シンガポール:ファンド運用会社とシンガポール籍ファンドの基礎(2)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 長谷川 良 和
ファンド運用会社のライセンス又は登録要件
上述した規制類型のうち、適格投資家向けライセンス保有ファンド運用会社及び登録ファンド運用会社のライセンス又は登録要件に関する主要な事項は、大要以下のとおりである。
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適格投資家向けライセンス保有 |
登録ファンド運用会社 |
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実体あるファンド運用活動 |
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最低資本金 |
250,000シンガポールドル(約2,125万円)以上 |
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リスクベース資本 |
事業リスク要件の120%以上の財源が必要 |
ー |
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CEO |
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取締役人数: 関連経験の最低年数: 執行取締役の人数: |
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シンガポール居住の 関連経験の最低年数:
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シンガポール居住の代表者 |
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組織形態・オフィス |
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法令遵守体制 |
フロントオフィスから独立した適任の人材による独自の法令順守機能が必要。運用資産が10億シンガポールドル(約850億円)以上か、それ未満かによって具体的な要件が異なる。 |
事業の性格、規模及び複雑性に応じた法令遵守体制を構築する必要あり。 |
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専門家賠償責任保険加入 |
義務ではないが強く推奨される。 |
シンガポール籍ファンドの形態
シンガポールのファンド運用会社は、オフショアファンド(例えば、ケイマン籍ファンドなど)を運用する場合もあれば、シンガポール籍ファンドを運用する場合もある。シンガポール籍ファンドの組成が検討される場合のファンド形態の選択肢とその主な特徴は、大要以下のとおりである。
ファンド形態 |
主な特徴 |
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有限責任組合 |
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変動資本会社 |
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ユニットトラスト |
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株式有限責任会社 |
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実際にファンド形態を検討する際には、当該ファンドの目的、投資運用会社の馴染みの深浅、投資家の要請や馴染みの深浅、税務上の扱い、政府の奨励プログラム、コンプライアンスコスト及び情報の秘匿性等の事情が考慮される。
以 上
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(はせがわ・よしかず)
東京大学法学部卒業、同大学院法学政治学研究科修了、Columbia University School of Law(LL.M.)卒業。三菱商事株式会社勤務、Allen & Gledhill LLP(シンガポール)出向を経て、2013年1月から長島・大野・常松法律事務所シンガポール・オフィス勤務。
シンガポールを拠点に、シンガポール、マレーシア、ミャンマーを含む東南アジアその他アジア地域において、進出、日常的な法務問題、M&A、ジョイント・ベンチャー、危機対応、エネルギー・インフラ案件等、日系企業が直面する法律問題を幅広くサポートしている。
長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/
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