消費者契約法専門調査会のポイント(第9回)
弁護士 児島 幸良
弁護士 須藤 克己
平成27年4月24日、内閣府消費者委員会において、第9回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者らの私見である。
1 配布資料
以下の資料が配布された。
資料1 個別論点の検討(3)―不当勧誘に関する規律②―(消費者庁提出資料)
資料2 山本健司委員提出資料
参考資料1 参考事例(消費者庁提出資料)
参考資料2 資料1の概要(消費者庁提出資料)
参考資料3 国民生活センター「消費生活相談の視点からみた消費者契約法のあり方」抜粋(消費者庁提出資料)
2 議事内容
消費者庁加納消費者制度課長から、資料1に基づいて、以下の論点ごとに説明がなされ、各論点についての審議が行われた。
(1)不当勧誘行為に関するその他の類型
- ① 事業者の行為により自由な意思決定がゆがめられる類型
- ② 合理的な判断をすることができない事情を利用する類型
(2)第三者による不当勧誘
(3)取消権の行使期間
3 審議
(1)不当勧誘行為に関するその他の類型‐事業者の行為により自由な意思決定がゆがめられる類型
- ➢ 本論点は、「執拗な電話勧誘」「威圧等による勧誘」「不招請勧誘」について、分けて議論された。
- ➢「執拗な電話勧誘」については、特商法でまず議論すべきという意見があった。他方、相談の現場では特商法だけではカバーできない事例もあるとの意見があった。
- ➢「威迫等による勧誘」については、とくに「威迫」の意義の明確化が課題であるとの意見があった。消費者庁から、特商法6条3項の威迫と同じものが念頭に置かれているとの説明があった。
- ➢「執拗な電話勧誘」「威迫等による勧誘」については一緒に議論した方が良いのではないかとの意見があった。
- ➢ 不招請勧誘については、多くの委員から慎重論が聞かれた。効果を示さない行為規範的なものにしてはどうか、営業の自由との関係で憲法学者の意見を聞いてみるべきではとの意見もあった。
(2)不当勧誘行為に関するその他の類型‐合理的な判断をすることができない事情を利用する類型
- ➢ 甲案(暴利行為の明文化)に賛成、乙案(暴利行為準則とは別に、判断力、知識、経験の不足等の事情がある消費者が契約を締結したときに取消し又は解除できる制度の創設)に賛成、両案に疑問を感じる等、様々な意見が聞かれた。
- ➢ 委員より、乙案を一部修正した案(付け込み型不当勧誘行為の取消し)が提案された。
- ➢ 甲案の効果について、無効ではなく取消しも検討すべきではないかとの意見があった。
- ➢ 内容の「不当性」が要件として必要なのではないか、契約がそもそも必要なかったとの事情が要件として必要なのではないかとの意見があった。
- ➢ 消費者契約法では、民法の暴利行為準則そのままではなく、違った視点が必要となるとの意見があった。
(3)第三者による不当勧誘
- ➢ 消費者の事業者に対する意思表示について、第三者が不当勧誘行為を行った場合において事業者がその事実を知っていたとき又は知ることができたときには、当該消費者がその意思表示を取り消すことができることとすべきという考え方が提示され、これについて賛成意見、留保付賛成意見が聞かれた。
- ➢ 本論点は「勧誘」概念と関連しているため、まず「勧誘」の意味を決定する必要があるとの意見があった。
- ➢「第三者」の範囲・意義について、明確にすべきとの意見があった。例えば、事業者と一定程度の関係性を要求する立場(ex.勧誘補助者)を要するか否かという点を検討すべきとの意見があった。
- ➢ 事業者には、消費者が誤った認識を持っていることが判明した時点で、助言する義務があるのではないかとの意見があった。
(4)取消権の行使期間
- ➢ 行使期間制限の伸長について、反対、賛成の両方の意見があった。(なお、賛成意見の中でも伸長する期間について意見のばらつきがみられた。)
- ➢ 改正民法の消滅時効制度がシンプルになっていることへの配慮を示唆する意見があった。
- ➢ 相談事例で、6か月を経過した後に相談があるケースも多くみられるとの現状報告がなされた。他方、別の委員から、短期(6か月)の行使期間制限を経過した事例をもっと紹介してほしいとの要望があった。
4 その他
次回開催予定:平成27年5月15日(火)16時~