◇SH0187◇インドネシア:外貨建てオフショア債務に対する新規制  前川陽一(2015/01/16)

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インドネシア:外貨建てオフショア債務に対する新規制

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 インドネシア中央銀行は、2014年10月29日、事業会社の対外債務の管理にかかる健全性原則の実施に関する規則(No. 16/20/PBI/2014)を公表した。本規則は、銀行を除く全ての事業会社を対象として、外貨建てオフショア債務を有する場合に一定のヘッジ比率、流動性比率及び信用格付けを満たすべきことを要求するものである。民間企業の対外債務が近年急増している一方で、為替リスクヘッジの対応が遅れている状況を中央銀行が問題視していることが本規則制定の背景にあると言われている。

1 ヘッジ比率

 各四半期末日(毎年3月31日、6月30日、9月30日及び12月31日)から起算して3ヶ月以内に弁済期が到来する外貨建て流動負債(先物、スワップ及びオプション取引から生じる外貨建ての債務を含む。以下同じ。)が外貨建て資産(外貨建ての流動資産である現預金、有価証券、先物、スワップ及びオプション取引から生じる債権をいう。以下同じ。)を超過している場合の超過額、及び各四半期末日から起算して3ヶ月超6ヶ月以内に弁済期が到来する外貨建て流動負債が外貨建て資産を超過している場合の超過額について、それぞれ最低25%(ただし、2015年12月31日までは20%)を為替先物、通貨スワップ、オプション等の方法によりヘッジしなければならない。

2 流動性比率

 各四半期末日から起算して3ヶ月以内に弁済期が到来する外貨建て流動負債に対して外貨建て資産を少なくとも70%(ただし、2015年12月31日までは50%)を維持しなければならない。

 商品・サービスの国際取引から生じる債権債務は、ヘッジ比率及び流動性比率の計算の基礎となる外貨建て流動負債及び外貨建て資産に含まれない。

3 信用格付け

 2016年1月1日以降に外貨建てオフショア債務を借り入れる銀行以外の事業会社は、外部格付機関が発行するBB以上の格付けを取得しなければならない。ただし、リファイナンスの場合又はインフラ整備プロジェクトに関連した国際金融機関からの借入れの場合は適用を免れる。本規則の注釈には国際金融機関として、国際金融公社(IFC)、国際協力銀行(JBIC)、国際協力機構(JICA)、アジア開発銀行(ADB)及びイスラム開発銀行(IDB)が例示されている。

 

 本規則は、2015年1月1日から施行される。したがって、ヘッジ比率及び流動性比率の計算の基準日は、同年3月31日が最初となる。

 違反者に対する処分として、警告書の送付がなされる。加えて、海外債権者、財務省、国税総局、金融庁等の関係諸機関に対して、当該違反者につきかかる処分が実施されたことの通知が行われる。

 本規則は、事業会社の規模や対外債務の額にかかわらず一律に適用され、いわゆる親子ローンも対象から外されていないことから、日本企業の現地子会社に及ぼす影響は少なくないと思われる。

 

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