◇SH2086◇簗瀬捨治弁護士インタビュー③(完) T&K法律事務所の顧問就任と若手弁護士への期待 西田 章(2018/09/12)

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簗瀬捨治弁護士インタビュー③(完)
T&K法律事務所の顧問就任と若手弁護士への期待

T&K法律事務所 顧問
弁護士 簗 瀬 捨 治

(聞き手)西 田   章

 

 前回(第2回)は、簗瀬捨治弁護士が、米国から帰国して、ブレークモア法律事務所勤務を経て、常松・簗瀬・関根法律事務所を設立されて、マネージングパートナーとしては、バブル崩壊後にも関わらず、業務を発展させて、長島・大野法律事務所との統合を果たされたことや、同事務所退任後に、旧知の経営者に誘われて、オーケー株式会社の代表取締役社長にまで就任された経緯をお伺いしました。

 最終回となる今回(第3回)では、簗瀬弁護士が、40期近くも若い弁護士たちが設立した、T&K法律事務所の顧問に就任された経緯と、同事務所の採用を題材として、同事務所のパートナー3名を交えて、若手弁護士の採用と育成に関するご意見をお伺いします。

 

 

 最後に、現在、簗瀬先生が顧問を務めていらっしゃいます、T&K法律事務所についてお伺いしたいと思います。もし、可能であれば、T&K法律事務所のパートナーの先生もご同席いただければ、同時にお話をお伺いさせていただきたいのですが。

(インタビュアーからの求めに応じて、T&K法律事務所から、戸澤晃広弁護士、片岡良平弁護士および角谷直紀弁護士の3名のパートナーが同席してくださいました。)
 

 簗瀬先生は、どういう経緯でこちらの顧問に就任されたのですか。
(簗瀬) 片岡さんは、新人弁護士として長島・大野・常松に入所した際に、ぼくの同室だったんだよ。ぼくが同室者として受け入れた最後のアソシエイトだね。
 それから、ぼくは、長島・大野・常松時代から、上智大学の仲裁のワークショップを担当していますが、戸澤さんも、一緒にそのワークショップを手伝っていました。
(片岡) 簗瀬先生には、同室時代以降も、私の留学前やインドから帰国した際など節目ごとに、ランチや夕食をご一緒させて頂いて、私の現況の報告やご相談をさせて頂いたり、簗瀬先生のご経験談を伺って勉強させて頂きました。そのような関係性もあって、「長島・大野・常松を辞めて、今度、あたらしい事務所を作ります」と報告したら、簗瀬先生から「お祝いに食事でもどう」と誘っていただきました。そこで、T&Kのパートナー5人と一緒に食事をしながら、大いに盛り上がり、不躾ながら、図々しくも「ぜひ顧問になってください」とお願いしてしまいました。
(簗瀬) 彼らから声をかけてもらって、断るということはまったく考えなかったね(笑)。2000年の長島・大野・常松法律事務所の設立のときから2014年に事務所を離れるまで、事務所のチェアマン又は特別顧問として、若手の弁護士を応援してきたのですが、会社の社長を引き受けて事務所を離れてそのような若手応援の仕事がなくなっていました。T&Kで再びその機会を期待できるようになり、とてもうれしいわけです。
 そういう経緯だったのですね。T&Kは、日系企業の海外進出支援にも力を入れていますが、その点も、簗瀬先生のご人脈を活かせそうですね。
(簗瀬) ぼくは、欧米だけでなく、中国とかインドネシアとかの新興国にもよく出かけていって現地の友人も作ってきたから、T&Kがやっているアウトバウンド先の国々にも土地勘があるしね。
 若手弁護士が、大手法律事務所を飛び出してあたらしい事務所を作る、という動きについては、どう思われましたか。
(簗瀬) とても良いと思ったね。前向きですよ。リスクもあるかもしれないけど、弁護士業務をしていく上で、同僚や依頼者は、戦友みたいな存在。一緒にエンジョイする、というのが一番だと思うよ。
 大規模事務所で仕事を続けることと比較しても、でしょうか。
(簗瀬) 大きい事務所は、もうあるからね。新しい事務所を作るのは面白いと思うよ。それに、このT&Kだって、これからどこまで大きくなるかわからないから、数年後には、大手事務所と呼ばれているかもしれない。世の中は常に変わりますよ。
 T&Kのパートナーたちは、簗瀬先生に何を期待して顧問にお招きしたのでしょうか。
(片岡) 最初は、5人で始めた事務所ですが、ゆくゆくは事務所を大きくしていきたい、という想いは設立当初から抱いていました。そのためには、弁護士としての在り方もさることながら、小規模での渉外事務所の黎明期から大規模事務所の運営という全ての歴史をご存じである簗瀬先生のご知見をお借りできたら、と。
(簗瀬) ぼくらは、1987年に、4人で常松・簗瀬・関根を作ったのだから、T&Kのほうがスタート時点の規模は大きいよ(笑)。
(戸澤) 私たちの事務所では、海外案件も多く、適材適所でかつ迅速に現地弁護士を起用する必要が生じることがよくあります。簗瀬先生が外国の弁護士と豊富なネットワークをもっていらっしゃるのはありがたいです。
(簗瀬) 長島・大野・常松のような一流事務所は、海外でも同じく一流の巨大事務所と付き合うことが多かったからね。T&Kで、案件毎に、ケースバイケースで、一番適切な外国弁護士は誰だろう、と考えながら探すのも面白いよ。
 簗瀬先生ならば、あらゆる国において、小さい事務所も含めて優秀な弁護士をご存知なのですね。
(簗瀬) そんなに知っているわけないよ。知らなくても、色々と伝手を辿って探して行って、最後には適切な弁護士に辿り着く、というのがノウハウなんだよ(笑)。
 日本企業にとっても、大手の渉外事務所だけでなく、T&Kのような事務所があるのは選択肢が増えてありがたいですよね。
(簗瀬) T&Kは、パートナーの人柄が抜群にいいよね。依頼者は、「人」を見て相談に来る。「この先生だったら、本当にうちのために一生懸命に考えてくれるか?」を見定めて相談に来る。
  パートナーを何十人も抱えている大手事務所だって、実は、依頼者の信頼を得ているのは個々の弁護士だと思うんだよ(笑)。
 パートナーの先生方が、簗瀬先生から学ばれた知見を、何かひとつ教えてもらえませんか。
(角谷) ぼくが一番印象に残っている簗瀬先生からの教訓は、「依頼者が来た時に、忙しいと言って断ったら本当にダメだ。依頼者が離れていっちゃう」ということですね。まだ、開設したばかりで、仕事なんか来るかどうかもわからないときに聞いたので、その時は、ピンと来なかったのですが、いま、業務が多忙な際には、この言葉を思い出しています。
(簗瀬) クライアントにとっては、戸澤さん、片岡さん、角谷さんが、他にどんな依頼を抱えているかは全然関係ないことだからね。だから、クライアントからの相談を受ける時は、どんなに忙しくても、ゆったりした顔をして相談を聞いてあげて、一緒に、じっくり考えてあげないといけないよ。
 でも、案件が重なってしまうと、優先順位をつけて処理していかなければならなくなってしまいますよね。
(簗瀬) 案件をきちっと考えるためには、気持ちを急いてちゃダメだよね。クライアントにそれが伝わったら、相談に来てくれなくなっちゃう。どうやって、自分の気持ちを自分でコントロールするか。それは法律家として大事なことだと思うよ。
 期限が迫った仕事があっても、ですか。
(簗瀬) そう。じっくり考えることは大事だと思う。でも、仕事ばっかりになってしまうのもよくない。
 事務所は、勤務している弁護士自身にもやりがいがあると思って仲間になってもらうことが大事だから。一人でやろうとしても、いつかできなくなってしまう。事務所として、そこを乗り越えられるようなマネジメントの工夫は必要だと思う。
 どうやって依頼者を獲得するか、という点ですが、典型例としては、紛争案件を代理して、負けそうな場面から逆転して勝訴できると、依頼者の経営者からの信頼が厚くなる、と聞くのですが、そういう感覚はありますか。
(簗瀬) 紛争案件で、勝てるかどうかなんて事前にはわからないよ。「この先生にやってもらったから、仮に負けても、まぁしょうがない」と思ってもらえるほどに依頼者から信頼してもらえるかどうかがポイントですよ。
 結果を出せなくとも、依頼者の信頼を得ることができるのでしょうか。
(簗瀬) 成果は、いつも残せるわけじゃない。そんな簡単なものじゃない。ダメなときもありますよ。
 それでも、しっかり仕事をして、きちんとコミュニケーションをとっていれば、信頼を維持することはできると思います。
 望ましい結果がでないと、他の弁護士にも意見を聞かれてしまう、という方もいますが。
(簗瀬) クライアントが他の弁護士に聞きたければ、聞いてもらって全然構わない。
 でも、がんばってしっかり仕事をしていたら、あんまりそんなことは起こらないんじゃないかなぁ。ぼくはあんまりそういう経験はないけど。
 大企業の担当者の中には、「大手事務所に依頼するのは理由はいらないけど、それ以外に依頼するのは、なぜ、あえてその事務所に依頼するのか、を問われる」という悩みを抱えているとも言われますが。
(角谷) 弁護士業務の受任に際して、「評価や実績が足りなくて相談を受けられない」という不便を感じたことはありません。ただ、「所属弁護士の人数が少ないと、マンパワーのいる案件を依頼しにくい」とは言われたことがあります。
(簗瀬) 規模が大きくない、ということで受任が制限されてしまう問題はあると思う。外部事務所選びにビューティーコンテストが開催されると、小さい事務所は候補先から弾かれてしまうことがある。
 実際、常松・簗瀬・関根時代に、大規模なM&Aを受けたら、人手が足りなくて、事務所総出で、常松先生や関根先生も含めて、全員でひとつの案件に対応したことがあったが、大変だった。
(戸澤) 問題はマンパワーだけですね。それ以外では、弁護士業務をする上で、「事務所の知名度がない」という不便を感じたことはありません。大手事務所だと社内が通しやすいという話は確かに聞きますが、やはり、多くのクライアントの方は、弁護士の力量とか個人的な信頼関係で選んでいると感じます。
(角谷) イメージで言うと、「所属弁護士数が40〜50名にならないと、受けられない案件」というのはあると思います。
 アソシエイトの教育・育成については、どう考えておられますか。新卒を採用して、育てるのがよいのか、即戦力の経験者を雇うべきか、とか。
(簗瀬) 両方居ていいんじゃないかな。いい人だったら。別に、新人からアソシエイトを育てる必要もない。でも、違う事務所から来たら、しばらくは一緒によくコミュニケーションを取って、仕事をどういう風に分担するべきかは密にコミュニケーションをとることが必要だろうね。
 アソシエイトの中で、「これは伸びる」「将来、客を引き付けるようになる」というのを見分けるポイントはありますか。
(簗瀬) 本人に、色々なことへの興味・関心があって、知らないことを知ろうと努力するするかどうか、というのが大事だと思う。やる前から「この仕事は面白くなさそう」というよりも、「なんでも面白い」と思って仕事に取り組んでくれるほうが伸びる。
 早くから専門に特化してスペシャリストになるべきか、まずは、色々な事件を受けてジェネラリストになるべきか、という点については、どうでしょうか。
(簗瀬) それは考えてもしょうがないんじゃないかな。どっちでもいい。目の前にやるべきことがあったら、それを一生懸命やればいい。「どういう案件に巡り合えるか?」という運もあるから。
 それでは、T&Kのような、若い法律事務所が、今後、さらに伸びて行けるかどうかの鍵はどこにあると思いますか。
(簗瀬) やっぱり、「人」でしょう。仕事をする、という面でも、クライアントから頼みがいがあると思われるかどうか、コミュニケーションをとりやすいかどうかも人だから。
 それから、事務所の仲間同士で楽しめることもとっても大事。別にそれは、明るく楽しい奴が集まれば良い、というわけでもない。むっつりした奴がダメ、というわけではなくて、いろんなタイプの弁護士がいていい。
 T&Kは、57期3名、58期2名が集まって事務所を設立しました。上下関係なく、同世代が集まって事務所を作り上げることについては、どう思われますか。
(簗瀬) 同じ世代だと感覚も近いので、楽しいと思う。ぼくは、いいと思うよ、
(片岡) 「パートナー1人が上にいて、下にアソシエイトが入る」という垂直的な担当割りにしている事務所も少なくありません。T&Kは、依頼者は事務所全体の依頼者とのコンセプトですので、良いプロダクトを出すために、ひとつの案件に、複数のパートナー弁護士が必ず関わって、下のアソシエイトにも入ってもらって、みんなで知恵を絞りながら仕事を進めています。パートナー弁護士が集まってハンズオンで案件を進行すると、いろんな角度からの分析ができるので、かなり良いプロダクトが出せるようになります。それが、あたらしい事務所ながらも、当事務所が依頼者に評価してもらっている理由だと思っています。
案件毎に主任は決まっているのですか。
(片岡) 主任と責任の所在は決めています。ただ、パートナー5人とも共同経営者なので、主任に限らず、案件に対して、強い意識と覚悟をもって取り組んでいます。
 アソシエイトにはどこまで仕事を任せていけるものなのでしょうか。
(簗瀬) 案件毎に、どういう構造の問題点があるか、どういう点を調べていくべきか、という分析は、パートナーの仕事だよね。その分析の下に、アソシエイトには明確に指示を出して仕事をしてもらう。
 問題は、「頻繁にコミュニケーションをとる」ということだね。「変な方向に一生懸命になるな」と(笑)。パートナーが「これが問題だ」と思った方向でアソシエイトに仕事をしてもらうと、パートナーが欲しいものが出てくる。パートナーの側にも、一緒に仕事をするアソシエイトとコミュニケーションをとる努力は必要だよ。ほったらかしじゃ、いいものは出てこない。「今、どうしてる? どこまで進んでる?」と声をかけてあげるのは必要。
 採用ペースはどのように考えるべきでしょうか。事務所によっては、「一度に複数のアソシエイトを採用すると、目が行き届かないので育てられない」という意見も聞きますが。
(簗瀬) ぼくは、そういう思いはしたことはないなぁ。
(戸澤) いい人がいれば、人数を区切らずに採用をしたいと思っています。本当にいい人が5人来てくれたら、5人とも採用したい。ブティックではなく総合事務所なので、いろいろな分野でニーズがあります。目が行き届かないというのはアソシエイトに任せきりにしてしまうことの裏返しだと思っていて、仕事を全てレビューするという方針を持っていればそれは起こらないと思います。
 そこでいう、「いい人」はどうやって見分けるべきでしょうか。学歴でしょうか。司法試験の成績でしょうか。人柄でしょうか。
(簗瀬) う~ん、話をしていて、ピンと来るかどうか、なんだよね。会話していても、「なんか外れてるんじゃない?」と思うと、うまくいかない。
(戸澤) 面接をして話をしている中での自分の感覚と合うかどうか、それ以外にはないですね。
(簗瀬) 同じような関心を示してくれるかどうか、話が盛り上がって発展していくかどうか、だよね。
(角谷) 色々なタイプがいますよね。面接での受け答えがハキハキしている人は、「将来、お客さんの前に出してもよいな」と感じます。でも、それだけでなく、しゃべるのは苦手でも、緻密にこつこつ仕事をするのが得意なタイプもいます。
 「こういう人が、特にT&Kに向いている」という要素はないでしょうか。
(角谷) 必ずしも、順風満帆なキャリアを進んで来た人である必要はないと思っています。例えば、「職場であまりうまくいかず、一度、壁にぶつかってしまった」という再チャレンジ組にも門戸を広げています。「次こそがんばらなきゃ」という意欲は評価したいと思っています。
経験よりも、意識・気持ちを重視されるのでしょうか。
(角谷) 既存の経験値はあまり関係ありません。センスがあれば、うちの事務所で1〜2年働いてくれたら、成長してくれると思います。
(戸澤) うちのように、まだ新しいけど、これから大きくなっていくところを一緒に楽しんでくれる人がいいですね。
 事務所としての専門分野・得意分野はどこになるのでしょうか。
(戸澤) 我々の事務所と同じぐらいの規模で、特定の法分野に特化したブティック事務所はいくつもあると思いますが、当事務所は、「海外案件もあれば、国内案件もある」「訴訟もあれば、M&Aもあるし、ファイナンスも不動産もあるし、知財もある」という風に、オールジャンルの仕事があることが特色です。
 また、大規模な事務所に入っても、アソシエイトは、特定のパートナーと紐付いてしまうと、そのパートナーの専門分野に引きずられてしまいます。その点、我々の事務所は、全てのパートナーと仕事をしますし、大規模な事務所にいくよりも、幅広い案件に携われる魅力はあると思います。ジェネラリストもスペシャリストも目指せる事務所だと思います。
(角谷) 先ほどの簗瀬先生の話にもありましたが、ジェネラリストを目指してもいいし、何かに特化したスペシャリストになってもいい。どちらも歓迎します。
 先ほど、「人数の制約なく、採用したい」という話がありましたが、それだけ仕事が増えている、ということなのでしょうか。
(角谷) むやみに拡大を考えているわけではなく、どんどん忙しくなっているので、自然と規模も大きくなっているところです。現に、設立した時からの今の事務所もかなり手狭になってきて、今年9月中旬に、永田町の砂防会館本館に移転します。ただ、拡大しても、複数のパートナー弁護士が主体的に関わって案件をハンドルするという軸はそのままで、拡大スピードと規模については、5人で密に話し合っています。
 「勢いがある」というのは、特色として言えそうですね。一般民事の世界では、交通事故に特化する、などで規模先にありきで拡大することは可能ですが、企業法務では、依頼者企業からの信頼を集めている、ということですからね。
(簗瀬) 勢いがある、というのも大事だよね。仕事が取れていない事務所だと、アソシエイトも採用できない。「5人でも採れる」というのは、ぼくの目から見てもすごい勢いだよ。
 分野的には、海外進出支援が強い、というのが、「売り」になっているのでしょうか。
(角谷) 確かに、クライアントが、まずは、アジア案件で相談に来てくれて、そのサービスに満足してくれて、国内のコーポレートや株主総会指導、労働まで相談してくれるようになる、ということは増えています。
(片岡) この1年で、同じクライアントからリピートで依頼を受け、相談内容も他分野にも広がる傾向があります。最初にインドネシアの案件で相談を受けていたお客さんが、次にフィリピンの案件で相談に来て、次はシンガポール、その次は、国内の会社法や知的財産の相談を受ける、という風に。
 採用面でも、アジア進出支援をやりたい若手弁護士には魅力がありそうですね。
(角谷) ただ、採用において、「アジア案件をやりたい人はぜひ来てください」という勧誘はしていません。アジアだからとか海外案件だから華やかであるといったことはなく、むしろ、不透明な法領域の問題事項につき、丁寧に調べて調べて議論を尽くす、というスタイルの仕事を地道にやり遂げられる人がいいですね。
 リクルーティングでは、「当事務所は、こういう企業のこういう案件を代理しました」という形で、依頼者名や著名案件に関与していることを明示して宣伝することも増えて来ましたが、そういう流れはどうご覧になっていますか。
(簗瀬) 有名な事件に携わることよりも、自分の力を発揮できるかどうかのほうが大事じゃないかなぁ。著名案件に関わったことを自慢したい思いはあっても、まじめな法律家だったら、そこで取り組んだ難しい問題こそが思い出で、それは相手方を見ないで持ち出したり説明したりしないでしょう。結局、著名事件に関わったことを自慢することは少なくなるでしょう。本人以外の人から見ると、依頼者名や著名案件に関わったことは、有意な入口情報であると一般に認められているようですね。
 まじめに、勤勉に誠実にやる気があるかどうか、クライアントのために一生懸命にやって、クライアントの全部を引き受ける、そういう仕事にやりがいを感じるかどうか、だよね。それは、大きい事務所に入っても、小さい事務所でも同じ、規模は関係ない。
 本当にそうですね。採用については、まだまだ話しが尽きませんので、T&Kのパートナーの先生方には、また機会を改めてお話しをできればと思います。本日はどうもありがとうございました。

(終わり)

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