◇SH2381◇金融庁、個人投資家へ間口広がる「ダークプール」で実態把握の対応策を検討 (2019/03/06)

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金融庁、個人投資家へ間口広がる「ダークプール」で実態把握の対応策を検討

――東証もフラグによる把握、情報開示・事前同意、価格規制で積極方針――

 

 金融審議会「市場ワーキング・グループ」(座長・神田秀樹学習院大学大学院教授。以下「市場WG」という)は2月19日に開いた本年初会合となる第19回会議において、昨年の審議では年末にかけて継続的に検討してきた「高齢社会における金融サービスのあり方」とともに、新たに「ダークプールの現状と課題」を議題として取り上げ、その実態把握に向けた対応策の検討を行った。

 いわゆるダークプールとは、金融庁が証券監督者国際機構(IOSCO)“Principles for Dark Liquidity: Final Report”(2011年5月)に基づいて作成した資料によると「電子的にアクセス可能で、取引前透明性のない(気配情報を公表しない)取引の場」のこと(平成28年6月15日開催「市場WG」第2回会議資料1-1・金融庁総務企画局「説明資料(市場間競争と取引所外の取引)」11頁)。

 わが国においてより一般的には「証券会社がコンピュータ・システムを用いて、顧客の注文と対当する取引相手を探し出し、立会外取引システムに取次ぐ仕組みが『ダークプール』と通称されて」おり、「東証市場における取引の4~5%程度のシェアを占めていると推計される」と述べられていた(同会議資料2・大崎貞和委員「取引所外取引の現状と課題」4頁)。顧客注文の執行を具体的にみると、たとえば、みずほ証券によるシステムでは「秘匿性が確保されたシステム環境にて取引が執行され、最終的には日本でのルール・慣例に従い、速やかに取引所立会外取引(東証ToSTNeT取引)として執行完了するモデルを採用して」いる(今般の第19回会議資料3「当社におけるシステムによるインターナルクロッシングについて」1頁)。

 28年12月22日付で取りまとめられた「金融審議会市場ワーキング・グループ報告〜国民の安定的な資産形成に向けた取組みと市場・取引所を巡る制度整備について〜」(以下「市場WG報告書」という)によれば、機関投資家が大口注文を匿名で執行したいというニーズ、アルゴリズム高速取引を行う投資家との注文対当を避けたいというニーズに応えている反面、①取引の執行方針等に関する情報提供や、②取引や取引情報へのアクセスに係る取引参加者間の公平性に関する問題、③取引シェアが高まった場合に市場全体としての価格発見機能が低下するおそれや流動性が分散するおそれがあるといった問題点とともに、欧米において一定の規制を課していることの紹介がある。一方で、PTS(私設取引システム)と同様に認可制の対象とするなどの取扱いを検討することの要請は「(審議において)現状、必ずしも強く聞かれなかった」とし、将来的に新たな課題や環境変化が生じた場合に「必要に応じ、制度的な対応を検討することが適当」と位置付けていた。

 近時の動向をみると、(ア)ダークプールのシェアは市場WG報告書の取りまとめ後も大きく伸びているわけではない(PTSとほぼ同程度の割合)ものの、一方で(イ)ネット証券会社が個人投資家向けダークプールの提供に参入するなど個人投資家への間口が広がってきているとの認識のもと、①何ら規制がないままでは個人投資家に不利益が発生した場合の実態把握や対応が困難であり、②もともと機関投資家を対象とした取引方法であったところ、個人投資家が十分な理解のないままにダークプールを利用しているおそれがあるといった懸念があるとされる。

 このような問題意識を踏まえ、対応を今後検討していくためにも「まずは実態把握を行う仕組みを手当てする必要」から対応策として提案されたのが(1)ダークプールを経由した注文の把握、(2)ダークプール運営情報の開示等、(3)価格改善の実効性の確保の3点(以上、第19回会議資料1「事務局説明資料(ダークプールの現状と課題)」4頁)。

 東証からも諸外国の状況に鑑み、上記(1)について「証券会社が取引所の立会外市場で取引する場合、当該取引がダーク・プールからの付出しであるか否かを識別できるフラグを付すよう制度化を行う。(取引所規則で対応)」とする見解のほか、(2)と絡んでは「情報開示の枠組みを整備するとともに、その利用に当たっては投資家の明確な事前同意(オプト・イン方式)を必要とする制度化を行う」こと、(3)では「小口注文については、立会市場よりも有利な価格とすることを制度化し、価格改善の実効性を確保する。(取引所規則で対応)」ことなど、制度的な対応を行うことが適切とする考え方が示されている(第19回会議資料2「ダーク・プールへの対応について」6頁)。

 

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