◇SH2915◇インドネシア:フランチャイズ規制の緩和 前川陽一(2019/12/03)

未分類

インドネシア:フランチャイズ規制の緩和

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 

 インドネシアにおいては、近年の経済成長による中間所得層の拡大と個人消費の増大を背景として、日系を含む外資ブランドのレストランやコンビニエンスストアなどが多く進出している。他方で、厳しいフランチャイズ規制のため、フランチャイズ方式による店舗展開には困難が伴い、特に小売業にあっては、外資規制と相まって、外資ブランドがインドネシア進出を検討する際の足かせとなっていた。

 2019年9月、フランチャイズに関する商業大臣規則2019年第71号(以下「新規則」)が制定され、同時にフランチャイズ規制に関連した既存の4件の商業大臣規則が廃止された。本規則による従前のフランチャイズ規制の主な変更点は以下のとおりである。

 

  1. ⑴ フランチャイジーの指名制限

  2.    従前の規制のもとでは、フランチャイザーは直接的又は間接的に支配関係を有する者をフランチャイジーに指名することはできないとされていた。これにより、支配関係のない地元業者を通してでなければ、外資企業はフランチャイズ・ビジネスを展開できなかった。新規則はこの制限を撤廃したため、今後、フランチャイザーは、自ら子会社を設立した上でフランチャイジーに指名して事業展開を行うこともできる(ただし、外資規制には別途留意する必要がある。)。
  3.    また、従前は、フランチャイジーとして指名できるのは一事業者に限られていたが、新規則により、テリトリーを明確に区分することで複数の事業者をフランチャイジーとして指名することができるように変更された。
     
  4. ⑵ 直営店舗数の上限

  5.    従前は、コンビニエンスストアやスーパーマーケットなどの近代的小売店については150店舗に、飲食店については250店舗に、フランチャイザーとフランチャイジーが運営する直営店舗の上限数が定められ、この上限数を超えて出店をしようとする場合には、サブフランチャイジーを選定するか、他社との資本提携をする必要があった。新規則はこの上限を撤廃したため、今後は数の制限なく直営店舗を出店することができる。
     
  6. ⑶ 国内産品の調達義務

  7.    従前は、フランチャイズ事業に用いる原材料、事業用設備及び商品について、原則として最低80%をインドネシア国内で調達することが義務づけられ、商業省の許可がある場合に限って義務が免除されていた。新規則は、このような最低割合による調達の義務づけを廃止し、品質水準を満たす場合には国内産品を優先して採用すること、原材料の加工は優先的に国内で実施することを求めるにとどめている。
     
  8. ⑷ クリーンブレイク

  9.    従前は、フランチャイザー側からフランチャイズ契約の期限前に一方的に解約しようとする場合には、フランチャイジーとの間で解約について合意に達するか(クリーンブレイク)、裁判所の確定判決を経なければ、新たなフランチャイジーを指名することができないこととされていた。この点は、事業不振時におけるローカルパートナーの変更やインドネシアからの撤退という選択が制約されることになるため、外資企業がフランチャイズ方式による店舗展開を検討するにあたっての大きなリスクとして認識されていた。
  10.    新規則は、このような制限を撤廃した。そのため、今後は、フランチャイズ契約の違反などに基づき、フランチャイザー側から契約を一方的に解除することができるようになったと考えられる。もっとも、解除の場合におけるフランチャイズ登録証(STPW)の失効手続など、手続面の詳細は新規則で明らかにされておらず、商業省によるさらなる明確化が待たれる。

以上

タイトルとURLをコピーしました