☆中国:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報) 川合正倫(2020/03/14)

 

2020年3月12日号
中国:新型コロナウイルスの影響まとめ(速報)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

はじめに

 3月11日、世界保健機関(WHO)は新型コロナウイルスの感染が「パンデミック(世界的流行)」に該当すると発表し、国から国への感染の広がりの制御が難しい状態にあるとの認識を示しました。感染拡大に伴う国内の各種法律問題に加え、海外に子会社・関係会社を抱える企業からの問い合わせも増えているため、速報ベースで各国の方針や影響拡大状況の概要につきお知らせ致します。なお、本記事は感染拡大が続く間、不定期に配信していきたいと思いますが、同感染症の拡大状況については日々状況が変化している中、本記事の内容がその後変更・更新されている可能性については十分ご留意の上参照ください。本記事の内容は、特段記載のない限り、2020年3月10日夜時点で判明している情報に基づいています。

 

全体概況  死亡者:3,158人、感染者数(累計):80,778人(3月11日現在)[1]

 中国では国務院による春節期間の延長、各地方政府による事業再開の制限、公共交通機関の停止や駅・空港の閉鎖による移動制限等の各種の強力な感染拡大防止措置が講じられた効果もあり、新たな症例数及び死亡者数は顕著な減少傾向にある。2月17日の国務院の指示に基づき、社会・経済活動の回復に向けた新たな防疫管理方法として、各省の県レベルの行政単位ごとに高、中、低のリスク分類が実施されている。中、低に分類される地域が増加しており企業の再開が順次進められている。

 他方で、近時は国外から流入した感染者に関する報告が相次いでおり、海外からの感染流入の防止を最重要任務と位置づけ、日本を含む新型コロナウイルスの感染が拡大している国・地域からの入国者の管理が一段と強化されている。北京や上海を初め多くの地域で、空港からの移動手段が制限されるだけではなく14日間の自宅又は指定施設での隔離が求められている。

 

主な政府発表

  1. ・ 中国国務院は2月18日付で、企業の社会保険料負担を一定期間減免するなどの措置を公表した。これを受け、人力資源・社会保障部は2月20日及び21日に社会保険料の企業負担分を一定期間減免する旨の通知を公表した。
  2. ・ 各地方政府も、企業の負担軽減等に関する方針を打ち出しており、例えば上海市政府は2月8日に「全力で感染症を防止・抑制し、企業の穏やかで健康な発展に向けた支援のための若干の措置」[2]を発表した。この措置は、(1)企業が新型コロナウイルス感染拡大防止に取り組むことへの支援、(2)各種企業負担の軽減、(3)企業に対する金融支援救済力の強化、(4)企業の雇用の安定化のための支援、(5)企業の操業再開の促進、(6)企業向けサービスとビジネス環境の最適化などから構成される。さらに3月3日に上海市政府は企業サポート策28条に関するQ&Aも公表した。
  3. ・ 新型コロナウイルス感染症の予防・抑制期間に居留期間が満了となった場合、中国国内に在留している外国人については自動的に2ヵ月期限が延長される。外国に一時帰国している期間に期間満了となる者には適用されない。

 

渡航情報

  1. ・ 3月10日から日本人が、旅行、友人訪問又はトランジットのいずれかの目的で中国に入国する場合、滞在日数が15日以内であれば査証を免除するという措置を暫定停止される。停止措置の終了時期は未定。日本人のビジネス及び親族訪問目的の中国訪問については引き続き査証免除が適用されるが、入国時に中国国内の招待側が7日以内に発行した書類の原本を提示する必要がある。
  2. ・ 中国の一部地域では日本や韓国からの入国者に対し、到着空港から当局の指定車両で居住地や指定ホテルに移送して14日間の隔離措置を義務づけるなど、海外からの渡航者に対する入国管理を厳格化する動きが広がっている。3月10日以降、浙江省では自宅隔離が認められず指定施設での隔離が求められるという情報があるなど、地方ごとに対応が異なる。
  3. ・ 3月3日、上海市でも日本を含む新型コロナウイルス感染症が広がっている国・地域からの渡航者を対象に14日間の自宅又は指定施設での隔離措置が公表された。3月3日以降に入国した場合、上海では、空港からの移動手段の制限に加え、入国後の自宅又は指定施設での隔離が強制され、自宅等への抜き打ち査察や1日2回の検温状況の報告が求められるなど厳格な管理が実施されている。
  4. ・ 3月11日、北京市は新型コロナウイルス感染の深刻な地域以外から入国する者に対しても、一律に14 日間の自宅観察または指定場所での医学観察の措置をとると発表した。日本、韓国、イタリア、イランからの入境者に対して行っていた措置の対象者を拡大する内容であり、海外からの感染流入防止の規制が強化されている。
  5. ・ 北京では、イタリアから飛行機で北京に到着した4名が入国健康申告カードに事実通りに申告せず、伝染病予防治療妨害罪に違反したとして逮捕されたという報道もあり、中国に入国する場合には政府の管理措置の内容に十分注意する必要がある。

 

その他

  1. ・ 感染リスクが低下した地域の製造業を中心に事業再開の動きがみられる一方で引き続き多くの企業で在宅勤務、また、学校ではオンライン授業が採用されている。なお、上海日本人学校は一度公表した授業再開時期の通知を撤回している。

 


[1] 大部分は武漢が所在する湖北省に集中している:累計死者数3,046人、累計感染者数67,773人

[2] 上海市人民政府外事弁公室が日本語訳を掲載している。
  http://wsb.sh.gov.cn/wsb/node466/n993/n994/u1ai39349.html

 

 

(かわい・まさのり)

長島・大野・常松法律事務所上海オフィス一般代表。2011年中国上海に赴任し、2012年から2014年9月まで中倫律師事務所上海オフィスに勤務。上海赴任前は、主にM&A、株主総会等のコーポレート業務に従事。上海においては、分野を問わず日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。クライアントが真に求めているアドバイスを提供することが信条。

長島・大野・常松法律事務所 http://www.noandt.com/

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