☆インドネシア:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 福井信雄(2020/04/03)

2020年4月2日号
インドネシア:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

                                                        長島・大野・常松法律事務所

弁護士 福 井 信 雄

はじめに

 4月1日に発表された日銀短観が7年ぶりにマイナスに転じるなど、新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動への影響が深刻化しています。また、諸外国における移動制限や事業所閉鎖の拡大に伴い、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、日本時間2020年4月1日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:136人、感染者数(累計):1,528人(3月31日現在)

 3月に入って感染者が急増しており、3月20日以降、事前に健康証明書を提出してビザの取得をしない限り、外国人の入国は全て禁止されていたが、4月2日以降、滞在許可証を保有しない外国人の入国を一律に禁止する追加措置がとられる。3月15日には、ジョコウィ大統領及びジャカルタ州知事の声明が出され、公務員及び民間企業での自宅勤務の導入やジャカルタ州内全ての学校の2週間休校等の感染拡大防止のための措置が国内でも実施され、さらに3月20日のジャカルタ州知事の非常事態宣言により娯楽施設や商業施設の閉鎖等の追加措置がとられている。加えて、国内の感染がインドネシア全土に拡大していることから、各地方政府レベルで移動制限等の措置がとられ始めているが、その法的な根拠は必ずしも明確ではない。

 

主な政府発表

  1. ・ 法務人権大臣令2020年第3号(2020年2月5日制定)に基づく中国人及び中国への渡航歴のある外国人へのビザ発給の一時停止
  2. ・ ジョコウィ大統領による、インドネシア初の国内感染事例に関する声明(3月2日)
  3. ・ ジョコウィ大統領による、新型コロナウイルス拡大防止に向けての声明(3月15日)
  4. ・ ジャカルタ州知事による非常事態宣言(3月20日)
  5. ・ 調整大臣が地域隔離に関する政令の公布を発表(3月27日)
  6. ・ ジャカルタ州知事が中央政府に対してジャカルタの都市封鎖の実施に関する要請書を提出(3月30日)
  7. ・ 外務大臣による外国人の入国全面禁止の発表(3月31日)

 

渡航情報

  1. ・ 直近の過去14日間にイラン、イタリア、バチカン、スペイン、フランス、ドイツ、スイス、英国に滞在歴のある外国人の入国及びトランジットが禁止されている。
  2. ・ 外国人出張者の多くはインドネシアの空港到着後に取得できる到着ビザ(Visa On Arrival)を取得して入国していると思われるが、3月20日以降、当面1か月間はこの到着ビザの発給が停止される。インドネシアに入国する場合は、事前にインドネシアの在外公館で保健当局が発行する健康証明書(Health Certificate)の提出が求められる。
  3. ・ 3月31日、インドネシア政府は一時滞在許可証(KITAS)や長期滞在許可証(KITAP)を保有しない外国人に対して、インドネシアへの入国とトランジットを当面禁止することを発表し、この追加措置は4月2日より実施される。滞在許可証を保有する外国人は引き続き入国は可能であるが、健康証明書の提出が求められる。

 

その他

  1. ・ インドネシア金融庁は、3月9日付で「自社株買いが許容される市況への重大な変動を与えるその他の事由」に関する回状(Circular Letter)を発行し、今回の新型コロナウイルスの拡散が市況への重大な変動を与える事由に該当するとの解釈を明らかにした。インドネシアの上場会社に関しては、一定の市況への重大な変動を与える事由が生じた場合に、本来必要な株主総会の決議無しに一定限度の自社株買いを許容する金融庁規則が2013年に施行されているところ、今回の回状により、現在の状況下で同規則の適用を受けられることが明確化され、より機動的な自社株買いが可能であることが確認された。市場での株価の下落が著しい現状において、上場会社の資本政策の選択肢が広がる措置と評価できる。
  2. ・ インドネシア金融庁は、3月18日付で新たな回状を発行し、上場会社による年次株主総会の開催期限を2か月延長して8月31日までに変更し、また計算書類等の提出期限も2か月延長した。
  3. ・ 感染拡大防止の目的で、インドネシアへの投資を主管する投資調整庁の窓口が3月17日より3月末までサービスを一時停止することを発表した。この措置は4月以降も継続している。オンラインでの手続は引き続き可能である。
  4. ・ インドネシア事業競争監視委員会(KPPU)は、企業結合届出の受付を含む業務を4月6日まで中断する措置をとることを決定した。この措置は3月16日に遡って適用され、この期間は提出期限である30営業日の日数にはカウントされないことになり、結果的に提出期限が延長されたことになる。
  5. ・ インドネシア金融庁は、3月16日付で新型コロナウイルス発生の影響に対する景気対策としての国家経済刺激策に関する規則を制定し、銀行に対して特に中小零細企業の債務者に向けた救済措置を実施することを促している。

 

(ふくい・のぶお)

2001年 東京大学法学部卒業。 2003年 弁護士登録(第一東京弁護士会)。 2009年 Duke University School of Law卒業(LL.M. )。 2009年~2010年 Haynes and Boone LLP(Dallas)勤務。

2010年~2013年10月 Widyawan & Partners(Jakarta)勤務。 2013年11月~長島・大野・常松法律事務所 シンガポール・オフィス勤務。 現在はシンガポールを拠点とし、インドネシアを中心とする東南アジア各国への日本企業の事業進出や現地企業の買収、既進出企業の現地でのオペレーションに伴う法務アドバイスを行っている。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

詳しくは、こちらをご覧ください。

タイトルとURLをコピーしました