◇SH0015◇パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱(案) 村上雅哉(2014/07/02)

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高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部、「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱(案)」を公表

 弁護士 村 上 雅 哉

 個人情報保護法の制定から10余年が経過したが、情報通信技術の進展は、多種多様かつ膨大なデータ(いわゆるビッグデータ)を収集・分析することを可能にした。とりわけ、パーソナルデータ[1]を含んだビッグデータについては、個人情報保護法の立法過程において想定されていなかったような利活用が可能になり、また、実際に行われるようになってきており、パーソナルデータを活用した新事業・サービスの創出に寄与するものとして、その有効活用への期待が高まってきている。

 もっとも、個人情報保護法2条1項が規定する「個人情報」(特定の個人を識別ないし容易に照合できる情報)に当たるパーソナルデータについては、目的外利用(同法16条1項)や(「個人データ」に該当する場合は)第三者提供(同法23条1項)が禁じられる。

 そこで、パーソナルデータの利活用を図るための一つの方策として、パーソナルデータの個人識別性を喪失させ(いわゆる匿名化)、個人情報保護法の適用対象外とすることが考えられる。匿名化の方法としては、個人を特定し得る情報の削除(属性削除)、氏名等のユニークな番号への変換(仮名化)、住所などを広いエリアに置き換える(あいまい化)、希少な情報の削除等が挙げられるが、インターネット等に公開されている外部情報との突合せによって個人を特定できる可能性を完全に排除することはできない。平成25年12月に技術検討WGから提出された報告書[2]においても、一定の匿名化措置を行っても、必ず識別性または特定性を無くせるわけではなく、また、どの程度の匿名化を行えば識別性または特定性を無くせるのかという一般的な水準を作ることもできないと指摘されている。

 他方で、現行法の制定から現在までの間、個人情報及びプライバシーに対する意識が高まってきており、自分のパーソナルデータが悪用されるのではないかという懸念が消費者側に存在し、その結果として、パーソナルデータの利活用に当たって個人の権利利益の侵害に係る問題を発生させていない事業者においても、プライバシーに係る社会的な批判を懸念して、パーソナルデータの利活用に躊躇するという事態が出現している。例えば、JR東日本がICカード・Suicaの乗降履歴の販売を平成25年6月末に開始したところ、その直後から、個人情報保護の観点で問題があるのではないかとの指摘が、同社に対し多数寄せられ、同社は販売中止を宣言するに至ったという事例が挙げられる。

 このように、どの程度の匿名化が必要であるか等、パーソナルデータの利活用ルールを明確化することによって、その利活用を過度に躊躇する状態を解消し、プライバシー侵害のリスクを回避することが必要となってきているといえる。

 また、クラウドサービス等国境を越えた情報の流通が極めて容易になってきていることを踏まえ、我が国の事業者がグローバルに適切なパーソナルデータの共有、移転等を行えるようにするための制度設計も求められている。

 これらの情勢を受けて今般公表された「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱(案)」は、具体的に個人情報保護関係法令の改正等により措置する内容について、政府として方向性を示すものである。同案は、このたび、いわゆるパブリックコメントに付され[3]、平成27年1月以降、可能な限り早期に関係法案が国会に提出されるロードマップとなっている。

 IT・データの利活用はグローバルな競争を勝ち抜く鍵であり、その戦略的な利活用によって、新たな付加価値を創造するサービスや革新的な新産業・サービスの創出と全産業の成長を促進する社会を実現するものとされている。そこで、個人情報及びプライバシーの保護を前提としつつ、パーソナルデータを利活用することにより、新ビジネスや新サービスの創出、既存産業の活性化を促進するとともに公益利用にも資する環境が整備されることが期待される。



[1] パーソナルデータとは、個人情報保護法に規定する「個人情報」に限らず、位置情報や購買履歴など、広く個人に関する個人識別性のない情報を含む情報をいう。

[3] 平成26年7月24日が意見募集期限とされている。

 

村上雅哉(むらかみ・まさや)

岩田合同法律事務所パートナー。2001年東京大学法学部卒業。2003年弁護士登録。破産手続、民事再生や会社更生などの法的整理(債権者側および債務者側の双方から関与)や私的整理などの倒産案件や債権回収案件を中心に、上場企業、非上場企業のほか地方公共団体などを依頼者とする多種多様な案件について幅広い経験を有する。

 

岩田合同法律事務所

 

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