中国:外商投資法(草案)の公布(前編)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 川 合 正 倫
「外商投資法(草案)」が2018年12月26日に公布され、2019年2月24日を期限としてパブリックコメントが募集されている。中国では長年にわたり、外国投資家が投資する「外商投資企業」に対して、「中外合弁企業法」、「中外合作経営企業法」及び「外資企業法」のいわゆる「外資三法」に基づく管理がなされてきたが、外資三法による管理を刷新し、外商投資企業を統一的に管理する「外国投資法(パブリックコメント版)」が2015年1月に公布され、その立法動向に関心が高まっていた。外国投資法(パブリックコメント版)では、外国投資者が支配する企業に関し170条にのぼる詳細な規定がなされていたが、このたび公開された外商投資法(草案)は39条と大幅に簡素化された内容となっている。外商投資法(草案)では、外国投資法(パブリックコメント版)で使用されていた「参入管理」「国家安全審査」「情報報告」「監督検査」といった国による管理を想起させる内容は、独立の章を構成することなく個別の条文において概括的な規定に留まり、「投資促進」や「投資保護」といった外国投資を奨励する内容が中心となっている。これは近時の米中間の熾烈な貿易摩擦を受け、中国として外国投資を歓迎し、外資による投資を奨励し、外商投資企業に対して内資企業と同様に保護する姿勢を表明したものと考えることができる。
外国投資法 (パブコメ版) |
外商投資法 (草案) |
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第一章 | 総則 | 総則 |
第二章 | 外国投資者及び外国投資 | 投資促進 |
第三章 | 参入管理 | 投資保護 |
第四章 | 国家安全審査 | 投資管理 |
第五章 | 情報報告 | 法律責任 |
第六章 | 投資促進 | 附則 |
第七章 | 投資保護 | |
第八章 | 苦情申立の協調処理 | |
第九章 | 監督検査 | |
第十章 | 法律責任 | |
第十一章 | 附則 |
もっとも、外国投資法(パブリックコメント版)に規定されていた規制が完全に放棄されたわけではなく、これらの規制については個別法規に委ねられたと考えるのが合理的である。その意味では、「外国投資法(パブリックコメント版)」の公表以降の社会情勢の変化を受け、「外商投資法(草案)」は主として外国投資家が投資する企業の促進及び保護に関する基本理念を規定する色彩が強まった評価することもできるように思われる。
(中編へ続く)