◇SH0182◇企業法務よしなしごと―ある企業法務人の蹣跚49 平田政和(2015/01/09)

そのほか法務組織運営、法務業界

(第49号)

企業法務よしなしごと

・・・ある企業法務人の蹣跚(まんさん)・・・

 

平 田 政 和

 

Ⅳ.Seniorのために・・・将来を見据えよう(その12)

【解説書やマニュアルの作成による法務業務の効率化と法務部員のレベルアップ】(その2)

 (前号より)

 法務部内では、質問に対する回答を熟読、精査の上、検討会を何度も開催しA4判60頁強の「このような場合にどうするか――独占禁止法遵守のための行動指針」を作成した。

 その内容は、関係各部長の回答内容から判断して、よく発生すると思われる問題、慎重に対応する必要のある問題、行ってはならない行動、を中心に、問題に対する基本的考え方と行動指針を、具体的に易しくかつ解りやすく記載したものである。

 行動指針は「行ってはならないこと」は赤色で、「行う前に法務部へ相談すべき行動」は黄色で、「やっても問題がない」ことは緑色で表示するという工夫もした。

 このマニュアルの作成は、法務部内での意識の統一や若手法務部員の教育に資すること大であったと自負している。慎重を期する意味で、親交のあった公正取引委員会の委員にお願いし最終稿のチェックをして貰った。

 マニュアルを作成すること自体で「事足れり」では作成した意味がない。このマニュアルを教材に法務部員が手分けして講習会を開催した。関係する社員全員が参加できるよう50~60回開催したと記憶している。

 これ以外にも数多くのマニュアルを作成したが、特に記憶に残っているものは、「技術援助マニュアル」である。

 「技術援助契約を作成する場合の便宜に供するため、なるべく数多くの標準的例文を盛り込むことを意図して作成したものであるが」と前書に書かれているように、条項ごとに質のよい契約書例文(今まで書物を始めいろんな場所で目にしてきた例文中には首を傾けるようなものもあった)を幾つか取り上げ、その解説を付したものである。

 若かりし頃の私はLicenseの条項、Lump Sum and Royaltiesの条項その他の若干の条項を担当したが、理論的な研究や調査も行い随分と力がついたと思ったものである。

 このマニュアル作成の中心人物でその後に法務部長になった先輩の「このようなマニュアルの作成で一番利益を得るのは作成者自身である。」との発言は今でも覚えている。

 これらのマニュアル自体とその完成のための勉強や研究はその後の私の業務遂行に随分と役に立った。

 自らの担当業務の効率化のためにマニュアルを作ったことがある。古い話ではあるが入社後数年の期間が経過した頃のことである。

 1960年代の中頃から1970年代の後半にかけて、マーケティング部が中心となった「海外著名縫製メーカーから縫製技術・商標(ブランド)のライセンスを受けたり、著名なデザイナー、プロゴルファーやレーサーなどの海外著名キャラクターからエンドースメントや商標のライセンスを受け、これらを国内の縫製メーカーにサブライセンスする」という案件が数多く発生した。

 このときに、これら海外縫製メーカーや海外著名キャラクターから縫製技術・商標・エンドースメントのライセンスを受ける場合の契約書のプロトタイプ、国内縫製メーカーとのサブライセンス契約の雛型と(当時必要とされていた)関係官庁への届出についての資料を作った。

 具体的には、過去の契約交渉の経験をもとに、事の大小を問わず全ての論点を洗い出した上で、論点毎に自らにとって一番有利な契約条文を中心に、相手先との力関係や相手先の主張との関連でその条項を修正した幾つかのパターンを作り、実務上の有利不利、採用する場合の留意点などを事細かに記載した書式集とも言うべきものである。

 これら案件を担当するマーケティング部員、知的財産部員とともに、休みを返上しての作業となったが、それぞれの知識のレベルアップは当然のこととして、完成後のそれぞれの業務遂行にとても役に立った。さらに大幅な業務遂行時間の短縮に連なった。

(以上)

 

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