◇SH2782◇法務省、「ADR法ガイドラインに係る照会・回答について」を公表 ――ADR法6条2号および5号に関する司法書士関係の取扱いについて(2019/09/18)

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法務省、「ADR法ガイドラインに係る照会・回答について」を公表

――ADR法6条2号および5号に関する司法書士関係の取扱いについて――

 

 法務省は9月6日、「ADR法ガイドラインに係る照会・回答について」(9月3日付け)を公表した。

 今回の照会・回答は、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律6条2号における「認証の基準」と司法書士について、および同条5号における「弁護士の助言措置」について、その趣旨を確認しようとするものである。

 今般の照会および回答の概要は、次のとおりである。

 

照会および回答の概要

(1) 裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(以下「ADR法」という。)第6条第2号関係

  1. 【照会】
  2.    ADR法第6条第2号は、「和解の仲介を行うのにふさわしい者を手続実施者として選任することができること」を認証の基準としています。これを受けて、裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の実施に関するガイドライン(以下「ガイドライン」という。)では、2(2)アにおいて、「「和解の仲介を行うのにふさわしい者」とは、和解の仲介を行うために必要な能力及び経験を有…(する)者をいう」とし、必要な能力の1つとして「法律に関する専門的能力」が挙げられています。
  3.    この「法律に関する専門的能力」との関係では、ADR法第6条第5号において、「手続実施者が弁護士でない場合(略)において、…法令の解釈適用に関し専門的知識を必要とするときに、弁護士の助言を受けることができるようにするための措置を定め」ることが認証の基準とされているところ、司法書士法第3条第2項に規定する司法書士(以下「認定司法書士」という。)(注)が司法書士法第3条第1項第7号に規定する民事に関する紛争(以下「簡裁代理対象紛争」という。)に係る民間紛争解決手続の手続実施者である場合、この措置(以下「助言措置」という。)の対象とされていないことが参考になります。
  4.    すなわち、この助言措置は、弁護士又は弁護士法人でない者が、弁護士法第72条の例外としてADR法の認証紛争解決手続を行うについて、法秩序の維持と国民の公正な法律生活を確保する必要から、弁護士法第72条の例外とすることを根拠付けるに足りる公正性及び適正性を確保するために設けられているものとされているところ、認定司法書士の場合、助言措置がなくても自ら公正かつ適正に簡裁代理対象紛争の手続を行う能力があるとされていることになります。
  5.    このようなADR法の建て付けからすれば、司法書士には、ガイドライン2(2)アにおいて手続実施者に求められる「法律に関する専門的能力」があることを前提に考えればよいと解されます。
  6.    以上のとおり、①簡裁代理対象紛争以外の事案について認定司法書士が手続実施者となる場合、また、②(簡裁代理対象紛争であるか否かを問わず)認定司法書士でない司法書士が手続実施者になる場合は、助言措置を定めることによって認証を受けることができると解されてきていますが、現在もその解釈及び取扱いに変更はないと理解して差し支えないか。
  7.    なお、当連合会としては、本件照会に係る解釈の下で、認証ADR機関である各司法書士調停センターにおいて、実績等を積み上げてきていることを申し添えます。
  8.   (注)認定司法書士には、司法書士法第3条第1項第6号から第8号により、簡裁訴訟代理等関係業務(司法書士法第3条第2項)を行うことが認められている。
     
  9. 【回答】
  10.    貴見のとおり。
  11.    ただし、和解の仲介を行うのにふさわしい者には、「①法律に関する専門的能力、②和解の仲介を行う紛争の分野(略)に関する専門的能力又は③紛争解決の技術(略)に関する専門的能力」(ガイドライン2(2)ア)が必要とされることから、取り扱う「紛争の範囲を前提として、他の認証の要件(…(ADR)法第6条第2号の基準…、…)を審査することになる。」(ガイドライン2(1)イ)。
  12.    したがって、例えば「民事に関する紛争一般」というように広範な紛争を取り扱うものとする場合には、そのような紛争の広範性を前提として、各種要件を審査することになる。

(2) ADR法第6条第5号関係

  1. 【照会】
  2.    ADR法第6条第5号が認証の基準としている「助言措置」(上記(1)参照)に関しては、規制改革推進のための3か年計画(再改定)(平成21年3月31日閣議決定)において、ADR法の「弁護士の助言措置」の適正な解釈・運用の周知徹底(II 重点計画事項-18法務・資格(3))について決定されています(以下単に「閣議決定」という。)。
  3.    閣議決定の3パラ(参考)において示されている、助言措置に係る法務省の解釈は現在も変更されていないと理解して差し支えないか。
  4. (参考)
  5.   「そこで、規制改革会議において、法務省に対し、同号の解釈を改めて確認したところ、①助言措置を求める弁護士は弁護士会を介さずに個別の弁護士と契約する方式をとることが可能であること、②どのような場合に弁護士の助言措置を受けることが必要になるのかは、手続実施者が事項の性質、内容等に応じて定めた基準や判断手順に基づき客観的に判断するものであること、③ADR業務の対象領域の確定は弁護士会が行うものではないことが示された。」
     
  6. 【回答】
  7.    貴見のとおり。
  8.    なお、ガイドライン2(5)エが求める「助言措置」が満たすべき要件に関し、2(5)エ(     イ)に示す(a)から(d)までの方法は例示であり、弁護士から時機を失することなく助言を受けることができる限り、例示以外の方法も認められ得る。
  9.    また、(a)から(d)までの方法を組み合わせることも可能である。

 

  1. 法務省、「ADR法ガイドラインに係る照会・回答について」(令和元年9月3日付け)(9月6日)
  2. https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/09/adr01-12.pdf
  3.   ○裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律関係資料一覧
    http://www.moj.go.jp/KANBOU/ADR/siryou.html
  4.   ○裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律の実施に関するガイドライン
    https://portal.shojihomu.co.jp/wp-content/uploads/2019/09/adr01-08.pdf
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