◇SH2583◇タイ:REITの資産保有に関する規制緩和 箕輪俊介(2019/06/05)

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タイ:REITの資産保有に関する規制緩和

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 箕 輪 俊 介

 

 タイにおけるREIT(信託)は、日本におけるREIT(投資法人)と同様に、不動産の所有権や賃借権を直接取得することに加え、不動産を保有する会社・法人の株式又は持分を間接的に取得することができる。

 この点、従前の規制では、REITが不動産資産を間接取得する場合、REITの不動産資産に対する支配権を確保するため、当該資産保有会社等の株式又は持分の株式数及び議決権割合双方において99%以上を充たすことが求められており、この要件に例外は認められていなかった。

 しかしながら、実務上又は法令上の制約からかかる要件が充たせない場合もあり、従前の規制下ではREITが不動産資産に対する実質的な支配権を確保することができる状況であっても、上記の要件がネックとなり当該資産を取得できないケースが発生していた(制度上の問題を抱えていた。)。このため、この問題に対処するために、2019年2月20日にタイ証券取引所が発行した規則(以下、「本規則」という。)により、以下のような条件を充たす場合にはかかる保有比率要件の緩和が認められるようになった。

 

1. 不動産資産の譲渡人(オリジネーター)がREITマネージャーの関係者ではない場合

 まず、不動産資産の譲渡人(オリジネーター)がREITマネージャーの関係者ではない場合、REITとオリジネーターの関係性が薄いため、資産保有会社等の株式又は持分の99%以上を取得することは容易ではない。したがって、下記に記載するような手立てを取ることにより、資産保有会社に対する支配権を確保できている場合であれば、当該会社等の株式等につき株式数及び議決権割合双方において75%以上を取得している(資産保有会社が複数階層により構成されている場合は各階層ごとに株式数及び議決権割合双方において75%以上を取得している)、等の要件を充たしている限り、当該資産の取得が認められることとなった。

 

2. 法令上の制約により上記の保有比率を取得することが困難である場合

 更に、外資規制等の理由により外国の不動産資産を取得する場合等において、上記の99%以上、75%以上といった基準を充たすことができない場合、40%以上の議決権割合を有している等の要件を充たしている場合は、当該資産の取得が認められるようになった。なお、本規則では、その他の要件として法令上許容される上限の株式数を取得していることも要件として課しているように思われるものの、この点は法文上明確ではないため、今後の運用を確認をする必要がある。

 

3. 支配権の確保

 上記のような保有割合の引き下げを行い、REITによる資産取得の機会を促進する反面、REITが当該資産に対して有しておくべき支配権を確保するために、本規則はREITに対して上記のような例外的な要件緩和を認めるにあたって、その他の条件を含み、少なくとも以下の条件を充たすことを課している。

  1. •  資産保有会社における取締役会にて、持分割合に応じた取締役数を派遣する権利をREITが確保すること
  2. •  当該派遣取締役が資産保有会社の重要な意思決定に関与し、適切な管理・監督ができるように当該派遣取締役の資産保有会社における権利を確保しておくこと
  3. •  REITと資産保有会社の他の株主の間で争訟が起きた際の経営陣の対応方針を決定しておくこと
  4. •  当該資産保有会社の重要な意思決定について関与する権利を確保しておく等により、当該資産保有会社をREITが管理・監督する体制を整えること

 本規則は2019年3月16日より施行されている。

 

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