◇SH0318◇銀行員30年、弁護士20年 第28回「相続問題と離婚問題」 浜中善彦(2015/05/19)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第28回 相続問題と離婚問題
 
弁護士 浜 中 善 彦
 

 弁護士としての私の仕事は、主として顧問先の相談である。その中には、先の東京臨海三セクの民事再生申立事件のような裁判事件もあるが、メインは法律相談である。顧問先の法律相談は、文字通り法律で解決がつく問題であるが、個人の場合は事情が異なる。
 私の顧問先の仕事として、みずほ総研東京相談部の法律相談の仕事がある。これは、みずほ総研の会員企業約2万社、みずほグループの銀行本支店、関連会社及びその従業員、銀行OB等の法律相談を担当する。法人の相談の場合は顧問先の相談と大差はない。私の担当は、主として会社法、労働法と金融関連法である。個人の場合は、不動産関連の相談もあるが、一番多いのは、離婚と相続問題である。
 

 離婚については、40歳前後の離婚の相談が多い。多くの場合、幼い子供がいる。離婚問題は、法律問題としてはそれほど難しい問題はない。子供の親権の問題以外は、財産分与、養育費、慰謝料などの金銭問題だけである。子供の親権についても、実務では、特別の事情がない限り約9割は親権は母親のものになる扱いであるから、それほど難しい問題はない。ただ、離婚で一番の犠牲者は子供であるから、その点についての配慮は必要となる。金銭問題については、養育費は裁判所が作成した算定表があるので、それに準じて行えばいい。財産分与については、多額の住宅ローン債務がある場合の不動産とローンの扱いをどうするかは難しい問題であるが、たいていはオーバーローンなので、借入金も2分して負担させるかということになるが、借金は夫が負担するかわりに不動産所有権は夫にという扱いが多い。
 

 相続問題は、離婚と異なり、法律問題としては、文字通り金銭問題だけである。遺言があれば特別な事情がない限り遺言どおりであり、それがない場合は法定相続分どおりというのが原則である。しかし、この場合も、主たる遺産が被相続人の自宅という場合は、それを売却して法定相続分どおり分けろという相続人と現に住んでいる相続人との争いは難しい。それどころか、被相続人が認知症になったり、寝たきりになった被相続人を入院先の病院から自分の近隣の病院に勝手に転院させて、それまで面倒を見ていた相続人に会わせないばかりか、勝手に遺言書を作成して、遺産全部を自分のものにするというケースもある。あるいは、認知症であることをいいことに、被相続人の生前、勝手に預金を使い込むという例も珍しくはない。相続問題で、依頼者から、代襲相続人の父親は一流大学を卒業して一流会社の部長まで務めた人なのにといわれたことがあるが、こういう場合は、教養と人格とは何の関係もありませんと答えることにしている。
 

 離婚や相続問題で法律ができることは金銭問題の解決だけである。しかし、当事者にとっては、法的解決が終わっても、気持ちの中ではいつまでも解決ができない問題が残ることが多い。相続の場合は、うつ症になる人もある。そういう意味では、法律家ができることは限られているのであり、決して法律は万能ではない。
 30年間定年まで銀行に勤務して、多くの取引先との取引を通じて世の中のことは一通り経験して分かっているつもりであったが、弁護士になってみて初めて、こんなにもいろいろな人生があると初めて思い知った。
 
以上
 
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