◇SH0087◇企業法務よしなしごと-ある企業法務人の蹣跚21 平田政和(2014/09/19)

そのほか法務組織運営、法務業界

(第21号)

企業法務よしなしごと

・・・ある企業法務人の蹣跚(まんさん)・・・

平 田 政 和

Ⅲ.Juniorのために・・・広い視野をもとう(その1)

【聞く力、分析能力を高めよう】

 OJTや社外講習会参加あるいは社内勉強会などの種々の教育を経て、法務部の中心的人物として、あるいは熟達した企業法務担当者として業務を処理することができるのは10年程度の実務経験と継続的な自己啓発が必要だ、と私は思っている。

 経営法友会が平成22年4月に実施した「第10回法務部門実態調査」の分析報告によると、経験年数10年以上の担当者は31.3%、15年以上の経験を持つ担当者の比率は18.1%となっている。この調査結果もこのことを裏付ける一つの証左と理解してもよいだろう。

 このような段階に至れば、Freshman,  Sophomore に続くJuniorである。この段階での業務遂行に際して重要かつ必要な資質は、分析能力である。そしてその分析の前提となる事実関係を「聞く力」、「聞き出す力」であり、「実務をよく理解していることに基礎を置いた質問力」である。

 ある部門でなにかトラブルが発生したり、解決に困難な問題が生じたりすると、自ら考えることなく法律問題だ、法務部へ相談に行こう、となる。法務部にとってはありがたいことであるが、一見法律問題が中心であるように見えるトラブルも細かく事実関係を聞き出し、得られた事実に沿って分析して行くと、法律問題ではないということも多い。

 私自身も数多く経験したが、相談者からトラブルについての事実説明を受け、説明や調査の不足な部分、不充分な点を指摘しながら、一緒に一つずつ分析して行くと、その途中で「あッ解りました。」と相談者自身が答を見つける。分析能力の欠如というかトラブルの事実分析すらしていない、あるいは出来ないのである。

 あるとき、私が信頼しよく意見交換をする、大学で教鞭をとっている同業他社の元法務部長と雑談をしているときに「法務部員にとって大事な能力は法律知識ではなく、分析能力だ。」との考えで意見が一致した。

 法律知識が不要というのではなく、法務部員であるからにはある程度の法律知識は備えている。それを前提にして法務部員にとって大切なあるいは重要な能力は分析能力だ、という意味である。そして「最近の若い人は分析能力がない。」、「ちょっとややこしい問題になると考えようとしない。」との話になった。老人になった我々にとって「最近の若い人は」という言葉は禁句である。それを知りながら二人同時にこの言葉を発してしまった。

(以上)

 

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