SH2051 企業法務フロンティア「AIスピーカーと電子商取引準則の改訂」 川本 拓(2018/08/28)

電子商取引・プラットフォーム取引法務

企業法務フロンティア
AIスピーカーと電子商取引準則の改訂

日比谷パーク法律事務所

弁護士 川 本   拓

 

1 改訂の背景

 最近、AIスピーカーについてのニュースがよく目に留まるようになってきた。昨年(2017年)10月6日のGoogle Home発売に続き、Amazon Echoの一般販売が今年3月30日に日本でも始まったことは記憶に新しい。売り出されてから日も経っておらず、商品としても市場としてもそのインパクトは未知数だが、音楽を聴いたり、天気やニュースを聞いたりすることができることはよく知られている。

 さて、AIスピーカーの画期性は言うまでもなく音声操作で様々な機能を利用できるところにある。本稿ではそれらの機能のうち、たとえば日用品や飲食料といった商品を音声だけで購入できる点について取り上げる[1]

 ユーザーは、AIスピーカーを呼んで起動し、「○○を買いたい」と言えば、「○○があります。○円です。購入しますか?」などと聞かれる[2]。そこで「はい」と答えれば、(購入にそれ以上の確認を要する設定にしていなければ)そのまま注文が確定し、商品の発送に進んでいく。このように、部屋のどこにいても、ただ喋りかけるだけですぐに買い物を完了できることの手軽さはAIスピーカーの強いアピールポイントである。

 しかし、このような便利さと表裏の関係にあるリスクにもすぐに気づく。あまりにも簡単に発注ができるということは、それだけ誤発注が起きる可能性も高いということである。たとえばアメリカでは、6歳の幼女がAIスピーカーに「ドールハウスが欲しい」と言ったところ注文が通ってしまい、2万円相当のドールハウスが届いてしまったというニュースがある[3]。しかもこの話には続きがあり、そのニュースを報じたキャスターが「I love the little girls take on it: “Alexa ordered me a dollhouse”」とコメントしたところ、「Alexa order(ed) me a dollhouse」の部分にテレビ視聴者のAIスピーカーが反応して、そのままドールハウスを注文しようとしてしまい、テレビ局に苦情が相次ぐという事態に発展した[4]

 また、イギリスでは、ペットのオウムがAmazonのギフトボックスを買主の与り知らぬところで注文していたニュースも報じられている[5]。現時点では深刻な問題は起きておらず、これらは新技術をめぐる微笑ましい騒動の一つでしかないが、AIスピーカーの利用がこれから広まっていけば、大きな消費者被害が起きる可能性もある。

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