◇SH0065◇京都地裁、ヤフー検索で逮捕歴が明らかになった名誉毀損訴訟で請求棄却判決 加藤真由美(2014/08/25)

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ヤフー検索で自己の逮捕歴が明らかになり名誉を棄損されたとして、検索表示の差し止めや慰謝料等約1100万円の損害賠償を求めた訴訟で、請求棄却(京都地裁)

岩田合同法律事務所

弁護士  加 藤 真由美

 インターネットの大手検索サイト「ヤフージャパン」で自分の名前を検索すると、過去の逮捕歴が明らかになり、名誉を棄損されたとして、京都市の男性が、サイト運営者の「ヤフー」に対し、検索結果の表示差し止めや慰謝料等1100万円の損害賠償を請求した訴訟で、男性の請求を棄却するとの判決が、平成26年8月7日、京都地裁であった。

 裁判長は、「検索結果が示すのは、複数のウェブサイトの所在などで逮捕事実自体ではない。」旨判断した。

 本判決は、ヤフーの行為は、そもそも事実の摘示行為ではないとして名誉棄損の成立を否定しているが、他方、自分の名前を検索サイト「グーグル」に入力すると、身に覚えのない犯罪行為が表示されるとして、米グーグルに対し、サイト利用者の男性が、表示差し止めと損害賠償請求をした訴訟において、表示差し止めと30万円の賠償を命じた東京地裁の一審判決もある。もっとも、その控訴審において、東京高裁は、平成26年2月、検索機能による権利侵害は否定できないが侵害は副次的で程度は大きくないとして、表示差し止めを認めず、検索結果の表示はウェブページの抜粋にとどまることから社会通念上容認できないということが一見して明らかではないとして名誉棄損の成立を否定し、一審判決を破棄している。

 日本において、検索サイトを相手に表示差し止めや損害賠償請求をする事例の件数は少なく、裁判例がまだ確立されていないと思われるも、欧州における同様の訴訟では、検索サイト側が敗訴する事例が目立つ(下記表参照)。

 その中で、注目されるのが、平成26年5月の欧州司法裁判所(欧州連合の最高裁判所に相当する裁判所)の判断である。同裁判所は、EUの法律には「忘れられる権利」が存在しており、検索サイト(グーグル)は当該権利を守る義務があるとして、原告の削除請求を認容した。グーグルはこれを受けて5月末からEUの利用者を対象に削除要請の受付を始めたとのことである。

 この判決に対する評価は、「個人のプライバシー保護に資する」という歓迎の意見と、「検閲に当たる」「検索サイト運営者は、膨大な削除要求に応じなければならなくなる」といった批判の意見とで二分されている。

 インターネット上に公表された記事は無限に拡散されていくが、インターネット上の自身に関する記事をなくすために、全ての発信者に対し差し止め請求等することは現実的ではない。そのため、検索サイトに対する表示差し止めを一切認めないとすると、インターネット上で名誉を棄損されたとする個人を救済するには十分とは言い難い面は否めない。インターネットにおいて検索エンジンは、ネット上の記事にアクセスする上で非常に重要な役割を担っているが、その利用を制限することによって生じる不利益と、個人の救済をどのように調整していくのか。司法の判断のみならず、検索サイトの今後の対応についても注目されるところである。

 

判決

事案の概要

判決内容

 フランス・パリ高等裁判所
平成23年12月

フランスの保険会社が検索で社名を入力すると途中で「escroc(詐欺師)」が検索候補として表示され、名誉が傷つけられたとしてグーグルに対し損害賠償請求

請求認容(5万ユーロ)

オーストラリア・ビクトリア州最高裁判所平成24年10月

自分の名前で検索した時に、全く関係のない組織犯罪構成員や麻薬密売人の顔写真が検索結果に表示されて名誉が傷つけられたとしてグーグルに対し損害賠償請求

請求認容(賠償額不明)

欧州最高裁判所
平成26年5月

約16年前に不動産競売にかけられ債務状況の詳細を含めた公示を新聞に掲載された原告が、その名前でグーグル検索すると、その記事がヒットするとして検索結果からの削除を請求

請求認容

 

(かとう・まゆみ)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2005年早稲田大学法学部卒業。2007年東京大学法科大学院卒業。2008年検事任官。大阪地検、東京地検等勤務を経て、2014年4月に「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録、岩田合同法律事務所入所。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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〒100-6310 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング10階 電話 03-3214-6205(代表) 

 

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