◇SH2380◇LIXILグループ、代表執行役の異動における経緯等の検証結果を公表(2019/03/06)

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LIXILグループ、代表執行役の異動における経緯等の検証結果を公表

――CEO交代等の取締役会決議は適法かつ有効とした上で、コーポレートガバナンスの強化策も決定――

 

 LIXILグループは2月25日、「当社代表執行役の異動における一連の経緯・手続の調査・検証結果について」を公表した。

 同社では、昨年11月1日付で行ったCEOの交代等を含む代表執行役等の異動(以下「本件人事異動」)について、今年1月31日に、「本件人事異動が、代表執行役やCEO等の交代という当社における最も重要な戦略的意思決定を含むものであることを踏まえ、……一連の経緯および手続の適切性・透明性について、あらためて検証を行うことが必要であると判断し、取締役会により第三者の弁護士に委嘱して、検証を進め」ていることを明らかにしていたものである。

 公表された検証結果によると、今回、第三者の弁護士による調査・検証を行うに至った経緯としては、11月1日付の本件人事異動を決議した10月31日の取締役会決議(以下「本件取締役会決議」)後に、「本件人事異動に係る意思決定に向けた取締役相互間における意思疎通に必ずしも十分でない面があったことが疑われ、一部の取締役から、本件取締役会決議の有効性や本件人事異動における一連の経緯及び手続の適切性・透明性について、あらためて調査・検証を行うことが必要であるとの意見が表明された」ためであるとしている。そこで、同社監査委員会が主体となり、第三者の弁護士である平尾覚弁護士・泰田啓太弁護士を調査補助者として選任して、本件調査は開始された。

 本件調査の結果として、以下のような事実関係が報告された。

  1. ○ 瀬戸欣哉氏(前CEO)が「潮田洋一郎氏(現CEO)がCEOに復帰するのであればいつでも身を引く」旨の発言をしていたが、これはCEOという地位に執着するつもりはないという心意気に過ぎず、具体的かつ確定的な退任の意思表明ではなかった。
  2. ○ 昨年10月26日開催の指名委員会の招集に際し、潮田氏は、あたかも瀬戸氏がCEOを辞任する具体的・確定的な意思を有しているかのような発言をしたと考えられるが、それは瀬戸氏の意思に関する潮田氏の理解とも整合していない上、指名委員の誤解を招く可能性の高いものであったと考えられる。ただし、同日の指名委員会においては、瀬戸氏が辞任の意思を有しているという前提で議論が行われたわけではない。(なお、指名委員会では、全員一致で本件人事異動が可決された。)
  3. ○ 上記の指名委員会後、潮田氏から瀬戸氏に電話やメールでCEOからの辞任等を求めた際の状況については、指名委員会による決定が行われた旨およびその決定を覆すのは困難である旨の説明をしたと考えるのが自然である。
  4. ○ 瀬戸氏は、従前から、潮田氏との意見対立に関して悩み、それを自身の進退と結び付けて考えたことがあったと認められ、潮田氏が瀬戸氏に対して指名委員会による決定が行われた旨およびその決定を覆すのは困難である旨の説明をしたことが、瀬戸氏のCEOからの辞任等の意思決定をした理由の一つになった可能性はあるが、それのみが辞任の理由となったわけではなく、経営方針について生じていた潮田氏との深刻な対立を背景として、潮田氏から退任を強く迫られたことも理由になっていると考えるのが相当である。
  5. ○ 以上の事実関係に鑑みると、瀬戸氏の昨年11月27日付取締役会における発言内容を踏まえても、瀬戸氏によるCEO等から辞任する旨の意思表示を無効ならしめるほどの瑕疵がその意思決定過程に存在したとまで認めることは困難である。

 そして、本件取締役会決議の有効性について調査結果は、「本件取締役会決議に際して、出席取締役に対して十分な情報が与えられず、あるいは不正確な情報しか与えられなかったといった事情は認められず、また、出席取締役から質問がなされ、それに対する回答も行われている上、質問を遮って採決を強行したような事情は存在しない」とした。さらに、「瀬戸氏自身が10月31日の取締役会に出席し、自ら経緯等を説明していることに鑑みると、たとえ瀬戸氏の主張が真実であったとしても、本件取締役会決議の有効性には影響は与えない」として、「その他に本件決議を無効たらしめる事由は見当たらないことからすると、本件取締役会決議は適法であり、有効であると評価するのが相当である」とした。

 これらの調査結果を踏まえて、同社では、「本件取締役会決議の適法性及び有効性に疑義はなく、本件取締役会決議が適法かつ有効に成立している以上、本件人事異動の適法性及び有効性についても問題がないものと認識」しているとしたが、「本件取締役会決議後、本件人事異動に係る意思決定に向けた取締役相互間における意思疎通に必ずしも十分でない面があったことが疑われ、一部の取締役から、本件取締役会決議の有効性や本件人事異動における一連の経緯及び手続の適切性・透明性について、あらためて調査・検証を行うことが必要であるとの意見が表明されたことは事実」であり、「このような疑義が事後的に差し挟まれること自体、望ましいものではない」としている。

 そして同社は、本件調査結果の報告において、今後検討すべき対応策として、以下のような提言を受けたとしている。

  1. ① コーポレートガバナンス・ガイドラインにおいて、新たに、「客観性・適時性・透明性ある手続」に従って、資質を備えたCEOを選任すべきことが明記されたことを踏まえ、当社の実情に即した、代表執行役CEOを始めとする執行役の選任に関する具体的な手続を整備すること。
  2. ② CEOの解任に関する基準及び手続が定められていないことから、コーポレートガバナンス・ガイドラインにおいて、新たに、「CEOを解任するための客観性・適時性・透明性ある手続」を確立すべきであることが明記されたことを踏まえ、当社の実情に即した、代表執行役CEOを始めとする執行役の解任に関する基準及び手続を整備すること。
  3. ③ ①及び②を整備するに際しては、指名委員会の権限や役割が何も定められていない現状を踏まえ、同委員会の権限・役割を明確にすること。
  4. ④ 指名委員会が代表執行役CEOを始めとする執行役の選解任及び選定・解職等について、一定の権限・役割を担う場合には、指名委員会の判断の客観性・独立性・透明性をより確保し、ベスト・プラクティスを追求する観点から、指名委員自身が決議の対象者となった場合の手続や特定の者の辞任意思の確認手続について整備すること。
  5. ⑤ 重要な意思決定である代表執行役やCEOの交代に関しては十分な時間をかけて判断されるべきこと。
  6. ⑥ 社外取締役がより独立した客観的な立場から自らの意見を形成し、取締役会や指名委員会等においてその意見を述べることができるようにするという観点から、独立社外取締役のみを構成員とする会議体を創設し、当該会議体を招集し、議長役を果たす役割を有する筆頭独立社外取締役を選任することの当否について検討すること。

 これらの提言を踏まえて、同社は2月25日開催の取締役会において、コーポレートガバナンスの強化・充実及び透明化を図る対策として、以下の事項を実施することを決議した。

 

(1) 執行役及び代表執行役(CEO)の選任・選定及び解任・解職に係る基準及び手続の明確化

 代表執行役CEOを始めとする執行役の選解任に関する客観性・適時性・透明性ある具体的な手続をコーポレートガバナンス・ガイドラインに定める(第24条)。具体的には、執行役及び代表執行役(CEO)の選任・選定及び解任・解職については、独立社外取締役が構成員の過半数を占める指名委員会を取締役会の諮問機関と位置づけ、指名委員会は、当社所定の選任・選定基準等を踏まえ、執行役の知識・経験・能力等の分析を行うとともに、中期経営計画の達成に向けた経営資源の分析・検討を含め十分な検討及び審議を経て、取締役会にその意見を答申する。取締役会にその意見を答申する場合には、それぞれの対象者について、意見形成を行うに至った理由を明記することにより、答申内容の合理性・公正性を示す。なお、指名委員会が前記答申を行うに際し、指名委員に答申の対象となる者が含まれる場合には、当該指名委員が構造的な利益相反の状況にあることに十分留意した上で、公正な意見形成を行うことを定める。

 また、取締役会が執行役若しくは代表執行役(CEO)を解任・解職する場合、又は執行役若しくは代表執行役(CEO)から辞任の申し出があった場合、指名委員会は、取締役会から要請を受けた場合には、当該執行役又は代表執行役(CEO)と面談し、聴聞の機会を設け、取締役会に報告する。このコーポレートガバナンス・ガイドラインの改定に合わせ、指名委員会の権限及び役割を明確にするため、指名委員会規則の改定も行う。

(2) 独立社外取締役意見交換会の設置

 独立社外取締役意見交換会の設置をコーポレートガバナンス・ガイドラインに定める(第27条)。具体的には、社外取締役がより独立した客観的な立場から自らの意見を形成し、取締役会や指名委員会等においてその意見を述べることができるようにするとともに、独立した客観的な立場に基づく情報交換・認識共有の促進を目的として、独立社外取締役のみを構成員とする独立社外取締役意見交換会を設置する。このほか、特定の事案について、取締役会は独立社外取締役意見交換会に対し諮問又は助言を求めることができ、その場合、独立社外取締役意見交換会は当該事項について審理・検討し、その結果を取締役会に答申・報告する。

(3) 株主の皆様との対話の充実

 株主の皆様との対話を更に充実させるべく、筆頭独立社外取締役が株主様との対話に応じるよう努める旨をコーポレートガバナンス・ガイドラインに定める(第11条)。具体的には、株主の皆様から社外取締役に対する面談の要請があり、かつ、IR担当役員がフェアディスクロージャールール等を踏まえ、特段の理由があると認めるときは、IR担当役員その他必要な者の同席のもと、原則として、独立社外取締役意見交換会の議長である筆頭独立社外取締役がこれに応じるよう努める。

 

 

  1. LIXILグループ、当社代表執行役の異動における一連の経緯・手続の調査・検証結果について(2月25日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/00.pdf
  2. ○ 当社代表執行役の異動における一連の経緯及び手続の検証について(1月31日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/00-1.pdf
  3. ○ 代表執行役の異動に関するお知らせ(2018年10月31日)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/00-2.pdf
  4. ○ LIXILグループ コーポレートガバナンス・ガイドライン(2019年2月25日時点)
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/03/CorporateGovernanceGuideline190225.pdf

 

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