経産省、「限定提供データに関する指針」を公表
――語句補充などを経て確定、説明や具体例は追加せず――
経済産業省は1月23日、パブリックコメント手続を経て確定された「限定提供データに関する指針」(以下「本指針」という)を公表した。併せて、(1)限定提供データに関する指針の概要(経済産業省知的財産政策室)の公表、(2)パブリックコメントによる意見公募結果の公示を行っている。
平成30年の不正競争防止法改正により「限定提供データ」に係る不正取得、使用・開示行為が不正競争として位置づけられており、改正法は31年7月1日に施行される予定である。本指針は、各要件の考え方や該当する行為などの具体例を盛り込む分かりやすいガイドラインとして策定されたもので、昨年中に「限定提供データに関する指針(案)」(以下「指針案」という)が示され、意見公募を行っていた(法改正の目的などを含む意見公募時の解説として、SH2256 経産省、「限定提供データに関する指針(案)」に対するパブリックコメントを実施 工藤良平(2018/12/18)参照)。
確定版となる本指針では、指針案における語句を明確化する補充などがなされており、相違点は本稿末尾に取りまとめて掲げた。「具体例」の追加・削減・差替えなどはない。
上記(1)は、本指針の位置づけ、本指針の全体像に始まり、限定提供データの意義(3要件)、「不正競争」の対象となる行為及び不正取得類型、著しい信義則違反類型、転得類型について本指針中の図も用いながら10頁で簡潔に説明するものとなっており、適宜参考とされたい。
(2)の公示によると、意見到達件数は8件。主な意見の概要としては、計20件が紹介されている。指針案中の記載や個別ケースを巡って確認を求めるものに経産省として「御意見に対する考え方」を示すほか、①今後の必要に応じた改正を望む意見、②「誰が限定提供データに係る不正競争行為による救済を求めることができるか(請求権者)」についても説明を加えることを検討すべきとする意見、③限定提供データにおける相当量の判断に当たって、例示された直接的な価値だけでなく、間接的価値がどのように評価されるかをより明確に例示することも必要とする意見、④具体例をより充実させ「不正競争」の対象行為をより明確化すべきとする意見などに対して、経産省では「事例の蓄積等も踏まえて、今後所要の見直しを検討してまいります」としている。
- <本指針と指針案との相違点>
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■ 10ページ 3.「電磁的方法により・・・管理され」(電磁的管理性)について ※左記見出しを含めて4行目~
本指針:特定の者に対して提供するものとして管理する意思が、……
指針案:限定された特定の者に対して提供するものとして管理する意思が、……
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■ 13ページ (1) 秘密管理性について ※左記見出しを含めて6行目~
本指針:提供先に対する「第三者開示禁止(※)」の義務
指針案:提供先に対する「第三者開示(※)禁止」の義務
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■ 22ページ 1.「窃取、詐欺、強迫その他の不正の手段」について ※左記見出しを含めて7行目~
本指針:不正アクセス行為の禁止等に関する法律(以下「不正アクセス禁止法」という。)に違反する行為
指針案:不正アクセス行為の禁止等に関する法律に違反する行為(以下「不正アクセス禁止法」という。)
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■ 37ページ (b) 法第2条第1項第 15 号(アクセス権のある者からの取得) ※左記見出しを含めて3行目~
本指針:……又はその限定提供データ保有者に損害を加える目的(図利加害目的)で、限定提供データ保有者から示された……
指針案:……又はその保有者に損害を加える目的(図利加害目的)で、保有者から示された……
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■ 37ページ (b) 法第2条第1項第 15 号(アクセス権のある者からの取得) ※左記見出しを含めて本指針では7行目、指針案では6行目
本指針:「営業秘密不正開示行為」
指針案:「不正開示行為」
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■ 40ページ 2. 取得時善意の転得類型 ※左記見出しを含めて5行目
本指針:被害拡大防止のための救済措置
指針案:被害拡大のための救済措置
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■ 40ページ ※下から2行目
本指針:「限定提供データ」では重過失を対象としていない。
指針案:「限定提供データ」では対象としていない。