◇SH2180◇法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会、会社法制(企業統治等関係)見直しに関する要綱案(仮案) 森 駿介(2018/11/07)

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法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会、
会社法制(企業統治等関係)見直しに関する要綱案(仮案)を審議

岩田合同法律事務所

弁護士 森   駿 介

 

 会社法改正に向けて検討を行っている法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会は、本年10月24日開催の第17回会議において、会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案(仮案)(以下「要綱案(仮案)」という。)について審議した。

 

1 会社法改正に向けた検討過程

 会社法は、平成17年に、当時の商法下の会社法制を大幅に見直して制定されたが、社外取締役の活用等による取締役に対する監査・監督の在り方や親子会社関係の規律の整備の必要性等について指摘があり、平成26年改正において一定の手当てがされたところである。

 同改正後の平成29年2月には、株主総会の手続の合理化、役員への適切なインセンティブ付与、社外取締役の義務付けの要否等、企業統治等に関する規律の見直しの要否を検討することを目的として、法制審議会に会社法制(企業統治等関係)部会(部会長:神田秀樹学習院大学法科大学院教授)を設置し、以来、調査・審議が行われてきた。

 合計10回の会議を経て、本年2月28日、「会社法制 (企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」が公表され、パブリックコメント手続に付された後、更に審議が行われ、今般、要綱案(仮案)の審議に至ったものである。

 

2 要綱案(仮案)の主要な論点

 要綱案(仮案)に盛り込まれている項目の概要は以下のとおりである。

第1部 株主総会に関する規律の見直し
  第1 株主総会資料の電子提供制度
  第2 株主提案権
第2部 取締役等に関する規律の見直し
  第1 取締役等への適切なインセンティブの付与
  第2 社外取締役の活用等
第3部 その他
  第1 社債の管理
  第2 株式交付
  第3 その他

 本稿では、このうち一般の関心が高いと思われる事項を中心に紹介する。

  1. ⑴ 株主提案権(第1部の第2)
  2.    近時、一人の株主が膨大な数の議案を提案したり、株式会社を困惑させる目的で議案を提案する事例が散見されるようになり、これにより株主総会の審議時間が空費されたり、株式会社において議案の検討や招集通知の印刷等のための無用なコストが増加していることが問題視されるようになっていた。そこで、要綱案(仮案)では、株主が提案できる議案の数を10に制限するとともに、名誉侵害・侮辱、不正な利益を図る目的等や株主共同の利益が害されるおそれがある場合等には株主提案を認めない旨の定めが置かれた。10という議案の数え方の明確性などが問題となり得るところであるが、要綱案(仮案)には数え方のルールについても記載されている。
     
  3. ⑵ 社外取締役の設置義務付け(第2部の第2)
  4.    平成26年改正会社法の附則25条には「必要があると認めるときは、……社外取締役を置くことの義務付け等所要の措置を講ずるものとする」と定められていたところ、要綱案(仮案)には、上場会社等について「社外取締役を置かなければならないものとする」との定めが置かれている。東証の全上場会社の平成29年度の社外取締役選任比率は96.9%(市場第一部では99.6%)に上っており、上場会社等に社外取締役の設置が義務付けられたとしても大きな混乱が生じる可能性は低い。もっとも、社外取締役に欠員が生じた状況でされた取締役会決議に瑕疵が生じ得るとすれば、事実上、補欠又は複数の社外取締役を選任する必要が生じ、影響は社外取締役を1名選任することにとどまらないことが懸念されるところであるが、要綱案(仮案)では、社外取締役を欠いても取締役会決議の効力に影響を及ぼさないような定め方を想定しているとされており、この点の懸念は解消される見込みである。

 

3 その他の改正項目と今後への影響

 上記2⑴及び⑵のほかにも、株主総会の招集手続に変化をもたらす総会資料の電子提供の仕組み、取締役の報酬等の決定方針を決定することの上場会社等への義務付けや情報開示の充実など取締役の報酬等に関する定め、役員等が負担した費用や賠償責任等に関する会社による補償やいわゆるD&O保険に関する定めなど、ガバナンスに関する改正項目が複数盛り込まれており、今後のガバナンスの議論に与える影響も小さくないと思われる。

 引き続き、要綱案(仮案)に対する審議の動向は注視する必要があろう。

以 上

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