債権法改正後の民法の未来 40
暴利行為(2)
清和法律事務所
弁護士 山 本 健 司
Ⅲ 議論の経過
1 経過一覧
暴利行為の論点に関する議論の経過は、下記一覧表のとおりである。
会議 | 開催日等 | 資料 |
第10回 | H22.6.8 | 部会資料12 |
第22回 | H23.1.25 | 部会資料22 |
中間論点整理 | H23.4.12決定 | 民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理 |
第30回 | H23.7.26 | 部会資料27 |
第64回 | H24.12.4 | 部会資料53 |
第70回 | H25.2.19 | 部会資料58 |
中間試案 | H25.2.26 | 民法(債権関係)の改正に関する中間試案 |
第82回 | H26.1.14 | 部会資料73B |
第88回 | H26.5.20 | 部会資料78B |
第92回 | H26.6.24 | 部会資料80B |
2 議論の概要
(1) 第1ステージ
暴利行為の論点について、第1ステージでは、第10回会議(H22.6.8)において、部会資料12の下記のような論点設定のもとに議論がなされた。[1]
【 部会資料12 】 第1 法律行為に関する通則 2 法律行為の効力
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第10回会議の議論では、研究者委員や弁護士委員などから「債権法改正の基本方針」が提言するような現代的暴利行為論に基づいた立法化に賛成する意見が述べられた。また、消費者委員からは、公序良俗は抽象的な条文で規定内容が明確でないのでトラブル解決の場面では使えないという観点から立法化への賛成意見が述べられた。また、中小企業の委員からは、大企業から交渉力格差を背景とした不当な減額や支払遅延などの問題事例があるとして、立法化への賛成意見が述べられた。
一方、事業者委員や関係官庁の関係官からは、明文化で例外が原則化しないか、契約時の相手方の状態確認等でコストが増加しないか、取引の迅速性が阻害されたり自由な経済活動が萎縮しないか、DIPファイナンスのような経済的な窮状にある取引相手との高利率の取引など企業間取引への悪影響がないかといった点への危惧を理由に、明文化に慎重な意見も述べられた。
(2) 中間論点整理
第1ステージ終了時にとりまとめられた「中間論点整理」では、暴利行為の論点について下記のようにとりまとめられている。[2]
【中間論点整理】 第28 法律行為に関する通則 1 法律行為の効力
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すなわち、中間論点整理では、暴利行為の論点について、①立法化に向けた議論を今後も継続すること、②立法化する際の具体的な要件については、伝統的な準則のままで立法化するか、現代的暴利行為論が提唱する要件の緩和を図るかを検討することがとりまとめられている。
[1] 第10回会議の配付資料・議事録(http://www.moj.go.jp/shingi1/shingi04900022.html)
[2] 民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理の補足説明(https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2018/07/000074988.pdf)