 |
第16回 | H22.10.19開催 | 部会資料17-1、17-2(詳細版) |
第17回 | H22.10.26開催 | 部会資料17-1、17-2(詳細版) |
第24回 | H23.2.22開催 | 部会資料24 |
第26回 | H23.4.12開催 | 部会資料26 |
中間的な論点整理 | H23.4.12決定 | 同補足説明 部会資料33-7(中間的な論点整理に寄せられた意見の概要(各論6)) |
第57回 | H24.9.18開催 | 部会資料46、47 |
第58回 | H24.10.2開催 | 部会資料46、47 |
第1分科会第6回 | H24.10.9開催 | 部会資料46 |
第68回 | H25.2.5開催 | 部会資料57 |
第71回 | H25.2.26開催 | 部会資料59、60 |
中間試案 | H25.2.26決定 | 中間試案(概要付き) |
(2) 役務提供契約
(ア)現代社会においては、民法典が想定していなかった様々な役務提供型契約が存在し、現在の解釈では、無名契約などとして処理されるほか、準委任がその受皿規定としての役割を果たしておりいます。るが、役務提供型の契約であって既存の典型契約のいずれにも該当しないものをすべて準委任の中で処理することが妥当でないことについては共通認識が得られています。
(イ) しかし、典型契約に該当しない役務提供型契約をどのように取扱うかについては、どのような契約類型を念頭に置いて規定を設けるのかという点を抜きにして検討することができません。そこで議論の過程において、規律のあり方として
- ① 医療や教育など、具体的な役務を目的とする契約類型を個別に取り上げて新たな典型契 約を設ける考え方
- ② 請負や委任と並んで、具体的な役務ではなく役務提供一般を対象とする射程の広い典型 契約を設ける考え方
- ③ 請負や委任などの既存の役務提供契約を包摂する役務提供型の契約全体に適用される通 則的な規定を設けるという考え方
等が提案されました。
このうち①については、様々な役務提供型の契約の中から、典型契約として取り上げるだけの特徴を有する具体的な役務を取り出すのは容易ではないことから実現には困難が伴う、③については、現在個別の典型契約とされる請負や委任の上位に適用される役務提供の総則的な規定を設けると、ある契約に適用される規定が分散して置かれることになり、かえってわかりにくくなるという批判がありました。②については、支持する意見があり、役務の提供を目的とするという一般的な要件によって適用範囲を画したうえで、請負、委任その他の役務提供型の契約類型に該当するものを除外し、残ったものを適用の対象とする典型契約を設けるという考え方が検討されました(部会資料46、民法(債権関係)の改正に関する中間試案の補足説明501~502頁)。
また、このような役務提供型契約の受皿規定を設ける場合には、これまで受皿として機能してきた準委任との関係が問題になり、準委任の範囲を限定することになると考えられます。そこで、準委任の規定の適用範囲を限定するという考え方が示され、役務提供型契約の受皿規定を設けることの当否とともに議論されました(部会資料46)。さらに、役務提供型の契約を設けるとした場合でも、設けることのできる規律の内容は役務提供者の義務の内容、報酬の支払時期、役務提供契約が中途で終了した場合における報酬請求権の帰趨、契約終了の原因や効果などに限定されるのではないか、それであれば役務提供型契約を設ける必要はないのではないかといった議論もなされました(部会資料46、47)。