◇SH2245◇監査役協会、「企業不祥事の防止と監査役等の取組」を公表 別府文弥(2018/12/12)

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監査役協会、「企業不祥事の防止と監査役等の取組―最近の企業不祥事事案の分析とアンケート結果を踏まえて-」を公表

岩田合同法律事務所

弁護士 別 府 文 弥

 

1. はじめに

 日本監査役協会に設置されたケース・スタディ委員会(以下「本委員会」という。)は、本年12月3日、「企業不祥事の防止と監査役等の取組-最近の企業不祥事事案の分析とアンケート結果を踏まえて-」(以下「本件報告書」という。)と題する書面を公表した。

 本件報告書では、近年の企業不祥事事案に関する第三者委員会報告書を基に、近年の企業不祥事事案の類型、発生原因、再発防止策及び監査役等の取組に関する調査・分析、企業不祥事防止のために監査役等が留意すべきポイント等が紹介されている。以下、本件報告書の概要を紹介する。

 

2. 概要

⑴ 近年の不祥事発生の傾向及び本委員会による分析

 本件報告書では、近年の企業不祥事の類型として、(a)不適切会計、(b)品質・データ偽装、(c)贈賄・独禁法・横領、(d)M&Aにおける対象会社の不正及び(e)ITシステムリスクが紹介されている。

 このうち、本件報告書では(a)不適切会計及び(b)品質・データ偽装について、複数の事例を分析した上、共通する企業不祥事の要因として、①経営トップの姿勢や企業風土、②現場と経営の乖離、③セクショナリズムや縦割り組織、④リソース不足や専門知識の欠如による内部統制部門及び内部監査部門の機能不全、⑤現場における統制機能の独立性の欠如及び⑥コンプライアンスに関する現場教育の不徹底を挙げ、監査役等の監査における重点監査事項としている。

⑵ 企業不祥事防止に向けた取組

 続いて、本件報告書では、各企業がいかなる類型の企業不祥事に関心を有し、どのような取り組みを実施しているか、又は実施する予定があるかについてのアンケート結果を紹介するとともに、企業不祥事防止のための内部通報制度に関する企業の取組実態を紹介している。ここでは、各企業の関心のある企業不祥事の類型及び各企業の取組に関する業種別のアンケート結果を以下の通り本件報告書から抜粋する。

 

(業種別・企業が関心を有する不祥事の類型)

 

(業種別・企業が不祥事対策として有効性を実感して実施している取組等)

 

⑶ 監査役等の企業不祥事防止に向けた視点・留意点

 最後に、本件報告書では、監査役等の企業不祥事防止に向けた視点及び監査役等が企業不祥事防止のために留意すべきポイントが紹介されている。

 監査役等の企業不祥事防止に向けた視点としては、(a)自社及び同業種のリスク分析とリスク・アプローチによる企業不祥事防止策の検証、(b)企業不祥事防止に向けた経営トップからの発信、経営トップの姿勢、(c)コンプライアンスに関する研修制度の充実、(d)従業員からの情報を吸い上げる仕組みの構築が挙げられている。

 また、監査役等が企業不祥事防止のために留意すべきポイントとして、①経営トップがコンプライアンス重視の経営姿勢を取っているか、②本質的に強い現場力が確保されているか、③全社的に内部統制部門の機能が発揮されているか、④内部監査部門による組織的かつ効率的な監査が実施されているか、⑤バッドニュースファーストの文化・風通しの良い企業風土となっているか、⑥企業不祥事に関する兆候に対して、徹底した事実調査と事実に基づく対策の要請がなされているか、⑦企業不祥事の発生後、再発防止に対して本質的に取り組む姿勢がとられているかという点が挙げられている。

 

3. 小括

 上記2.(3)でも紹介したように、企業不祥事防止に向けた視点として、自社及び同業種のリスク分析とリスク・アプローチによる企業不祥事防止策の検証は極めて重要であると考えられるところ、本件報告書では、企業が関心を有する不祥事の類型や不祥事防止に向けた取組(今後の取組等を含む)に関する業種別のアンケート結果等が紹介されており、同業種のリスク分析や企業不祥事防止策の策定状況を検討するにあたり有益な情報であると考えられる。また、管理部門を中心とした海外子会社への調査連合体制の構築や他社における不祥事情報の社内紹介といった、企業不祥事予防に向けた監査役等としての取組や意見も別紙に記載されており、各企業にとって参考になるものと考えられる。

以上

 

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