SH4686 カンボジア:企業結合届出に関する下位規則の制定  箕輪俊介(2023/11/14)

取引法務競争法(独禁法)・下請法

カンボジア:企業結合届出に関する下位規則の制定

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 箕 輪 俊 介

 

はじめに

 カンボジアは、ASEAN加盟国では最後発となるが、包括的な競争法であるLaw on Competition(以下、「カンボジア競争法」という。)を2021年10月に公布し、同月より施行している。カンボジア競争法にて規定される各種規制のうち、企業結合については、企業結合届出が必要となる取引の基準等、企業結合届出を実際に運用するにあたって必要となる規制の詳細は下位規則に委ねられていたところ、2023年3月及び6月にこの下位規則(以下、「本下位規則」という。)が公布された。本下位規則は2023年9月6日に施行されることとされており、今後カンボジアでも大型のM&Aについては企業結合届出が必要となることが想定されるため、本稿にて紹介したい。

 

1 届出基準

 カンボジア競争法上、一定以上の規模のM&A取引を行う当事者は、カンボジア競争委員会(the Competition Commission of Cambodia)(以下、「競争委員会」という。)に対して事前届出を行う義務があり、取引の実行より前に競争委員会の承認を取得することが求められる。事前届出の対象になる取引か否かは、以下の当事者基準及び取引基準のいずれかを充たすか否かで判断がなされる。

⑴ 当事者基準

 届出年の直前の会計年度において、当事者のいずれかまたはその者が帰属する企業グループが以下のいずれかに該当する場合

  1. (a)カンボジア国内に3,400億リエル(約125億円)(2023年11月現在のレート。以下同じ。)を超える資産を有している場合
  2. (b)(ⅰ)カンボジアにおける取引の売上高が年間2,700億リエル(約99億円)を超える場合、または、(ⅱ)カンボジアにおける利益が1,200億リエル(約44億円)を超える場合
⑵ 取引基準

 届出の対象となる取引の取引価額が410億リエル(約15億円)を超える場合

 なお、届出の対象となる取引が銀行業や保険業といった金融機関に関する取引である場合は、上記とは異なる基準(より高い閾値での基準)が設けられている。

 競争委員会は、上記の基準に設定されているそれぞれの閾値について、必要に応じて見直しを行い、変更する権限を有する。

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(みのわ・しゅんすけ)

2005年東京大学法学部卒業、2007年一橋大学大学院法学研究科(法科大学院・司法試験合格により)退学。2014 年Duke University School of Law 卒業(LL.M.)、2014 年Ashurst LLP(ロンドン)勤務を経て、2014 年より長島・大野・常松法律事務所バンコク・オフィス勤務。

バンコク赴任前は、中国を中心としたアジア諸国への日本企業の進出支援、並びに、金融法務、銀行法務及び不動産取引を中心に国内外の企業法務全般に従事。現在は、タイ及びその周辺国への日本企業の進出、並びに、在タイ日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。

 

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