◇SH2061◇実学・企業法務(第166回)法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産 齋藤憲道(2018/09/03)

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実学・企業法務(第166回)

法務目線の業界探訪〔Ⅳ〕建設・不動産

同志社大学法学部

企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

〔Ⅳ〕建設(ゼネコン、戸建て、下請)、不動産取引

4. 建設業界における遵法

(1) 公共入札談合・カルテルの禁止

 建設業界は入札談合事件が多い業界であると指摘され、特別な法律が制定されている。

 独占禁止法   入札談合の禁止
          「不当な取引制限」の定義(2条6項)
          事業者間で行う場合(3条)
          事業者団体によって行われる場合(8条1号)

 刑法      談合罪(96条の3第2項)

 官製談合防止法[1] 談合に関与した公務員を処罰する

  1.  公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律(2000年制定)
    公共工事に対する国民の信頼の確保とこれを請け負う建設業の健全な発達を図ることを目的とする(1条)。この法律において「建設業」とは建設業法2条2項に規定する建設業をいう(2条3項)。

(2) 公共工事の品質確保の促進に関する法律(2005年制定)

 公共工事について、「価格競争」から「価格と品質で総合的に優れた調達」への転換を徹底することを謳う法律が制定された。市場競争原理が機能している他の業界では見かけない法律である。

  1.   第1条(目的) この法律は、公共工事の品質確保が、良質な社会資本の整備を通じて、豊かな国民生活の実現及びその安全の確保、環境の保全(略)、自立的で個性豊かな地域社会の形成等に寄与するものであるとともに、現在及び将来の世代にわたる国民の利益であることに鑑み、公共工事の品質確保に関する基本理念、国等の責務、基本方針の策定等その担い手の中長期的な育成及び確保の促進その他の公共工事の品質確保の促進に関する基本的事項を定める(略)。

(3) 建設業界は、公益通報者保護法の認識が最も希薄で、対応が緩慢な業界

 企業内で、カルテル・談合等の独占禁止法違反行為が行われていることをできるだけ早期に察知して是正するには、内部通報制度の活用が効果的である。

 建設業界では、独占禁止法違反事件がしばしば発生するが、従業員等に対する公益通報者保護制度及び内部通報制度の趣旨の周知と活用が十分に行われているとは言い難い状況にあり、この改善を通じた遵法の実現が期待される。

〔2016年度 実態調査結果[2]〕 以下、いずれも事業者の回答

  1. ・「公益通報者保護法」及び「公益通報者保護法に関する民間事業者向けガイドライン」について
    事業者が、いずれも知っている         建設業 27.8% 全業種 38.0%
    事業者が、「公益通報者保護法」のみ知っている 建設業 18.0% 全業種 22.0%
    事業者が、「ガイドライン」のみ知っている   建設業   1.7% 全業種   1.6%
    事業者が、いずれも知らない          建設業 52.5% 全業種 37.7%
     
  2. ・「内部通報制度」の導入の有無について
    建設業  導入済27.8% 検討中14.9% 導入予定無54.8% 導入後に廃止0.3% 無回答2.2%
    全業種  導入済46.3% 検討中13.2% 導入予定無39.2% 導入後に廃止0.1% 無回答1.2%


[1] 「入札談合等関与行為の排除及び防止並びに職員による入札等の公正を害すべき行為の処罰に関する法律」の通称。2002年制定。国・地方公共団体等の職員が談合に関与する「官製談合」を禁じ、違反者に刑事罰を科す。

[2] 「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」消費者庁より

 

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