◇SH2218◇債権法改正後の民法の未来67 利息超過損害(2) 川上 良(2018/11/29)

未分類

債権法改正後の民法の未来 67
利息超過損害(2)

弁護士法人大阪西総合法律事務所

弁護士 川 上   良

 

4 議論の経過

 (1) 経過の一覧

会議等 開催日等 資料
第1読会 第3回会議 H22.1.26開催 部会資料5-1、部会資料5-2
第21回会議 H23.1.11開催 部会資料21(中間的な論点整理のたたき台(1))
第25回会議 H23.3.8開催 部会資料25(中間的な論点整理のたたき台(1)(2)【改訂版】
  中間的な論点整理 H23.4.12決定 中間的な論点整理の補足説明、部会資料33-2
第2読会 第38回会議 H23.12.20開催 部会資料34
第3分科会第3回会議 H24.4.24開催  
第64回会議 H24.12.4開催 部会資料53
  中間試案 H25.2.26開催決定 中間試案
第3読会 第78回会議 H25.10.8開催 部会資料68A

 (2) 利息超過損害については、法制審議会民法(債権関係)部会(以下、省略する。)の第1読会である第3回会議で、部会資料5-1の「7 金銭債務の特則(民法419条)(2)効果の特則:利息超過損害の賠償について」で「民法419条第1項は、金銭債務の不履行の場合において、法定利率あるいは約定利率により損害賠償の額を定めるとしているところ、判例は、これらの利息を超過する損害の賠償を否定している(最判昭和48年10月11日判例時報723号44頁)。この点については、利息超過損害の損害額が多額に及ぶ事案もあり得るところ、その損害の立証が容易な事案についてまで、一律に利息超過損害の賠償を否定することは不合理であるなどの批判がされている。そこで、金銭債務の不履行について利息超過損害の賠償を認めることが望ましいとの考え方があるが、どのように考えるか。」(10頁)という提案で議論の口火が切られた(補足説明は部会資料5-2(58頁及び59))。この提案に対しては、趣旨は理解できるが、交渉力に大幅な差がある当事者間で利息超過損害の賠償を認めることは、弱い立場の当事者に過剰な損害責任を強いることになるおそれがあるとの意見や、利息超過損害が発生する場合があり得るということに関してはそれなりに理解できる部分があるとの意見に見られるように、利息超過損害という問題があることには共通認識はあったが、その当否については慎重な検討を求める意見が寄せられていた。

 このような議論を経た上で、「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」では、「金銭債務の不履行における利息超過損害の賠償請求を一般的に否定する判例法理の合理性を疑問視し、利息超過損害の賠償請求が認められることを条文上明記すべきであるという考え方に関しては、消費者や中小企業等が債務者である事案において債務者に過重な責任が生ずるおそれがあるとの指摘があったが、他方で、上記の考え方を支持する立場から、債務不履行による損害賠償の一般法理が適用されるため、損害賠償の範囲が無制限に拡張するわけではないとの指摘があった。これらの意見を踏まえて、利息超過損害の賠償請求を認める考え方の当否について、更に検討してはどうか。」(「民法(債権関係)の改正に関する中間的な論点整理」NBL953号(2011年)付録11頁)とまとめられ、継続して検討されることになった。

 

タイトルとURLをコピーしました