◇SH2337◇ベトナム:労働法施行政令05号を改正する政令148号について(2) 鷹野 亨(2019/02/14)

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ベトナム:労働法施行政令05号を改正する政令148号について(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鷹 野   亨

 

 本稿では、前稿に続き、ベトナムにおける労働法の一部内容について詳細及び施行細則を定める2015年1月12日付政令05/2015/ND-CP号(以下「政令05号」という。)の条項の一部を改正する政令148/2018/ND-CP号(以下「政令148号」という。)について、重要と思われる改正内容の要旨を紹介する。

 

3. 退職手当・失業手当の算定基準となる労働期間について

 退職手当(労働契約終了一般に適用)及び失業手当(整理解雇の対象労働者に対して適用)算定の基準となる労働期間(政令05号14条3項)について、政令148号により以下の通り改正された(同令1条5項)。

  1. ① 国民としての義務を履行するために使用者から給与を得て休んだ休職期間、社会保険に関する法律に従い取得した病気休暇及び産休の期間、労働災害や業務に起因する病気により休職したが法規に基づき給与が支払われた期間については、労働期間に含まれることとなった。
  2. ② その一方で、試用期間、職務のための研修期間及び職業訓練期間、逮捕・拘留期間については、除外されることとなった。

 

4. 事前予告期限規定違反の一方的労働契約解除の損害賠償について

 労働法上、使用者又は労働者が、事前予告期限の定めに違反して労働契約を一方的に解除した場合、相手方に対して、事前予告をしなかった日数に応じた労働者の賃金に相当する賠償金を支払わなければならないと規定されている(労働法42条5項、43条2項)。当該賠償額の基礎となる賃金について算定の基準時が不明確であったところ、政令148号により、「使用者又は労働者が一方的に違法に労働契約を解除した時点での労働契約上の賃金」と明示されることとなった(政令148号1条10項)。

 

5. 懲戒処分会議の手続きについて

 懲戒処分の実施にあたっては、使用者、労働者、労働組合が出席する懲戒処分会議の場で審理を行わなければならないと法定されている(労働法123条1項、政令05号30条)。改正前の政令05号では、懲戒処分会議の開催について、使用者が開催日の5営業日前までに会議参加者に対して通知する義務があるとされていたが(同令30条1項)、政令148号による改正では、通知の具体的な日数に関する定めはなくなる一方で、懲戒処分会議の参加者は通知受領から3営業日以内に、会議への参加の可否を確認し、参加できない場合はその理由を通知する義務が課せられている(同令1条12項1号)。

 また、改正前の政令05号では、使用者が3回にわたり参加者に通知をしたが参加しなかった場合には、原則として懲戒処分会議を開催できるとされていた(政令05号30条2項)。しかし、政令148号による改正では、参加者が①参加の可否について確認しなかった、②正当ではない参加不可の理由を主張した、又は、③参加するとしたにもかかわらず参加しなかった場合には、使用者は再度通知等せずに、懲戒処分会議を開催できる旨の改正がなされた(同令1条12項)。これにより、参加者が欠席した場合に、使用者が3回も通知を繰り返さなくとも懲戒処分会議を開催することが可能となった。

 加えて、改正前の政令05号では、法定代表者から労働契約締結の委任を受けた者は戒告処分のみが決定できる旨規定されていた(同令30条4項)。しかし、政令148号による改正では、当該法定代表者から労働契約締結の委任を受けた者は全ての懲戒処分を決定する権限を有するとされた(同令1条12項)。

 これらの改正により懲戒処分手続きの簡易化、迅速化が期待されるところである。

 

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