◇SH2986◇ベトナム:外国人出入国管理法の改正によるビザ取得手続きの変更(下) 鷹野 亨(2020/01/29)

未分類

ベトナム:外国人出入国管理法の改正によるビザ取得手続きの変更(下)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 鷹 野   亨

はじめに

 2019年11月25日、ビザ取得に関するルールを定めた外国人出入国管理法47/2014/QH13号(以下、「現行法」という。)を改正する法律51/2019/QH14号(以下、「改正法」という。)が国会で可決された。改正法は2020年7月1日に施行される。改正法の主な変更点について、前回に引き続きご説明したい。

 

▷ 入国目的の変更が可能に

 現行法では、入国の目的を変更してはならないとされている(現行法7条1項)。そのため、ビザ取得後に別の入国目的で滞在したい場合、ビザ更新のタイミングで一度出国してからビザを再取得して再入国する方法が取られることが多い。

 改正法では、以下のいずれかの場合に限り、入国目的を変更することが認められた(改正法1条2項)。

  1. ① ベトナム法令に従い、ベトナムで投資している外国人投資家又は外国組織の代表者であることの証拠を有すること。
  2. ② 招聘又は身元保証を行う個人と、親、配偶者又は子の関係にあることの証拠を有すること。
  3. ③ ベトナムで就労するために、法人又は組織から招聘又は身元保証され、かつ労働許可証又は労働許可証免除承認書を有すること。
  4. ④ 電子ビザで入国し、かつ労働許可証又は労働許可証免除承認書を有すること。

 なお、入国目的変更の手続きは、新規ビザの発給申請手続きと同様とされている(改正法1項2条)。すなわち、ビザ発行の申請書及びパスポートを出入国管理局に対して提出すれば、申請書類受理から5営業日以内に発行可否の結果が申請者に通知されることになる。もっとも、入国目的変更の手続きは改正法により認められた新たな手続きであるため、その詳細な方法については、今後政府から何らかの発表がなされる可能性もある。

 

▷ ビザ免除措置の適用拡大

 現在、ビザ免除措置の一つに、リゾート開発が進んでいるフーコック島に滞在し、ベトナムでの滞在期間が30日以内である外国人を対象としたものがある。これは原則として就労目的か観光目的かを問わず、すべての外国人に適用されている。改正法では、当該ビザ免除措置の適用条件が明文化され、またその範囲がフーコック島以外にも拡大される。具体的には、以下①~④の条件をすべて満たす沿岸経済区かつ政府が指定する区域に滞在する目的で入国し、滞在期間が30日以内の外国人は、ビザが免除される(改正法1条7項)。

  1. ① 国際空港を有すること。
  2. ② 区画可能なエリアであること。
  3. ③ 本土との間に明確な地理的境界があること。
  4. ④ 経済・社会発展の政策に適合し、ベトナムの国防・安全保障・治安を害さないこと。

 もっとも、上記の要件は曖昧な表現で規定されているため、ビザ免除措置が適用される具体的な区域については、政府の運用によるところが大きいと思われる。

 

▷ ビザ免除者の再入国制限の廃止

 現行法では、外国人がビザ免除措置を利用してベトナムに再入国する場合、出国日から再入国日までの期間を30日以上空けなければならないとされている(現行法20条)。改正法では、同規定が廃止された(改正法1条11項)。

 

まとめ

 以上のとおり改正法を概観すると、ベトナムを訪れる外国人にとって歓迎すべきものであるといえるだろう。

 ビジネスが目的の場合、最も利便性が上がったのは、入国目的の変更ができるようになったことだと考える。例えば、短期のビザを取得し出張でベトナムに訪れていたが、現地拠点設立に伴い労働許可証を取得して入国目的を長期のビザに変更する場合、その変更をベトナム国内で完結できるようになり、ベトナム進出における手続きの煩雑さが軽減される。

 一方で、ビザの種類の細分化など、改正法の内容を十分に理解した上で手続きを進めなければならない点もある。加えて、改正法はまだ施行されておらずどのような運用となるかは不透明であるため、ガイドライン等の制定も含めて今後の政府の動向を注視する必要がある。

タイトルとURLをコピーしました