◇SH2886◇企業におけるフリーランスとの契約(下) 佐藤大和(2019/11/14)

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企業におけるフリーランスとの契約(下)

レイ法律事務所

弁護士 佐 藤 大 和

 

2 裁判例と契約上の注意点

 ⑵ 契約上の注意点

  1.  ア 知的財産の帰属
  2.    多くの企業とフリーランスとの契約では、後々に権利関係の帰属で揉めないようにするために、業務上発生した著作権などの知的財産について、対価を定めず、無条件に企業側に権利を帰属させる契約内容が散見される。また、活動実態として、企業側の指示命令に従うことを要求する、業務時間や業務場所を拘束する、といった場合も少なくない。その結果として、現在、多くの企業の契約内容では、フリーランスの労働者性が認められやすい状態となっている。
  3.    そのため、契約書では、知的財産等について対価を定めたほうがよく、無条件に企業側に対して権利を帰属させることを避けたほうがよい。実際にその他の裁判例(東京地判平成13・7・18判時1788号64頁)においても、業務において発生する知的財産が無条件で企業側に帰属していることを労働者性の判断の要素としているように読める。
     
  4.  イ 専属性と月々の固定報酬
  5.    また、業務についてほかの企業にて業務をすることを許さない「専属性」を定める契約内容もあり、特に芸能関係の契約では必ずといっていいほど専属契約となっているが、専属性があることは労働者性を高める要素であることは間違いない。さらに専属性にした上で、月々の固定報酬とした場合は、なおさら報酬が仕事の成果ではなく、労務の時間の長さに応じる対価(報酬の労務対償性)であると見られ、労働者性をいっそう高めるといえるだろう。
  6.    そのため、契約書では、専属性はできる限り避けた上で、契約内容において、フリーランス側に業務内容の諾否の自由についても明記し、月々の固定報酬もできる限り避けて、時間の長さに応じる対価と見られないよう仕事の成果に対する報酬とするべきである。

 ⑶ 労働者性と認定されるフリーランス側からのデメリット

 ところで、フリーランス側としては、労働者性が認められることについて、メリットもあるが、大きなデメリットがあることにも注意を要する。つまり、裁判等において労働者として認められた場合には、職務著作として、著作者は企業側となる可能性が非常に高くなる(著作権法15条)。

 フリーランスの仕事内容によっては、自らの知的財産が仕事の価値を生む場合も多く、自らに著作権を帰属する形にして、企業側とライセンス契約を締結し、継続的に報酬が支払われる形にしたほうがよい場合も多いため、安易に労働者性を主張することは避けたほうがいい。この点について、最近、フリーランス側が、著作権等の帰属を意識せず自らが労働者であると主張し、労働者であると認定された結果、大切な知的財産を失うケースも散見されている。

 

3 おわりに

 以上のとおり、本稿では、従来の労働者性の考慮要素としては、あまり取り上げられてこなかった、専属性および権利の帰属、指示命令等を中心にフリーランスの労働者性について解説をした。

 企業側にとってもフリーランス側にとっても労働者性が認められることについてはメリットとデメリットがあるが、本稿が一つの参考になれば幸いである。

以上

 

図 労働者と認められることのメリット及びデメリット

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