ベトナム:労働法施行政令05号を改正する政令148号について(1)
長島・大野・常松法律事務所
弁護士 鷹 野 亨
ベトナムにおける労働法の一部内容について詳細及び施行細則を定める2015年1月12日付政令05/2015/ND-CP号(以下「政令05号」という。)の条項の一部を改正する政令148/2018/ND-CP号(以下「政令148号」という。)が、2018年10月24日に制定され、同年12月15日から施行されている。
政令148号による政令05号の改正は、社会事情の変化や実際の法の運用にあわせて、より実務に即してなされたものと考えられる。その改正内容は多岐にわたるが、なかでも労働契約書の記載内容や懲戒処分手続き等に関する変更点は、使用者である企業にとっては日常的に対応しなければならない事項であり、改正内容を十分に理解しておく必要があると考える。
以下では、重要と思われる改正内容について、2回に分けてその要旨を紹介する。
1. 労働契約書の記載内容について
労働契約書には、主に以下の事項を記載しなければならないと定められている(労働法23条、政令05号4条)。
- ① 使用者の名称及び住所
- ② 労働者の氏名、生年月日、性別、住所、身分証明書番号
- ③ 業務内容及び就業場所
- ④ 契約期間
- ⑤ 労働時間及び休憩時間
- ⑥ 給与
- ⑦ 昇給制度
- ⑧ 労働者保護のための制度
- ⑨ 社会保険・健康保険
- ⑩ 職業訓練
従前よりこれらの詳細を労働契約書に記載し、その内容に変更が生じるごとに労働契約書も変更することは煩雑であるとの指摘があった。そこで、政令148号による改正では、(1)⑦昇給制度については使用者・労働者間の合意、使用者の社内規程又は労働協約に従う、(2)⑤労働時間及び休憩時間については使用者・労働者間の合意又は使用者の就業規則、社内規程、労働協約及び法令に従う、(3)⑧労働者保護のための制度については使用者の就業規則、社内規程、労働協約及び法令に従う、(4)⑨社会保険・健康保険については法令に従うとのみ規定すれば足りるとされた(同令1条2項)。
2. 組織再編等による整理解雇時の当局への通知内容について
①組織再編又は技術的変更により労働者の雇用維持に悪影響が生じた場合(労働法44条1項)、又は、②経済的理由により労働者の雇用維持に悪影響が生じた場合(同条2項)に、労働者を解雇するときは、労働組合と事前に協議し管轄当局に対して30日前までに通知等の手続きを行う必要があるとされている(同条3項)。政令148号による改正では、その通知について以下の内容を記載しなければならないと規定され、通知内容が明確化された(同令1条4項)。
- ① 使用者及び使用者の法的代表者の氏名・住所
- ② 労働者の総数、解雇する労働者の総数
- ③ 労働者解雇の実施理由
- ④ 解雇実施の日
- ⑤ 支払われる退職金の総額
(次項に続く)