☆シンガポール:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 坂下 大(2020/03/16)

2020年3月18日号
シンガポール:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

                                                                                長島・大野・常松法律事務所

弁護士 坂 下   大

はじめに

 欧米における急速な渡航制限・行動制限の拡大に伴い、新型コロナウイルスの国内外における事業活動への影響が一層深刻化してきています。感染拡大に伴う国内の各種法律問題に加え、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、当事務所の海外オフィスと連携して速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本ニュースレターは感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本ニュースレターの内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本ニュースレターの内容は、特段記載のない限り、2020年3月17日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:0人、感染者数(累計):266人(3月17日現在)

 比較的早期から厳格な入国制限や国内における感染者、濃厚接触者の隔離等の感染拡大防止措置を講じていたシンガポールは、3月初旬までは感染者数を1日数人程度に抑え込んでいたが、この数日は1日あたり10-20名程度の感染者が確認されるようになっている。世界的な感染拡大を受けて、国外で感染した後シンガポールに入国して発症したと思われる人の割合が急増しており(17日の感染者23人中17人が海外で感染したと確認されている)、かかる状況を受けて入国禁止、SHN[1]の対象国がさらに拡大され、下記のとおり日本やASEANもその対象に含められるに至った。これにより、シンガポールからASEAN域内への出張や、日本への出張、一時帰国は事実上困難になりそうである。

 

主な政府発表

  1. ・ 保健省によるDisease Outbreak Response System Condition (DORSCON)と呼ばれる感染指標に基づくリスクレベルのオレンジへの引き上げ(2月7日)
  2. ・ 人材省による企業向け社内での感染者が確認された場合の対応ガイドラインの策定(2月21日、同27日、同28日)
  3. ・ クリーン・タスクフォースの設置の発表(3月6日)(世界的な感染の拡大を受け、水際対策の効果が今後限定的になることを想定し、シンガポールにおける衛生環境の向上のための施策を行う)
  4. ・ リー・シェンロン首相、DORSCONレベルをオレンジに維持する旨や、国民に対し冷静な対応をすべき旨の呼びかけを含む演説(3月12日)
  5. ・ 人材省による、BCP(Business Continuity Plan)の策定等、雇用者として講ずるべき措置に関するガイドラインのアップデート(3月16日)
  6. ・ 人材省による、従業員の海外渡航への対応に関する諸ガイドラインの策定(3月16日)

 

渡航情報

  1. 1. シンガポール国民、永住者、長期滞在パス(雇用パス等)保有者
    (1)過去14日間に以下の地域への渡航歴を有する者はSHNの対象

    ・ ASEAN各国、日本、スイス、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イラン、韓国、中国本土
    (2)過去14日以内に上記の入国禁止対象国への渡航歴がある雇用パス保有者等のシンガポール入国については、雇用者の責任において、事前に人材省(MOM)の許可を得る必要がある。

  2. 2. 旅行者、出張者等の短期滞滞在者
    (1)過去14日間に以下の地域への渡航歴を有する者はSHNの対象
    ・ ASEAN各国、日本、スイス、英国
    ・ SHN期間中の滞在先を示す資料(ホテル予約や親族宅の情報等)を提示する必要がある
    (2)ASEAN各国国籍を有する者は、シンガポール入国前に居住国のシンガポール大使館を通じて保健省(MOH)による承認(ヘルスクリアランス)を得る必要がある。
    (3)過去14日間に以下の地域への渡航歴を有する者の入国及び乗継ぎを禁止
    ・ フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、イラン、韓国、中国本土

 

その他

  1. ・ 当局のウェブサイトにおいて、各感染者の属性や既確認感染者とのリンク等の情報が比較的詳細に公開されている。また、登録者には、政府より1日1、2回程度の頻度でSNS(WhatsApp)を通じ新規感染者数その他の最新情報が配信されている。
  2. ・ 雇用パス保有者(外国人労働者)の場合、SHNの遵守は、労働者と雇用者の共同の義務であるとされている(例えば、雇用者は、SHN期間中、労働者が食事や日用品を確保できるようにする義務を負う)。SHNの遵守はスマートフォンアプリ等を通じて厳格にチェックされ、不遵守に対しては雇用パスの取消しや、雇用者に対する将来の雇用パス申請不許可等の厳格な処分が科されうる(実際にそのような処分例も報道されている)。自社従業員がSHNの対象となる場合には、雇用者としてもその遵守について十分配慮をする必要がある。
  3. ・ 3月12日より、従業員の月給に影響を及ぼすコスト削減措置を講じた企業に対し、MOMへの通知が義務付けられている。

 


[1] Stay Home Notice: 自宅等での14日間の経過観察、外出禁止措置

 

(さかした・ゆたか)

2007年に長島・大野・常松法律事務所に入所し、クロスボーダー案件を含む多業種にわたるM&A、事業再生案件等に従事。2015年よりシンガポールを拠点とし、アジア各国におけるM&Aその他種々の企業法務に関するアドバイスを行っている。

慶應義塾大学法学部法律学科卒業、Duke University, The Fuqua School of Business卒業(MBA)。日本及び米国カリフォルニア州の弁護士資格を有する。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

長島・大野・常松法律事務所は、約500名の弁護士が所属する日本有数の総合法律事務所です。企業法務におけるあらゆる分野のリーガルサービスをワンストップで提供し、国内案件及び国際案件の双方に豊富な経験と実績を有しています。

当事務所は、東京、ニューヨーク、シンガポール、バンコク、ホーチミン、ハノイ及び上海にオフィスを構えるほか、ジャカルタに現地デスクを設け、北京にも弁護士を派遣しています。また、東京オフィス内には、日本企業によるアジア地域への進出や業務展開を支援する「アジアプラクティスグループ(APG)」及び「中国プラクティスグループ(CPG)」が組織されています。当事務所は、国内外の拠点で執務する弁護士が緊密な連携を図り、更に現地の有力な法律事務所との提携及び協力関係も活かして、特定の国・地域に限定されない総合的なリーガルサービスを提供しています。

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