◇SH2511◇LIXILグループ、代表執行役の異動を巡り調査報告書を公表 (2019/04/26)

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LIXILグループ、代表執行役の異動を巡り調査報告書を公表

――ガバナンス充実の観点から調査・検証、株主の要請等を踏まえて全文開示へ――

 

 住宅設備最大手のLIXILグループ(本社事業所:東京都千代田区、東証第一部・名証第一部上場)は4月9日、同社が昨年11月1日付で行ったCEOの交代等を含む代表執行役等の異動を巡り、本件人事異動における一連の経緯および手続の適切性・透明性について第三者の弁護士に委嘱して実施した調査・検証の結果を「受領した調査報告書の全文を開示することが必要であると判断するに至った」として開示、公表した。

 同社では1月31日、「当社代表執行役の異動における一連の経緯及び手続の検証について」と題するプレスリリースを発表。「本件人事異動が、代表執行役やCEO等の交代という当社における最も重要な戦略的意思決定を含むものであることを踏まえ、コーポレートガバナンスの充実の観点から、本件人事異動における一連の経緯および手続の適切性・透明性について、あらためて検証を行うことが必要であると判断し」たとして、その検証を取締役会として第三者の弁護士に委嘱、検証作業が継続中であると明らかにしていた。2月25日には当該調査・検証結果を受領したとし、これを踏まえ、同日開催の取締役会において当該調査・検証結果を要約して公表すること、これを踏まえた今後の対応について決議を行ったとする発表がなされていたものである。

 LIXILグループは、指名委員会等設置会社。指名委員会は取締役5名(うち社外取締役4名、かつ委員長は社外取締役)により構成される。2018年11月1日付の本件人事異動は、10月31日開催の取締役会でCEOの交代等を含む代表執行役の異動を行うことが決議され、また同年10月31日付で、取締役・代表執行役社長を兼任していた前CEO・瀬戸氏がCEOを辞任する旨の辞任届を提出したことにより行われた(取締役・代表執行役社長としては2019年3月末まで留任)。伴って、新CEOには取締役・取締役会議長、代表執行役会長を兼務するかたちで前取締役・取締役会議長、指名委員会委員であった創業家の潮田氏が就任した。

 しかしながら本件取締役会決議後、「本件人事異動に係る意思決定に向けた取締役相互間における意思疎通に必ずしも十分でない面があったことが疑われ、一部の取締役から、本件取締役会決議の有効性や本件人事異動における一連の経緯及び手続の適切性・透明性について、あらためて調査・検証を行うことが必要であるとの意見が表明された」ため、同社取締役会は11月27日付で本件調査を第三者の弁護士に委嘱することにしたという。当初は同社監査委員会委員長の発案により監査委員会が主体となり、 大手法律事務所所属の2弁護士を調査補助者として選任したうえで開始された本件調査については、1月28日開催の取締役会でその結果に関する報告を受けたものの、一部の取締役からの指摘も考慮。さらに追加調査・検証の必要があると判断し、あらためて取締役会から同弁護士らに対して追加調査・検証を行うことを委嘱、2月25日開催の取締役会で最終報告を受けるに至っていた。

 今般、全文が開示された調査報告書は2月18日付。LIXILグループから受領した本件人事に関連する資料の精査のほか、取締役全員にヒアリングしたという。報告書中「本件調査の結果判明した事実」によると、(1)同社取締役会規則によれば、執行役の選任および解任、代表執行役の選定および解職ならびに執行役の職務の分掌(CEO、COO、CFO の決定を含む)および指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項は取締役会決議によって定めることとされているところ、事実上の慣例として、指名委員会における議論を行った後、指名委員会の決議内容が議案として取締役会に提案されていたことのほか、(2)2018年10月26日に指名委員会が開催されるに至った経緯、(3)同日開催の指名委員会の状況、(4)10月31日開催の指名委員会までの状況、(5)同日開催の指名委員会の状況、(6)同日開催の取締役会の状況、(7)前CEO・瀬戸氏の辞表提出のそれぞれについて仔細を認定。

 指名委員会や取締役会を構成する各委員・各取締役の発言状況とともに、その後のヒアリングにおいて判明した状況が再現されており、とくに上記(6)に係る記載には、ある取締役からの発言として「中間決算の発表時に代わるというのは、絶対何かがあったのだと、絶対憶測が起こるわけですよ。不必要な混乱を招くという面では、一番避けるべきタイミングである」こと、また別の取締役の発言として「これは外形的に見ますと、最高責任者を代えるのに、指名委員会の委員長と指名委員会の方がそれぞれ代わられるということですよね。見方によれば何かお手盛り人事ではないかと」といった反対意見も明記されている。

 調査報告書では、そのうえで「10月31日の取締役会における本件決議の有効性」を判断。前CEO・瀬戸氏が主張する「自分(瀬戸氏)が辞めることは指名委員会の総意であり、この機関決定は覆せない旨の潮田氏の情報は、瀬戸氏の辞任を必須としていなかった10月26日の指名委員会の決定から見て誤った情報であり、自分(瀬戸氏)はこの不正確な情報に基づいて辞任を受け入れ、10月31日の取締役会に臨んだ」との認識についても、「瀬戸氏自身が10月31日の取締役会に出席し、自ら経緯等を説明していることに鑑みると、たとえ瀬戸氏の主張が真実であったとしても、本件決議の有効性には影響は与えない」などとし、本件決議が適法であって有効であると評価した。

 調査報告書が指摘する「一連の手続におけるガバナンス上の問題点」では、本件人事異動が法的に有効に成立したことを前提としつつ、改訂後のコーポレートガバナンス・コードの補充原則4−3②における規定を引きながら「一連の経緯の適切性についてさらに検討を行う」として、(1)手続の客観性、(2)手続の透明性、(3)CEOの選任にかけた時間について考察を加えている。

 (1)について「法的な問題を惹起させるものではないが、手続の客観性・透明性という観点からは、考えられるベスト・プラクティスに照らして、必ずしも望ましくないといわざるを得ない」こと、(2)について「日程的に厳しい状況にあったことなどから、瀬戸氏の意思の確認は指名委員会で行われず、潮田氏に委ねられることになったため、瀬戸氏の意思確認が不透明な状況で行われることになった」とし、結果として、本件人事が瀬戸氏の辞任という形をとっていながら、同氏が辞任の意思を表明する過程が不透明なままになされたことから生じた問題であることを指摘。(3)についても「今回のCEOの選任手続に十分な時間がかけられたとはいい難い」と言及した。

 これら「ガバナンス上の問題を招いた原因・背景」として、調査報告書は(ア)本件人事の実質的な提案者である潮田氏に対し、取締役において、創業家である潮田氏に対するある種の遠慮があったこと、(イ)CEOをはじめとする執行役の職務分掌に関する指名委員会の役割が不明確であったことを指摘。こういった事情を踏まえた「今後検討すべき対応策」としては、次の3項目に対する「適切な体制・手続の整備を検討することが考えられる」と結論した。①CEOの選任に関する手続、②CEOの解任に関する基準および手続、③筆頭独立社外取締役の選任および独立社外取締役のみを構成員とする会合について。

 LIXILグループではこのような提言を受け、(a)執行役および代表執行役(CEO)の選任・選定および解任・解職に係る基準および手続の明確化、(b)独立社外取締役意見交換会の設置、(c)株主との対話の充実の3点について「コーポレートガバナンスの強化・充実及び透明化を図る対策」として、これらを実施することを決議(2月25日開催の取締役会における)。

 たとえば(a)では、①取締役会の諮問機関と位置付ける指名委員会が取締役会に対してその意見を答申する場合、各対象者につき意見形成を行うに至った理由を明記することにより答申内容の合理性・公正性を示す、②指名委員に答申の対象となる者が含まれる場合には、当該指名委員が構造的な利益相反の状況にあることに十分留意したうえで、公正な意見形成を行うことを定める、③取締役会が執行役もしくは代表執行役(CEO)を解任・解職する場合、または執行役もしくは代表執行役から辞任の申し出があった場合、 指名委員会は取締役会から要請を受けた場合には当該執行役または代表執行役と面談し、聴聞の機会を設け、取締役会に報告するものとした。指名委員会の権限・役割の明確化のため、指名委員会規則の改訂も行われる。

 

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