◇SH0341◇銀行員30年、弁護士20年 第35回「ますます厳しくなる司法試験」 浜中善彦(2015/06/12)

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銀行員30年、弁護士20年

第35回 ますます厳しくなる司法試験

弁護士 浜 中 善 彦
 

 新司法試験が始まった平成18年以来9回目の平成26年の司法試験の結果は、合格率は22.6%で、現行試験が始まって以降で最低だった。受験者数は、前年より4.7%多い8,015人だったが、合格者数は、前年より239人減の1,810人であった。2,000人を下回ったのは、平成18年以来8年ぶりのことである。既習者コース(2年制)の合格率32.8%だったのに対して、未修者コース(3年制)は12.1%であった。合格者の平均年齢は28.2歳で、最年長は65歳、最年少は22歳である。
 法科大学院74校のうち、合格者100人超の法科大学院は、早稲田大172人、中央大164人、東京大158人、慶応義塾大150人、京都大130人の5校であり、これに予備試験合格者の163人を加えると937人となり、合格者全体の過半数を占める。逆に合格者数が1ケタの法科大学院は39校あり、愛知学院大、神奈川大、島根大、姫路獨協大の4校は合格者ゼロだった。このような現状に対して、文部科学省は、来年度に交付する各大学の法科大学院に交付する補助金を傾斜配分する方針である。そのため、法科大学院52校を5段階にランク付けして、現行補助金の90~50%を基礎額として交付するとしている。最高ランクの90%交付の法科大学院は13校、最低ランクの50%交付の法科大学院は7校となっている。

 

 このような現状に対して、5月21日、政府の法曹養成制度改革顧問会議は、現行制度発足時の平成14年の年間合格者3,000人の目標を年間1,500人以上とする案を示した。他方、日弁連は、平成24年3月に、合格者をまず1,500人まで減員すべきであるとの提言を行っているが、今回の政府案に対して直ちに会長声明を出して、速やかに1,500人とするよう強く要請すると提言している。その理由の1つとして、平成18年度に5,784人を数えた法科大学院志願者が年々減少を続け、本年度は過去最低の2,201人になったことをあげている。

 

 日弁連の供給者側の利益と論理に基づく議論が利用者である国民の広い理解をえられるかどうか疑問であるが、客観的情勢としては、司法試験の将来は、受験者にとって決して楽観できない状況である。
 したがって、働きながら司法試験受験を志すということは安易には勧められない。しかし、現在、弁護士は社会の医師としての役割を果たしているかというと到底そうはいえないであろう。さらに、裁判所中心のこれまでの弁護士像から、多様な経験を持った弁護士、国際的に通用する弁護士等、社会はこれまでにない弁護士を求めている。それに応えるためには、若い弁護士はいうまでもなく、社会経験のある弁護士がさらに増加することが求められている。そのためには、有為な社会人が弁護士を目指して、積極的に司法試験に挑戦してほしいと思うのである。自らの経験からも、そのことは長く厳しい試練と努力が要求される。逆にいえば、だからこそ挑戦し甲斐のある目標ともいえる。
 元日経新聞論説委員の藤川忠宏氏は、日経新聞を定年退職した後、法科大学院に進学をして、平成22年、66歳のとき、3回目の受験で最高齢合格を果たした。彼は慶応大学経済学部卒業で、文字通りの未習者であった。毎日13時間勉強したということだった。大変な努力であったろうと思う。社会人に安易に受験を勧めることはできないが、弁護士は、社会経験のある人たちにとっては、今後魅力のある職場となると確信している。

以上

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