ベトナム:食品安全法に関する政令の改正(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 カオ・ミン・ティ
前回に続き、食品安全法(法55/2010/QH12号)の細則を定める新政令15/2018/ND-CP号(「新政令」)による改正のうち、実務上重要と思われる点についてご説明する。
食品事業所認証の除外の拡大
食品事業所(食品を生産し又は流通させる事業所)は、食品安全法34条に基づき、食品安全基準を満たすことの認証(「食品安全事業所認証」)を取得することが原則として義務づけられているところ、この取得が免除される対象が拡大した。すなわち、旧政令12.1条各号より免除されていた零細事業所に加え、新たに、包装済み食品の流通事業所、食品用容器包装等の生産・流通事業所、ホテル内のレストラン、GMP/HACCP/ISO22000等の認証を取得した食品事業所等は、食品安全事業所認証の取得は不要となった(新政令12.1条各号)。これにより、包装済み食品(完全に包装されてラベルが付され、さらなる加工又は即時の消費が可能なものをいう(食品安全法2.27条))の販売のみがなされ、それ以外の食品の販売や食品の生産がなされない小売店舗は、「包装済み食品の流通事業所」に該当し、食品事業所認証が不要となる。
輸入食品の食品安全検査
食品安全法39条は、ベトナムへの輸入食品は輸入時に食品安全検査を行うものとしているが、この食品安全検査の免除対象が新政令により拡大された。すなわち、旧政令14.2条で認められていた免税範囲内での個人持ち込み消費や、研究開発用のサンプル目的の場合に加え、フェア・展示会での展示目的、輸出用の食品の原料となる食品など、ベトナム国内市場で流通しないものなどについては、食品安全検査が免除になった(新政令13条)。加えて、食品安全検査にあたっては、簡易検査方式(1年間の総輸入ロットの5%以内でのランダムな書面検査)が可能なことが明記され、食品安全検査についてベトナムと相互認定条約締結国からの輸入食品などは、簡易検査方式の対象とされた(新政令16条以下)。
サプリメントへの規制強化
サプリメント等の広告は、事前に広告内容を当局に登録することが必要であるが(食品安全法8条、新政令26.1条)、サプリメントの広告には、そのサプリメントが医薬品に代替するものではない等を記載することが義務づけられた(新政令27.3条)。また、食品衛生法19条、20条及び21条においては、食品の生産、保管及び輸送に関する一般的な安全基準が定められているが、これに加えて、新政令は、サプリメントの製造業者に対して、品質マネジメントシステムの構築、品質管理部門の設置、専門家の配置、各種内部規程の整備、各種書面の保管等を義務づけ、さらに2019年1月1日以降は保健省のガイドラインに従ってGMP基準を採用することを義務づけている(新政令28条)。
以上2回に分けて説明したとおり、新政令は、食品一般については手続的負担の軽減を目指す姿勢が鮮明である一方で、安全性が懸念されることの多いサプリメントについては規制を強化する方向性を示しており、経済性と安全性の両者にバランスよく配慮した改正であると評価することができる。保健省等の管轄当局によって改正法の趣旨に従った運用がなされるかどうか注目したい。
以 上