◇SH0298◇インドネシア:ルピア使用義務の明確化 前川陽一(2015/04/24)

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インドネシア:ルピア使用義務の明確化

長島・大野・常松法律事務所

弁護士 前 川 陽 一

 インドネシア中央銀行は、2015年3月31日、インドネシア共和国領域内におけるルピア使用義務に関する規則(No. 17/3/PBI/2015)を公表した。インドネシアでは、通貨法(2011年第7号)がルピアを法定通貨として定めたうえ、国内で行われる決済取引にはルピアを使用すべき義務を規定していたところであるが、かかる規定にもかかわらずルピア使用義務は現金決済の場合に限られ銀行送金などの非現金決済には適用がないとの解釈がとられてきた。現実にも、不動産賃貸、旅行代理店のサービス、外国人従業員の給与などの身近な場面において米ドルでの金額表示及び決済が行われることも珍しくなかった。本規則は、国内におけるルピア使用義務が現金決済に限らず、非現金決済にも適用がある旨明確にしたものであり、インドネシアにおける取引活動に与える影響は少なくないと思われる。

 ルピア使用義務の適用範囲が従前の運用から明確に拡大された一方で、対象外となる範囲についても明文化が試みられている。例えば、輸出その他の目的のための銀行による外貨建て貸付けは本規則にかかわらず可能であることが明記された。また、資本投資関連や輸出金融関連などの法令に基づく外貨取引も本規則の対象外とされている。もっとも、外貨建て貸付けが認められるとされる「その他の目的」にどのような活動が含まれるか、対象外となる他の法令に基づく外貨取引とは具体的にいかなる範囲であるか、なお不明確な点が残されている。今後公表される通達においてかかる点が明らかにされることが望まれる。

 本規則には罰則が定められている。通貨法の定めに従い、現金決済におけるルピアの不使用に対しては1年以下の禁錮及び2億ルピア以下の罰金が科せられ、ルピアの受取り拒否に対しても同様の刑罰が科される。これに対して、非現金決済におけるルピアの不使用に対する罰則は、警告書の交付、取引価格の1%相当の制裁金(ただし、10億ルピア以下)、決済システムの使用禁止とされている。

 本規則は即日施行されているが、非現金決済に関する規定は2015年7月1日から施行される。同日より前に締結された契約において外貨による非現金決済の合意がされている場合には、同日以降も当該契約期間中は外貨での決済が可能である。ただし、かかる契約を延長し、又は改定した場合にはルピアの使用が義務付けられることとなる。

 

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