◇SH2887◇公取委、デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引) 瀬戸山真(2019/11/14)

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公取委、デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査
(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引)

岩田合同法律事務所

弁護士 瀬戸山   真

 

1 実態調査の目的

 2018年12月18日に経済産業省、公正取引委員会及び総務省によって策定された「プラットフォーマー型ビジネスの台頭に対応したルール整備の基本原則」は、デジタル・プラットフォーマーのルールやシステムの不透明さが、不公正な取引慣行やプライバシーの侵害等を惹起する可能性が高いことから、「デジタル・プラットフォーマーに関する公正性確保のための透明性の実現」を基本原則の一つとして掲げた[1]。また、かかる基本原則の出発点として、公正取引委員会は、大規模かつ包括的な徹底した調査による取引実態の把握を進めることとしていた。

 そして今般、デジタル・プラットフォーマーの中でも特に問題点の指摘が多いオンラインモール及びアプリストアの取引に係る競争法上問題となり得る取引慣行等の有無を明らかにするため、オンラインモール運営事業者[2]又はアプリストア運営事業者[3](以下これらを総称して「運営事業者」という。)が、オンラインモール又はアプリストアを利用して出品する事業者(以下「利用事業者」という。)との間で行う取引について、実態調査が実施され、その結果が2019年10月31日に公表された。

「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書 
(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引)」より抜粋

 

2 実態調査

(1) オンラインモール市場とアプリストア市場における競争と懸念

 オンラインモール及びアプリストアでは、利用事業者や消費者といった異なる性質を有する複数の層が存在する(両面市場)。かかる性質から、これらの市場では、運用事業者間における①利用事業者の獲得を巡る競争のみならず、②消費者の獲得を巡る競争や、③利用事業者間における消費者をめぐる競争、さらには、④自ら商品を出品する運営事業者と競合する利用事業者との競争といった様々な競争が混在している。

 しかし、これらの市場では、両面市場における間接ネットワーク効果[4]が働くことなどにより、特定のデジタル・プラットフォームへの集中・ロックイン効果を生じさせやすく、その結果、運営事業者が利用事業者よりも優越的な地位に立ちやすい。そして、かかる優位性から、下記の図に記載しているような競争法上の問題が懸念されていた。

「デジタル・プラットフォーマーの取引慣行等に関する実態調査報告書     
(オンラインモール・アプリストアにおける事業者間取引)(概要)」より抜粋

(2) 実態調査結果

 今般の実態調査では、競争法上問題となり得る行為として、運営事業者による①取引先に不利益を与え得る行為、②競合事業者を排除し得る行為、③取引先の事業活動を制限し得る行為が指摘された。

 まず、①取引先に不利益を与え得る行為としては、一方的な規約変更による取引条件の変更(例:手数料の引上げ)、運営事業者による売上金の支払の留保、広告枠の購入要請等、様々な態様による不利益が確認された。これらの行為は、取引上優越的な地位にある運営事業者が、正常な商慣習に照らして不当に、利用事業者に不利益を及ぼす行為(優越的地位の濫用)と解されるおそれがある。

 つぎに、②競合事業者を排除し得る行為としては、利用事業者が他のアプリストア等を利用することの制限、運営事業者又はその関連会社の商品と競合する利用事業者の商品の審査等の行為が確認された。オンラインモールやアプリストアにおいては、前記のとおり、利用事業者と運営事業者側との間の競争も存在するところ、競合商品の審査による当該利用事業者の出店・出品の不承認が、運営事業者側の商品の価格維持等を目的として行われた場合、独占禁止法上問題(単独の直接取引拒絶等)となり得る。

 そして、③取引先の事業活動を制限し得る行為としては、利用事業者が顧客情報を販売促進活動に利用することの制限、販売価格の階層設定による自由な価格設定の制限等の行為が確認された。前者は、顧客情報の利用を制限することにより運営事業者が有利に販売を進めることを目的とする場合、後者は、価格維持効果を目的として行うような場合、独占禁止法上問題(競争者に対する取引妨害・拘束条件付取引等)となり得る。

 

3 小括

 今回の調査を経て、公正取引委員会は、独占禁止法上問題となる行為について、厳正・的確に対処していくとしている。デジタル・プラットフォーマーにおいて注意する必要があることは当然であるが、こうした調査や公正取引委員会の動向は、デジタル・プラットフォームの実務それ自体にも影響を与える可能性が高い。デジタル・プラットフォームの利用事業者をはじめとした関係事業者においても、公正取引委員会の今後の行動には留意すべきであろう。



[2] オンラインモール運営事業者は、利用事業者がオンラインモールに出店・出品するためのシステムを構築・提供し、オンラインモール上で消費者と利用事業者が行う商品の売買等を仲介するためのサービスを提供する。Amazonや楽天市場がこれに該当する。

[3] アプリストア運営事業者は、利用事業者がアプリストアでアプリを配信するためのシステムを構築・提供し、アプリストア上で消費者と利用事業者のアプリ等の売買等を仲介するためのサービスを提供する。Apple App StoreやGoogle Playストアがこれに該当する。

[4] 間接ネットワーク効果とは、同じネットワークに属する参加者グループが複数存在し,一方の参加者が増えれば、他方の参加者の効用も高まるという構造を意味する。

 

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