日産自動車、ゴーン会長ら2代表取締役を内部通報・内部調査を経て解職
――有報虚偽記載の容疑で逮捕の検察捜査に全面協力――
日産自動車は11月19日、代表取締役会長カルロス・ゴーン氏と代表取締役グレッグ・ケリー氏の2役員につき内部通報を受けて数ヵ月間に及ぶ内部調査を行った結果、両氏が(1)開示されるゴーン氏の報酬額を少なくするため、長年にわたり減額した金額を有価証券報告書に記載していたと発表した。
ゴーン氏については(2)会社の資金を私的に支出するなどの複数の重大な不正行為が認められるとも指摘。これらを首謀したとされるケリー氏とともに「明らかに両名の取締役としての善管注意義務に違反する」とし、会長・代表取締役の職をすみやかに解く方針を表明した。
東京地検特捜部では同日、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いで両氏を逮捕。本社を家宅捜索した。会社側の発表によると、検察当局へは情報の提供とともに捜査に全面的に協力。またこれまでに、不正な実務を担ったとされる同社関係者と当局との間で刑事処分を軽減する司法取引の合意がなされたことが判明している。
上記(1)に係る容疑は両氏が共謀して、平成23年3月(第113)期〜27年3月(第117)期の5期にわたり、ゴーン氏の報酬が実際には計約99億9,800万円であったのに計約49億8,700万円と記載した有価証券報告書を提出したとされるもの。
(2)に関しては「目的を偽って、私的に当社の投資資金を支出するなどした不正行為」「その他、私的な目的で当社の経費を支出するなどした不正行為」とされ(22日付適時開示資料による)、海外子会社が購入した複数の住宅を無償で利用していたことなどが報じられている。
日産自動車は22日には取締役会を開催し、①ゴーン氏の会長職・代表権を、②ケリー氏の代表権をそれぞれ解くとともに、③社外取締役3名に委任し、ガバナンス管理体制、取締役報酬に係るよりよいガバナンスにつき第三者委員会の設置を検討する、④社外取締役3名で構成する委員会を設置し、現取締役の中から取締役会長候補を提案することを決議した。
取締役会では、ルノーとの長年のアライアンスパートナーシップの維持・継続等も確認。一方、同社株式の43.7%を所有するルノーが20日(現地時間)に開いた取締役会においては会長兼最高経営責任者としてのゴーン氏の解職を見送っており、日産自動車に対して内部調査で判明したすべての情報の提供を求めることとした。
同じくアライアンス関係にあってゴーン氏が代表取締役会長を務める三菱自動車では19日、①ゴーン氏のすみやかな解職を取締役会に提案し、②同様の不正行為がなかったかについて内部調査を行うとしている。
日産自動車は執行役員制度を採用する監査役会設置会社で、社外者3名を含む9名の取締役会、社外者3名を含む4名の監査役会で構成。ケリー氏は執行役員を経て2012年6月に取締役に選任され、代表取締役に就任していた。会計監査人には従前より新日本有限責任監査法人が選任されている。