◇SH0278◇ベトナム:新不動産事業法 澤山啓伍(2015/04/08)

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ベトナム:新不動産事業法

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 澤 山 啓 伍

 

 昨年12月の国会において成立したビジネス上重要な複数の法律の改正法については、これまでいくつかご紹介してきている。本稿では、不動産分野での外資への門戸開放が注目されている新不動産事業法(法律66/2014/QH13号、法文(ベトナム語)はこちら)について紹介したい。

1.外資企業が実施できる不動産事業の拡大

 現行法では、外資企業が行うことができる不動産事業の範囲が、内資企業が行うことができるその範囲よりも限定されている。特に、自ら開発した建物を賃貸・販売することはできるものの、①既存建物を取得して賃貸・転売を行う事業、及び②転貸するために建物を賃貸する事業(いわゆるマスターリース)が外資企業に対しては開放されていないことが、外資系不動産業者によるベトナム進出の足かせとなっていた。

 新不動産事業法は、このうち②の事業、すなわち、いわゆるマスターリースによる不動産経営を外資企業に開放した。この点は、多くの外資系不動産業者に対してビジネスチャンスをもたらすことが期待されている。

 他方、①の事業、すなわち賃貸・転売のための既存建物の取得については、引き続き内資企業だけに認められている事業となっている。この点も当初は外資への開放が検討されていたが、ベトナム政府の中で、国内不動産を外資企業に買い占められることへの危惧感があり、所有権は渡さないマスターリース事業の外資開放までが限界であったのではないかと思われる。

2. 建物完成前の代金受領の上限設定

 新不動産事業法は、上記の外資への門戸開放とは別に、消費者の保護のために不動産業者への規制を強化している部分もある。

 まず、建物完成前に不動産業者が買主から受領できる代金の金額については、以下のような規制が課されている。すなわち、初回の支払(契約金)については、契約額の30%以内でなければならない。その後の支払は建物建設の工程にしたがって設定しなければならないが、物件の引渡前に受領できる代金は、契約金額の70%以内(外資企業の場合には50%以内)でなければならないとされている。

 これは、以前、代金の先払いを受けながら建物を完成させず消費者が損失を被るケースが多発したことから規制が強化されたものである。

3.      最低資本金の増額

 また、新不動産事業法では、不動産事業を行う企業の最低資本金を、現行法の60億VND(約3300万円)から、200億VND(約1億1000万円)に大幅に引き上げている。これも、脆弱な資本力の不動産業者が事業に行き詰まって消費者に損害を与えるケースを少なくさせたいという趣旨だと考えられる。

 

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