経産省、「DX推進指標」とそのガイダンスを公表
――簡易な自己診断の提出でとるべきアクションを把握、取締役会での議論活性化も期待――
経済産業省は7月31日、『「DX推進指標」とそのガイダンス』を取りまとめ、公表した。関連資料として「DX推進指標サマリー」「DX推進指標」「DX推進における取締役会の実効性評価項目」が併せて公表されている。
経産省では平成30年5月、「デジタルトランスフォーメーションに向けた研究会」(座長:青山幹雄南山大学教授)を設置。ITシステムのあり方を中心に、わが国企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を実現していくうえでの課題の整理と対応策の検討を行い、報告書『DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』を取りまとめた(30年9月7日公表)。また、この報告書における指摘を受け、DXを実現していくうえでのアプローチや必要なアクションについての認識の共有が図られるよう「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX推進ガイドライン)」を取りまとめている(同年12月12日公表。なお、民間企業のDX推進のための取組みとして、SH2502 デジタルガバナンス・コード策定に向けて 足立理(2019/04/24)参照)。DXとは「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」である(経産省資料における定義による)。
今般の取りまとめは、わが国企業におけるデジタル経営改革を推進するため「『見える化』指標、診断スキーム構築に向けた全体会議」において平成30年12月〜今年3月に計3回の会合により、下部組織として設置された「『見える化』指標、診断スキーム構築に向けたワーキング・グループ(WG)」において今年1月〜3月に計5回の会合により検討をかさねてきたもの。その後5月〜7月に約30社が本指標の試行版を試行的に利用し、得られた意見等も踏まえ、「『DX推進指標』とそのガイダンス」の策定・公表に至った。
「DX推進指標」は「各企業が簡易な自己診断を行うことを可能とするものであり、経営幹部や事業部門、DX部門、IT部門などの関係者の間で現状や課題に対する認識を共有し、次のアクションにつなげる気付きの機会を提供することを目的とし」ている。その「指標」は、「1. DX推進のための経営のあり方、仕組みに関する指標(「DX推進の枠組み」(定性指標)、「DX推進の取組状況」(定量指標))」「2. DXを実現する上で基盤となるITシステムの構築に関する指標(「ITシステム構築の枠組み」(定性指標)、「ITシステム構築の取組状況」(定量指標))」の2つからなり、定性指標は計4枚のシート、定量指標は1枚のシートとして提供された。各項目について経営幹部・事業部門・DX部門・IT部門などが議論しながら回答することが想定されている。なお、表紙を含めて5ページにまとめられた「DX推進指標サマリー」は、全52ページ建てとなる「『DX推進指標』とそのガイダンス」の要約版と捉えられる。
「DX推進における取締役会の実効性評価項目」は、DX推進指標の内容を踏まえ、取締役会での議論の活性化に資する観点から取締役会の実効性評価に活用できるものとして策定。「取締役会の実効性評価」とは、「その結果の概要を開示すべき」と規定されるコーポレートガバナンス・コードの原則4-11補充原則③を念頭に置いており、経産省では「DXの取組に関する議論が、取締役会においても活発に行われることが期待されます」としている。項目は「A)取締役選任」から「I)ステークホルダーへの情報開示」までの各課題について計16項目、末尾には「J)自由記入欄」が用意されている。
なお、DX推進指標による自己診断結果を本年9月ころ選定予定の中立的な組織に提出することにより、当該組織ではこれを分析、ベンチマーキングを行うこととされている。各企業では(1)このベンチマークの活用により自社と他社の差を把握し、次にとるべきアクションについて理解を深めることにつながるほか、(2)診断結果を収集することとなる当該組織による情報提供を通じ、診断結果のスコアが高い企業において行われた施策の先行事例などを把握できることとなる。