◇SH0329◇銀行員30年、弁護士20年 第31回「第2の人生としての弁護士」 浜中善彦(2015/05/29)

法学教育そのほか未分類

銀行員30年、弁護士20年

第31回 第2の人生としての弁護士

弁護士 浜 中 善 彦

 サラリーマンで、第2の人生に備えて資格取得を考えている人は少なくない。みずほ総研の東京相談部顧問として相談を担当している人たちの中の公認会計士Hさん、税理士Sさん、特定社会保険労務士Kさんはいずれも富士銀行(現みずほ銀行)のOBであり、皆さん古稀を超えている。HさんとSさんは後期高齢者の私より先輩である。2人とも銀行では平行員であったとき資格を取っていたので、定年後に備えて資格を取ったわけではないであろう。

 Hさん、Sさんや私の銀行員時代は、高度成長期で毎年給料は上がったし、銀行の退職金、年金制度も充実していたので、退職後の心配をする必要がなかった。また、今ほど長生きをする時代でもなかったから、退職後に備えるという発想はなかったといっていい。しかし、現在、銀行の定年は60歳であり、雇用保障は65歳まであるが、実際には、50歳前後に出向または転籍となり、大幅に給与が減額されるのが普通となっている。加えて高齢化の進展で、80、90歳まで生きるのが当たり前の時代になっている。サラリーマンは定年で人生は終わりで、そのあとは余生という時代ではない。

 現在、自らの定年後の20年を振り返ってみると、改めて、弁護士として毎日仕事があるということのありがたさを実感する。定年後、たとえ経済的には問題ないとしても、仕事がない場合、毎日をどう過ごすかが大問題である。 
 同期会やOB会に出てみると、皆さん,NPO法人や古代史研究等で結構忙しそうである。しかし、それは仕事とは違う社会貢献や趣味の世界である。それはそれで立派なことである。それに対して、先の士業や弁護士業は仕事であり、それで報酬を得ている。仕事は苦役のようにいわれることもあるが、私はそうではないと思う。仕事をして報酬を得ているということは、現役であるという実感と生きがいにつながっている。

 とりわけ弁護士の場合は、他の士業の場合と異なり、人の悩みを解決するのが仕事であるから、サラリーマンとして銀行員時代は経験したことのないさまざまな人生と向き合うことになる。そのことによって、経験はおろか考えたこともない様々な人生や悩みを、相談者と一緒になって考えることになる。
 弁護士は医者と違って人の命を預かることはないが、人の人生の重要な一部にかかわるわけであるから、相談者のいうことを法律用語に翻訳すればいいというものではない。弁護士は、相談者の悩みを共有することはできない。しかし、できるだけ相談者の立場に立って理解をしようと努力をし、最もいい解決法は何かを一緒に考えることはできる。そこではボランティアや趣味の世界とは違った責任感が求められる。読者のなかには、サラリーマンとして企業法務に携わっている人も多いと思われる。同じく法律を扱う仕事ではあるが、弁護士の場合は、結果はすべて弁護士個人が負わなければならず、会社は助けてはくれない。

 今や、年金制度が破たんし、医療制度の先行きも不透明である。サラリーマンといえども、今後は自助努力が一層求められる。サラリーマンも、定年後の長い人生をどう生きるかを真剣に考えるべき時であると思う。資格を取ったからといって定年後の生活が保障されるわけではないが、挑戦する目標を持つことは生きがいにつながる。その意味で、資格取得を目指すのは、意義のあることだと思う。

以上

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