◇SH2377◇消費者庁、株式会社TSUTAYAに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令 鈴木正人(2019/03/05)

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消費者庁、株式会社TSUTAYAに対する景品表示法に基づく課徴金納付命令

岩田合同法律事務所

弁護士 鈴 木 正 人

 

 消費者庁は、平成31年2月22日、株式会社TSUTAYA(以下「対象者」という。)に対して、景品表示法で禁止される優良誤認表示があったとして課徴金納付命令を下した(以下「本命令」という。)

 本件は、対象者提供の、①インターネットを介して動画を配信するサービス(以下「動画見放題プラン」という。)や②動画見放題プランとDVD等やCDの宅配レンタルを併用できるサービス、③動画見放題プラン(動画ポイントの提供を除く)と店舗でのDVD等のレンタルを併用できるサービスについて、実際は対象動画が限定(特に「新作」及び「準新作」と称するリリースカテゴリーの動画は限定)されており、実際には無条件で「見放題」になるものではなかったという事案である。

 事案の詳細は割愛するが、本命令では打消し表示に関する分析が示された。例えば、①では同サービスの表示を記載したウェブページと同一のウェブページの下部記載の「よくある質問」にて月間で無制限に新作が観られるわけではないと読みとれる趣旨の記載があったものの、当該記載は「見放題」との記載とは離れた箇所に小さな文字で記載され、また、回答に係る記載が質問に係る記載をそれぞれクリックしなければ表示されないものであること、②では同サービスの表示を記載したウェブページと同一のウェブページに「※新作なども毎月付与される配信ポイント(1080pt)を利用してみることが可能です。」との記載があったもののこの記載内容から動画見放題プランの対象動画に「新作」と称するリリースカテゴリーの動画などが含まれないと認識するのは困難であること、③のうち動画広告に関しては「見たい放題」等の文字及び音声を配信又は放送した画面と同一の画面の下部に「※TSUTAYA TVの『動画見放題』作品が対象となります。」などの文字の配信・放送はなされたものの当該表示が小さな文字でのみ配信・放送されており、また、表示時間も短いことを挙げた上で、それぞれ一般消費者が表示から受ける当該役務の内容に関する認識を打ち消すものではないとの判断をした。

 打消し表示に関しては、消費者庁が「打消し表示に関する表示方法及び内容に関する留意点」(実態調査報告書のまとめ)を公表している(下記URL参照)。同書は、「強調表示は、対象商品・サービスの全てについて、無条件、無制約に当てはまるものと一般消費者に受け止められるため、仮に例外などがあるときは、その旨の表示(いわゆる打消し表示)を分かりやすく適切に行わなければ、その強調表示は、一般消費者に誤認され、不当表示として景品表示法上問題となるおそれがある」と説明する。同書は、その上で、打消し表示の内容を一般消費者が正しく認識できるような適切な表示方法で表示されているか否かは以下の要素等から総合的に判断されるとの見解を示している。

https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/fair_labeling_180607_0004.pdf

 

 <要素>

  1. ・ 打消し表示の文字の大きさ
  2. ・ 強調表示の文字と打消し表示の文字の大きさのバランス
  3. ・ 打消し表示の配置箇所
  4. ・ 打消し表示と背景の区別
  5. ・【動画広告】打消し表示が含まれる画面の表示時間、音声等による表示の方法、強調表示と打消し表示が別の画面に表示されているか、複数の場面で内容の異なる複数の強調表示と打消し表示が登場するか
  6. ・【Web広告(PC)】強調表示と打消し表示が1スクロール以上離れているか
  7. ・【Web広告(スマートフォン)】アコーディオンパネルに打消し表示が表示されているか、コンバージョンボタンの配置箇所、スマートフォンにおける強調表示と打消し表示の距離、スマートフォンにおける打消し表示の文字の大きさ、スマートフォンにおける打消し表示の文字とその背景の色や模様、他の画像等に注意が引きつけられるか

 

 本命令は、ウェブページ表示に関して打消し表示の文字の大きさや打消し表示の配置箇所を、動画広告に関して打消し表示の文字の大きさ、打消し表示が含まれる画面の表示時間、強調表示と打消し表示の表示画面の同一性を、それぞれ考慮して判断しており、同書の判断要素を勘案したものと評価できよう。本事案における表示内容は公表されており、実務において打消し表示を行う際に1つの参考となろう。

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