◇SH0330◇消費者契約法専門調査会のポイント(第11回) 児島幸良/須藤克己(2015/06/02)

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消費者契約法専門検討会のポイント(第11回)

弁護士 児島 幸良

弁護士 須藤 克己

 

 平成27年5月29日、内閣府消費者委員会において、第11回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者らの私見である。

1.配布資料

 以下の資料が配布された。

 資料1   個別論点の検討(5)―不当勧誘に関する規律③、不当条項に関する規律②―(消費者庁提出資料)

 資料2   山本健司委員提出資料

 資料3   消費者契約法専門調査会今後の審議スケジュール(案)

 参考資料1 参考事例(消費者庁提出資料)

 参考資料2 資料1の概要(消費者庁提出資料)

2.議事内容

 消費者庁加納消費者制度課長から、資料1に基づいて、以下の論点ごとに説明がなされ、各論点についての審議が行われた。

(1)不当勧誘に関する規律(3)

  法定追認の特則

(2)不当条項に関する規律(1)

  不当条項の類型の追加

① 総論

② 不当条項として無効とすべきと考え得る具体的条項

  • 法律に基づく消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項
  • 事業者に法律に基づかない解除権・解約権を付与し又は事業者の法律に基づく解除権・解約権の要件を緩和する条項
  • 消費者の一定の作為又は不作為をもって消費者の意思表示があったものと擬制する条項
  • 契約文言の解釈権限や契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性又はその内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項

 また、事務局から、今後の審議スケジュールについての変更案が示され、異議なく了承された。今後の審議スケジュールについては、以下のとおり。

【消費者契約法専門調査会今後の審議スケジュール(案)】

 6月12日    不当勧誘(1)④ (不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果)

                      その他(約款に関する規律等)

 6月30日    総則(2)

                      不当勧誘(2)

 7月10日    不当条項(2)

 7月下旬~8月上旬 取りまとめ

※審議状況を踏まえ、8月までの上記日程以外の日に、追加の審議を行うことがあり得る。また、9月以降に事業者団体等からのヒアリングなどの審議を行う予定。

3.審議

(1)不当勧誘に関する規律(3)法定追認の特則について

  • 消費者契約法の意思表示の取消しについて、法定追認の規定(民法第125条)を適用しない考え方(甲案)、消費者が取消権を有することを知った後に民法第125条各号に掲げる事実があった場合でなければ法定追認の効力が生じないこととする考え方(乙案)、民法の解釈・運用に委ねる考え方(丙案)が示され、「消費者は自らが取消権を有することも、行使の仕方も知らないことが多い」という観点から甲案支持の意見や、東京都消費生活委員会の高齢者被害の実例を挙げ「自分に責任があると思いがちな消費者」を念頭に乙案支持の意見、現状のままで良いのではないかという丙案支持の意見等、様々な意見が出された。
  • 消費者庁から、乙案については委員から出された立証の問題について検討するとの発言があった。また、甲案については取引安全への配慮から疑問があるとの発言もあった。

(2)不当条項に関する規律(1)不当条項の類型の追加

① 総論

 具体的な不当条項を追加すべきかどうかという論点について、委員から、なぜこの4つ(後述②の4論点)が選ばれたのか、適格団体の差止請求の事案等を踏まえて検討すべきではないか、約款で認められている実態については調査すべきではないか、グレーリストの意味付けをどうするか等の意見・質問があった。

② 不当条項として無効とすべきと考え得る具体的条項

   (a)法律に基づく消費者の解除権・解約権をあらかじめ放棄させ又は制限する条項

 法律に基づく消費者の解除権・解約権をあらかじめ「放棄させる」条項については無効とすべきことでほぼ異論はみられなかったが、「制限する」条項については、中身を具体的にして欲しい、常に無効と言えないのではないか等の意見があった。

   (b)事業者に法律に基づかない解除権・解約権を付与し又は事業者の法律に基づく解除権・解約権の要件を緩和する条項

 中身を具体的にして欲しい、合理的な理由・相当な内容であれば有効とする例外を設けるべきではないか、常に無効と言えないのではないか等の意見があった。

    (c)消費者の一定の作為又は不作為をもって消費者の意思表示があったものと擬制する条項

   法10条に委ねるべきではないか、射程が広すぎないか、「作為」については賛成等様々な意見があった。

    (d)契約文言の解釈権限や契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性又はその内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項

   契約文言の解釈権限を事業者のみに付与する条項を無効とする考え方にはほぼ異論が見られなかった。ただし、契約に基づく当事者の権利・義務の発生要件該当性又はその内容についての決定権限を事業者のみに付与する条項については、中身の詳細を教示願いたいという意見や解釈・決定権限のみならず、変更権限の付与も問題になると思われるという意見等があった。

4.その他

 次回開催予定:平成27年6月12日(金)16時~

 なお、調査会終了前に、河上委員長から、「できれば来年の通常国会に改正案を出したい。」との意欲が示された。

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