◇SH3512◇中国:民法典の担保制度の適用に関する最高人民法院の解釈(2) 川合正倫(2021/03/04)

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中国:民法典の担保制度の適用に関する最高人民法院の解釈(2)

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 川 合 正 倫

 

(承前)
 

2. 保証

(1)一般保証と連帯保証

 従前、担保法及びその司法解釈では、保証契約において一般保証か連帯保証なのかを定めない場合又は合意内容が不明確な場合は、連帯保証として扱うとされていた。この点に関し、民法典では、一般保証として扱うと改正されている(民法典第686条2項)。さらに、担保制度司法解釈では、民法典の改正に加え、当事者の合意内容ごとに次の判断基準を設けている(同解釈第25条)。

  1. ✓ 保証契約において、主債務者が履行不能又は債務返済の能力を喪失時に保証人が保証責任を負う旨又はこれに類似する内容が合意され、主債務者が先に責任を負担する意思表示がなされている場合は一般保証と認定する。
  2. ✓ 保証契約において、主債務者の債務不履行又は未返済時に保証人が保証責任を負う旨や無条件で保証責任を負う等の内容が合意され、主債務者が先に責任を負担する意思表示がなされていない場合、連帯保証と認定する。

 上述のとおり従来は、原則として連帯保証として扱われていたが、民法典施行後は一般保証が原則となる。一般保証の場合、主債務者が行方不明になりかつ執行に供する資産がない場合や主債務者に対する破産申立が既に受理された場合等を除き、主債務者に対して訴訟を行い強制執行を行った後にはじめて保証人に責任追及が可能になる(民法典第687条2項)ことから、債権者としては保証契約において連帯保証であることを明確に合意する必要性が高まったといえる。

 

(2)根保証

 根保証の保証期間の計算方法及び起算等について、基本的に当事者間の合意によることになるが、合意がない場合又は合意内容が不明確な場合について、従来の司法解釈では、債務の弁済期限満了日から6ヶ月(弁済期限の合意がない場合は、根保証の終了日又は債権者が根保証人から根保証契約の終了通知を受領する日から6ヶ月)とされていた。

 担保制度司法解釈は、上記期間の起算時についてさらに明確化が図られている。すなわち、すべての被保証債務の履行期が到来した場合、保証期間は債権確定日(当事者が予め合意する債権確定日、当該合意がない場合には根保証設定日から2年間が経過した後に債権者の請求によって債権が確定する日、又は新しい債権が発生しないことが確定する日等(民法典第423条))から起算し、一部の被保証債務の履行期限が到来していない場合、保証期間は履行期限が最後に到来する債権の履行期限の満了日より起算するとされている(同解釈第30条2項)。

 

(3)保証期間

 旧法では、保証人が主債務の元金及び利息の完済まで保証責任を負う旨の合意がなされる場合を保証期間に関する合意内容が不明確な場合に該当するとして、かかる場合の保証期間は主債務の履行期日から2年間とされていたが、民法典は、この場合の取扱いについて、保証期間の合意がない場合と同様に保証期間を主債務の履行期日から6ヶ月に短縮している。

 担保制度司法解釈は、旧司法解釈と同様に保証人が主債務の元金及び利息の完済まで保証責任を負う旨の合意は合意内容が不明確な場合に該当するとした上で、この場合には、保証期間が主債務の履行期日から6ヶ月となる旨を確認している(同解釈第32条)。債権者としては保証期間について明確に合意する必要性が高まったといえる。

 

(4)第三者による信用補完措置

 旧法では債務加入に関する規定がなかったが、民法典において債務加入に関する規定が新設された(同法第552条)。債務加入又は連帯保証のいずれに該当するかによって、債務の附従性や保証期間の適用有無等の取扱いが異なるが、実務上は、第三者が債務者の信用補完のために債権者に一定の承諾をするにあたって当該承諾の内容が債務加入又は連帯保証のいずれか判断が難しい場合も少なからず存在する。

 担保制度司法解釈は、第三者が信用の補完措置として債権者に対し差額の支払いや流動性支持等の承諾書類を差し入れ、担保の意思表示を行ったといえる状況において、債権者が当該第三者に責任の追及をする場合、保証に関する規定の適用を受ける旨を定める。これに対し、第三者の差し入れた承諾書類において、第三者が債務に加入する旨又は債務者との債務共同負担の意思表示がなされた場合には、民法典の債務加入に関する規定の適用を受けるとしている。なお、第三者の承諾の内容が保証又は債務加入のいずれに該当するか判断が困難な場合には、保証として扱われる(同解釈第36条)。

(3)につづく

 


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(かわい・まさのり)

長島・大野・常松法律事務所上海オフィス一般代表。2011年中国上海に赴任し、2012年から2014年9月まで中倫律師事務所上海オフィスに勤務。上海赴任前は、主にM&A、株主総会等のコーポレート業務に従事。上海においては、分野を問わず日系企業に関連する法律業務を広く取り扱っている。クライアントが真に求めているアドバイスを提供することが信条。

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