◇SH2524◇租税における公平の実現(7) 饗庭靖之(2019/05/10)

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租税における公平の実現

第7回

首都大学東京法科大学院教授・弁護士

饗 庭 靖 之

 

第3 租税公平主義から国際的な租税回避を防ぐための課税制度

 国際取引における課税の問題は、国際的な二重課税を排除して各主権国家の課税権を調整して外国の国民や企業に対してどのように課税するか、複数の国家の税制の相違を利用して租税回避が行われることに対する対応、主権国家の領域を超えて行われる活動に調査権をどのように及ぼすかなどの問題があるが、租税公平主義の観点から、インターネット等を通じて国境を越えて行われる取引への課税の問題と、租税回避への対応の問題を取り上げる。

 

1 インターネットを通じて国境を越えて行われる取引への課税の公平性

(1) 財・サービスの提供地管轄国に課税権を認めること

 今日、生産を担う企業行動は大きく変化している。多国籍企業は、いずれかの国に本拠があり、その本拠が支店や子会社を各国に配置して世界的なネットワークを築きあげているという形態でとらえられてきた。しかし、インターネットなど情報手段の発達により、会社の業務執行の意思決定を行うなどの本社機能が地理的に固定されなくなってきている実態があり、多国籍企業の「本拠」という物理的中核組織は、法人の所在登記がなされている場所としてあるものの、本拠が所在しているという地理的所在の機能上の意味は希薄化している。

 さらにデジタル化された商品の場合には、消費地の認定はできても、どこでつくられ、どこが販売した土地かという認定は不可能ないし意味を持たなくなっている。このため、商品の販売行為は消費地を中心に認定することが必要となっている。

 このため、多国籍企業を、子会社や支店を世界に張り巡らせて活動する企業活動としてとらえるのではなく、世界の消費者を相手に商品を販売する企業活動としてとらえていく必要がある。

 現状の多国籍企業の中には、多様な税制を持つ各国で子会社を展開し、なかんずくタックス・ヘイブンを含めて各国の税制を活用することによって、相応の税負担を負っていないものがみられる。各国が多国籍企業に対して提供している行政サービスの原資を得るため、これらの多国籍企業に適正な税負担を求めるべく、国際的にハーモナイズした課税制度を構築する必要がある[1]

 このためには、国際的な企業活動について、特定の国に本拠があり、それが子会社や支店を各国に配置して活動していることを前提に、企業の本店が所在する国が、この企業を「居住者」としてとらえ、それ以外の国は、この企業を非居住者としてとらえ、「PE(恒久的施設)なければ課税なし」の原則にしたがって、原則的に課税しない取扱いをしてきた税制を、財・サービスの提供地を中心に課税していく税制に切り替えていく必要が生じている。

 国際的な取引につき、二重課税を防止する仕組みとして作り上げられたのが、「PE(恒久的施設)なければ課税なし」の原則税制を、今日、租税公平主義の下で、国際的な企業活動に対して適切な課税を行っていくためには、PE(恒久的施設)の有無で所得の源泉の所在地により国内源泉所得と国外源泉所得に分けて課税していく枠組みを超えていくことが必要になっている。

(2) IOT企業への財・サービス購入者の居住地国側の課税の必要性

 インターネットにより国内でサービスを供給する外国企業の事業についての国際課税は、サービス購入者の居住国の現地法人と同視して課税すべきである。

 インターネットにより国際的に財・サービスを提供する行為については、消費地の認定はできても、どこでつくられ、どこが販売した土地かという認定をほとんど不可能ないし無意味にしており、商品の販売行為を消費地を中心に認定していくことが必要となっている。

 インターネットにより国境を越えて財・サービスを供給する外国企業の事業者と、他国の財・サービスの購入者の間の取引では、外国企業の本拠の所在国で財・サービスの提供のための行為が行われ、他国の財・サービスの購入者の居住国で財・サービスの提供の受領・消費が行われており、購入者の居住国でも財・サービスの販売活動が行われている。

 インターネットにより国際的に財・サービスを提供する事業活動については、国際的に消費者を相手に商品を販売する企業活動としてとらえていく必要があり、各国がこのような事業活動を行うことに対して提供している行政サービスの原資を得るため、これらのインターネットにより国際的に財・サービスを提供する事業会社に適正な税負担を求めるべく、財・サービスを購入消費する者の居住国の課税制度を構築する必要がある。

 課税権が、ネットサービス利用国側になく所得源泉国にのみあると、特にインターネット取引により財・サービスを供給する事業者の所得源泉国がタックスヘイブンのとき、租税回避ができてしまい、ネット取引を行う会社への課税が適正に行われないことになる。

 例えば代表的IOT企業は、ダブルアイリッシュ、ダッチ・サンドウィッチと呼ばれる手法で、アイルランドとオランダ間の租税条約がライセンス料につき支払国側で源泉徴収しないこととしていることを利用して、海外事業の収益を、アイルランド、オランダ、アイルランドと経由させて、CFC税制の適用を逃れてタックス・ヘイブン国に所得源泉地を置くことを可能にしている。

 


[1]  渡辺博史「経済教室」2018年8月7日付日本経済新聞朝刊25面

 
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