◇SH0358◇消費者契約法専門調査会のポイント(第13回) 須藤克己(2015/07/01)

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消費者契約法専門調査会のポイント(第13回)

森・濱田松本法律事務所

弁護士 須藤 克己

 平成27年6月30日、内閣府消費者委員会において、第13回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者の私見である。

1.配布資料

 以下の資料が配布された。

 資料1   個別論点の検討(7)(消費者庁提出資料)

 資料2   山本健司委員提出資料

 参考資料1 対象論点の相互関係(不当勧誘に関する規律)(消費者庁提出資料)

 参考資料2 参考事例(消費者庁提出資料)

 参考資料3 資料1の概要(消費者庁提出資料)

2.議事内容

 消費者庁加納消費者制度課長から、資料1に基づいて、以下の論点ごとに説明がなされ、各論点についての審議が行われた。

(1)「勧誘」要件の在り方/第三者による不当勧誘

(2)不利益事実の不告知/重要事項/情報提供義務

3.審議

(1)「勧誘」要件の在り方/第三者による不当勧誘

  1. ①「勧誘」要件の在り方
     事業者による「不特定の」消費者に対する働きかけであっても、一定のものについては、そこに不実告知があり、消費者がそれによる誤認に基づいて意思表示をした場合、取消しの規律を適用するという考え方について、A案(「消費者契約の締結について勧誘をするに際し」という文言に代えて、「当該事業者との特定の取引を誘引する目的を持ってする行為をするに際し」という趣旨の文言とする案)、B案(「消費者契約の締結について勧誘をするに際し」という文言に代えて、「消費者契約の締結について勧誘(不特定の者に対するものを含む。)をするに際し」という趣旨の文言とする案)、C案(「消費者契約の締結について勧誘をするに際し」という文言を維持し、解釈に委ねる案)が示された。
     委員からは、不特定の者に向けられた広告等に基づき消費者が誤認し意思表示をしてしまう事案に対応する必要があることなどからB案でもいいがA案がより望ましいという意見、広告等は消費者の意思形成に影響がないとは言えないのでA案に賛成という意見、B案が分かりやすいという意見等が寄せられたが、現状を維持するC案に賛成する意見はなかった。
     審議中、委員から、A案とB案の折衷的な試案(「当該事業者との特定の取引を勧誘するに際し」又は「当該事業者との特定の取引を勧誘(不特定の者に対するものを含む。)するに際し」)の提示や、インターネットの取引の中で「勧誘」をどう位置付けるべきかという疑問、インターネットの取引実態はどのようになっているか調査し事例が知りたいという要望、A案とB案の具体的な差はどこにあるのかという質問等もあった。
     
  2. ② 第三者による不当勧誘
    ア 「第三者が不当勧誘行為を行った場合に、消費者が当該第三者の行為による誤認又は困惑に基づいて意思表示をしたことを、事業者が知っていたとき又は知ることができたときには、当該消費者がその意思表示を取り消すことができるという趣旨の規定を設けるという考え方」について、委員から、そのような規定を設けることに賛成する意見、「事業者が知っていたとき」に限定すべきとの意見、消費者は事業者の主観を把握できないことから「事業者が知ることができたとき」を要件に含めるべきであるとの意見等が聞かれた。

    イ 「法第5条1項の「消費者契約の締結について媒介をすることの委託」という文言に代えて、「消費者契約の締結について勧誘をすることの委託」という趣旨の文言とすることにより、同条項の適用場面を拡大することを明示する考え方もあるが、この点について現行法の解釈に委ねることとしてはどうか」との事務局提案に対し、委員から、現行法の解釈に委ねることに賛成する意見、現行法の「媒介」概念を解釈で拡張(逐条解説で拡張した解釈を示す)すればよいのではないかとする意見、「媒介」を「勧誘」に代えることに賛成する意見、規制を広げるのであれば取引実態にどの程度影響があるのか慎重に検討すべきとする意見等があった。

(2)不利益事実の不告知/重要事項/情報提供義務

  1. ① 不利益事実の不告知
     「不利益事実の不告知について、先行行為要件を維持した上で、不告知の故意要件を削除する考え方」について、発言をした多くの委員から賛成意見(ただし委員のうち1名は「重要事項」(法第4条4項)について限定列挙とする条件付き)があったが、慎重に考えるべきという意見もあった。
     
  2. ② 重要事項
     「重要事項」について、A案(法第4条4項各号の事項に「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」のほか、例えば「取引条件の有利性」や「契約締結の合理性」に関する事項を加える案)、B案(法第4条4項各号の事項に「消費者が当該消費者契約の締結を必要とする事情に関する事項」を加えたうえで、同項各号が例示列挙であることを明示する案)が事務局から示され、発言をした多くの委員からB案に賛成という意見があったが、A案・B案ともに反対するという意見、同項各号は限定列挙とすべきであるとの意見等があった。
     
  3. ③ 情報提供義務
    ア 「契約締結過程における情報提供義務が問題となる事案のうち、契約の効力を否定すべきものについては不利益事実の不告知(不告知型)において検討してはどうか」という事務局の問題提起に対し、委員から、検討に賛成するという意見や不告知型と情報提供義務の関係に関する質問等があった。

    イ 「不告知型について、不告知の故意要件を維持した上で、先行行為要件を削除する場合、取消しが認められる故意の不告知の対象となる事項をどのように限定するか」という事務局の問題提起に対し、委員から、先行行為要件を削除する案に反対する意見、取消しが認められる故意の不告知の対象となる事項を現行法の重要事項とする意見、重要事項概念の拡張と取消事由の関係に対する質問などがあった。

    ウ 「情報提供義務の法的義務化及び同義務違反の効果を損害賠償とする場合、情報提供義務の発生要件をどのように定めるか」という事務局の問題提起に対し、他の法律(金商法等)との比較をしてほしいとの意見や日弁連試案の提示等があった。

4.その他

 次回開催予定:平成27年7月10日(金)13時~

 

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