◇SH2354◇企業活力を生む経営管理システム―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―(第10回) 齋藤憲道(2019/02/21)

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企業活力を生む経営管理システム

―高い生産性と高い自己浄化能力を共に実現する―

同志社大学法学部
企業法務教育スーパーバイザー

齋 藤 憲 道

 

第2部 重大リスク・不正を発見する従来の手法

 第1部で、監査役と会計監査人の機能を強化する法制度の変遷を見てきた。

 第2部では、両者の役割と、それぞれで行われるリスク発見あるいは不正対応の方法を考察する。

 そして、次の第3部で、今後、監査関係者が対応を強化することが期待される「製品の性能、安全」「秘密情報流出」等の不祥事について考える。

 

 株式会社(大会社かつ公開会社)は、次の1~3のいずれかの形態を採用する[1]

  1. 1  監査役会設置会社(取締役会、監査役会、会計監査人を設置)・・・監査役を置く。
  2. 2  監査等委員会設置会社:取締役会、会計監査人を設置(監査役を置かず、取締役会の一部を監査等委員会とする。)
  3. 3  指名委員会等設置会社:取締役会、会計監査人を設置(監査役を置かず、取締役会の一部を監査委員会とする)

 本項では、監査役会設置会社の監査役(上記の1)について、職務の内容を考察する。

  1. (注) 監査等委員(会)及び監査委員(会)は、監査役会設置会社の監査役(会)と立場は異なるが、取締役[2]の職務の執行を監査して監査報告書を作成することは同様である[3]。従って、本稿の目的である「高い生産性」と「高い自己浄化能力」を考察するには、監査役(会)の監査業務を見れば足りる。

 

1. 監査役(会)と会計監査人の役割(大会社かつ公開会社の場合)

 法律は、監査役と会計監査人がそれぞれの監査機能を十分に発揮できるように、取締役(会)からの独立性を強め、必要な情報を収集・発信することができる権限を明記している。

 監査役及び会計監査人は、重い責任と大きな権限を持って、監査業務を行っている。

 本項では、監査役と会計監査人の役割を概観した上で、現在、それぞれが行っているリスク発見の対象あるいは不正対応の方法について考察する。

  1. (1) 監査役(会)
  2. ・ 株式会社(大会社かつ公開会社)には、監査を担当する機関(監査役会及び会計監査人)を置かなければならない[4]
  3. ・ 監査役は、取締役の職務の執行に関する「業務監査」と「会計監査」を行う[5]

    1. (注) 取締役が株式会社又は第三者に生じた損害を賠償する責任を負うとき、監査役にも善管注意義務違反の責任があれば、両者が連帯して損害賠償責任を負う。会計監査人にも責任がある場合は、三者の連帯責任となる[6]
  4. ・ 監査役は、会社と取締役の訴訟において、会社を代表して訴訟を行う[7]
  5. ・ 株主代表訴訟において、会社が被告取締役を補助(補助参加)する場合は、各監査役の同意が要る[8]
  6. ・ 監査役は、取締役が会社の目的の範囲外又は法令・定款に違反する行為をして(おそれがある場合を含む)会社に著しい損害を生じるおそれがある場合は、その行為の差止請求ができる(担保は不要)[9]
  7. ・ 株主が会社に対して取締役の責任を追及する訴えの提起を求め、監査役が請求日から60日以内に提起しなかった場合、その株主から請求されたときは、監査役は遅滞なく「不提訴理由通知書」で通知しなければならない[10]

    1. (注1) 選任・解任
    2. ・ 監査役は、株主総会で選任(普通決議)又は解任(特別決議)する[11]
    3. ・ 取締役は、事前に監査役の同意を得たうえで、監査役の選任に関する議案を株主総会に提出する[12]
    4. ・ 監査役の任期は、4年である[13]
    5. (注2) 報酬
    6. ・ 監査役の報酬等は、定款に定めがないときは、株主総会で決める[14]
  1. (2) 会計監査人
  2. ・ 大会社かつ公開会社は、会計監査人を置かなければならない[15]
  3. ・ 会計監査人は、株式会社の決算書類(単独、連結)を監査して、会計監査報告を作成する[16]
  4. ・ 会計監査人は、取締役の職務の執行に関し不正行為又は法令・定款に違反する重大な事実を発見したときは、遅滞なく、監査役に報告しなければならない[17]
  5. ・ 決算書類(単独・連結等)等が法令・定款に適合するか否かについて監査役と意見が異なる場合、会計監査人は、株主総会に出席して意見を述べることができる[18]
  6. ・ 株主総会が会計監査人に出席を求める決議をしたときは、出席して意見を述べる義務がある[19]

    1. (注1) 選任・解任
    2. ・ 会計監査人は、株主総会で選任(普通決議)又は解任(特別決議)する[20]
    3. ・ 会計監査人の選任・解任の株主総会議案の内容は、監査役(会)が決定する[21]
    4. ・ 監査役(会)は、次の場合に、会計監査人を解任できる。
      職務上の義務に違反、職務を怠る、非行がある、心身の故障による職務執行上の支障の場合[22]
    5. ・ 会計監査人の任期は1年だが、(株主総会で不再任決議がなされなければ)自動延長される[23]
    6. (注2)報酬
    7. ・ 会計監査人の報酬は、会社と会計監査人が委任契約で決めるが、監査役(会)の同意が要る[24]


[1] 会社法327条1項1号~4号、2項・5項、328条

[2] 指名委員会等設置会社で、大会社かつ公開会社の場合は「執行役及び取締役」。会社法404条2項。

[3] 例えば、指名委員会等設置会社の監査委員(会)に関する会社法の次の条項。340条1項~3項・6項、346条8項、397条1項・2項・5項、399条1項・4項、404条2項1号・4項、405条1項~4項、406条、407条1項・2項、408条1項2号・2項・5項、411条3項、412条1項(なお、会社計算規則129条1項)、419条1項、425条~427条、849条3項3号。

[4] 会社法328条(ただし、監査等委員会設置会社及び指名委員会等設置会社を除く)

[5] 会社法381条1項

[6] 会社法430条

[7] 会社法386条1項

[8] 会社法849条3項

[9] 会社法385条1項、2項

[10] 会社法847条4項、会社法施行規則218条3号

[11] 会社法329条1項、339条1項、309条1項、309条2項7号。なお、定款に別段の規定があればそれに従う。

[12] 会社法343条

[13] 会社法336条1項

[14] 会社法387条1項

[15] 会社法328条

[16] 会社法396条1項、436条2項

[17] 会社法397条1項

[18] 会社法398条1項

[19] 会社法398条2項

[20] 会社法329条1項、339条1項、309条1項、309条2項7号。なお、定款に別段の規定があればそれに従う。

[21] 会社法344条1項~3項

[22] 会社法340条

[23] 会社法338条1項、2項

[24] 会社法399条1項、2項

 

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