◇SH0322◇総務省、特定電子メール法違反に係る措置命令の実施 大櫛健一(2015/05/25)

未分類

総務省、特定電子メール法違反に係る措置命令の実施

岩田合同法律事務所

弁護士 大 櫛 健 一

 総務省は、平成27年5月15日、特定電子メールの送信の適正化等に関する法律(以下「法」という。)に違反したとして、株式会社ヒカリメディアに対して、措置命令を行った。

 法は、営利を目的とする団体又は営業を営む場合における個人が、自己又は他人の営業につき広告又は宣伝を行うための手段として送信する電子メール(以下「特定電子メール」という。)を、あらかじめ特定電子メールを送信することに同意した者その他法令で定められた一定の者以外に対し、送信してはならない旨を定めている(法3条1項、2条)。

 同法は、いわゆる「迷惑メール」の防止を趣旨としており、同法に違反して特定電子メールを送信した場合には、総務大臣及び消費者庁長官による措置命令の対象となり(法7条、31条1項)、当該措置命令に違反した場合は1年以下の懲役又は100万円以下の罰金(法人の場合は3000万円以下の罰金併科)となる(法34条2号、37条1号)。

 株式会社ヒカリメディアは、少なくとも平成26年8月23日から平成27年3月24日までの間、自社のウェブサイトの広告又は宣伝を行う電子メールを送信するに当たり、受信者の同意を得ておらず、法3条1項の規定に違反する行為を行っていたとして、総務省及び消費者庁は、平成27年5月11日付け文書にて、同社に対し、法7条の規定に基づき、電子メールの送信の方法について法3条1項の規定の遵守を命じる措置命令を行った。

 事業者のマーケティング・広告手法の一つとして、事業者によるいわゆるメールマガジンの発行が行われるようになって久しいが、その場合には違法な「迷惑メール」と評価されることのないように同法を遵守する必要がある。同法違反による措置命令は、平成21年4月22日の発令を皮切りにして、本件に至るまで32件に及ぶ実績があり、また、発令の事実は総務省のウェブサイトにて社名を挙げて公表される[1]ことから、事業者においてはレピュテーションを含めたリスク管理に十分留意すべきである。

 なお、上記「あらかじめ特定電子メールを送信することに同意した者その他法令で定められた一定の者」、すなわち特定電子メールの送信禁止から除外される対象者の概要は、末尾表記載のとおりであり、メールマガジンの発行その他電子メールを利用したマーケティング・広告を行う場合には送信先に注意する必要があろう。

根拠条項

特定電子メールの送信禁止から除外される対象者の概要

法3条1項1号

あらかじめ、特定電子メールの送信をするように求める旨又は送信をすることに同意する旨を送信者又は送信委託者[2]に対し通知した者

法3条1項2号・

施行規則2条

名刺などの書面により自己の電子メールアドレスを送信者又は送信委託者に対し通知した者

法3条1項3号

特定電子メールを手段とする広告又は宣伝に係る営業を営む者と取引関係にある者

法3条1項4号・

施行規則3条

インターネットを利用して自己の電子メールアドレスを公表している団体又は個人(個人にあっては、営業を営む者に限る。)

 


[2]  電子メールの送信を委託した者(営利を目的とする団体及び営業を営む場合における個人に限る。)をいう。

(おおくし・けんいち)

岩田合同法律事務所弁護士。2004年上智大学法学部卒業。2006年弁護士登録。主に、流動化・証券化取引、各種金融機関規制法(銀行法、金融商品取引法等)の検討等のファイナンス案件を専門とする。店頭デリバティブ取引やノックイン型投資信託をはじめとした金融商品の販売に関する訴訟等の紛争解決案件も数多く手がける。

岩田合同法律事務所 http://www.iwatagodo.com/

<事務所概要>

1902年、故岩田宙造弁護士(後に司法大臣、貴族院議員、日本弁護士連合会会長等を歴任)により創立。爾来、一貫して企業法務の分野を歩んできた、我が国において最も歴史ある法律事務所の一つ。設立当初より、政府系銀行、都市銀行、地方銀行、信託銀行、地域金融機関、保険会社、金融商品取引業者、商社、電力会社、重電機メーカー、素材メーカー、印刷、製紙、不動産、建設、食品会社等、我が国の代表的な企業等の法律顧問として、多数の企業法務案件に関与している。

<連絡先>

〒100-6310 東京都千代田区丸の内二丁目4番1号丸の内ビルディング10階 電話 03-3214-6205(代表) 

 
タイトルとURLをコピーしました