◇SH0296◇内閣官房、マイナンバー制度の活用等による年金保険料・税に係る利便性向上等に関する検討 清瀬伸悟(2015/04/22)

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内閣官房、マイナンバー制度の活用等による年金保険料・税に係る利便性向上等に関する検討

岩田合同法律事務所

弁護士 清 瀬 伸 悟

 平成27年3月19日、マイナンバー制度の活用等による年金保険料・税に係る利便性向上等に関する検討についての会合(以下「本会合」という。)の第1回が実施され、同年4月13日にその議事概要等が公開された。

 本会合は、甘利社会保障・税一体改革担当大臣の指示を受け、加藤官房副長官を座長とし、関係省庁の政務官をメンバーとする「年金保険料の徴収体制強化等のための検討チーム」(以下「検討チーム」という。)が行うものである。検討チームは、平成25年2月から8月にかけて設置された際にも、マイナンバーの活用による年金保険料の徴収体制強化等を検討としていたが、今回は、平成28年1月からのマイナンバー利用開始を見据えて、国民の利便性向上の観点を中心にするべく再び結成されたものである。

 マイナンバーとは、住民票を有する全国民に対してそれぞれ12桁の番号を付すことにより、複数の行政機関等が別々に管理する個人情報について、相互に照会・提供を行うことを容易にするものである。

 マイナンバーのメリットとしては、社会保障・税に関して行政機関等に申請をする際の添付書類の削減や行政機関からの通知サービス等による国民の利便性の向上、行政を効率化して人員や財源を国民サービスに振り向けられること、所得の正確な捕捉によりきめ細やかな新しい社会保障制度が設計できること等とされている。

 平成25年5月に関連法[1]が制定され、平成27年10月からマイナンバーの通知が始まり、前述のとおり、平成28年1月からマイナンバーの利用が始まる予定である。

 マイナンバーに対しては、個人情報の漏えい、成りすまし等による不正利用、国家が様々な個人情報を一元管理するのではないか等の懸念があるとされている。

 このような懸念に対して、法律・条例で定められた場合以外に行政機関等がマイナンバーを利用することの禁止、罰則の強化、行政機関等がマイナンバーのついた自己の情報をいつ、どことやりとりしたのかを確認できるシステム[2]の構築等の手当てがなされている。

 また、システム面においては、特定の機関が個人情報を集約して一元管理するのではなく、従前と同様に各行政機関等が分散管理を実施すること、通信の暗号化等の措置がなされている。

 なお、現状では、マイナンバーが利用されるのは、社会保障、税及び災害対策の分野に限られるため、それ以外の分野では引き続き従前どおり行政機関等に申請をする際に添付書類が必要になる。また、戸籍はマイナンバーの利用対象に入っておらず、従来どおり申請書類に添付する必要があるなど申請の際の添付書類がすべて不要になるのではない。

 前述したマイナンバーのメリットの中で、利用者が最も享受しやすいメリットは申請の際の添付書類の削減である。本会合においては、今後、年金保険料・税の関係で行政機関に申請をする際に、どこまで添付書類を削減することができるかなどという国民の利便性の向上を中心に検討が進んでいくと考えられる。

 

[1] 行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(略称「マイナンバー法」)

[2] 「マイナポータル」という名称。行政機関からの通知サービスにも利用される。

(きよせ・しんご)

岩田合同法律事務所アソシエイト。2004年慶應義塾大学総合政策学部卒業。2008年一橋大学法科大学院卒業。2009年検事任官。2015年4月「判事補及び検事の弁護士職務経験に関する法律」に基づき弁護士登録。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

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1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

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