消費者契約法専門調査会のポイント(第21回)
森・濱田松本法律事務所
弁護士 須藤 克己
平成27年11月13日、内閣府消費者委員会において、第21回消費者契約法専門調査会が開催された。以下、その概要を報告する。なお、本報告において、意見に亘る部分は、すべて報告者の私見である。
1.配布資料
以下の資料が配布された。
配布資料
資料1 消費者契約法専門調査会「中間取りまとめ」に関する集中的な意見受付
資料2 消費者契約法専門調査会における今後の審議の進め方(案)
2.議事内容
事務局から、消費者契約法専門調査会「中間まとめ」に関する集中的な意見受付及び関係団体からのヒアリングの結果概要について、資料1に基づいて、各論点毎の意見件数(別紙1を参照)、意見受付及び関係団体からのヒアリングで寄せられた具体的意見(別紙2を参照)の紹介があり、質疑応答があった。
その後、資料2に基づき、今後の調査会の進め方について議論が行われた。なお、今後優先して議論すべき論点として示されたものは以下のとおり。
(1)契約締結過程
- • 「勧誘」要件の在り方(法第4条第1項、第2項、第3項)
- • 不利益事実の不告知(法第4条第2項)
- • 「重要事項」(法第4条第4項)
- • 不当勧誘行為に関するその他の類型
- • 第三者による不当勧誘(法第5条第1項)
- • 取消権の行使期間(法第7条第1項)
- • 不当勧誘行為に基づく意思表示の取消しの効果
(2)契約条項
- • 損害賠償額の予定・違約金条項(法第9条第1号)
- • 消費者の利益を一方的に害する条項(法第10条)
- • 不当条項の類型の追加
(3)その他の論点
- • 条項使用者不利の原則
3.質疑・議論の主な内容
(1)消費者契約法専門調査会「中間まとめ」に関する集中的な意見受付及び関係団体からのヒアリングの結果概要に関する質疑・意見
- • 寄せられた意見の全体の件数は別紙1で分かるが、意見の全体の傾向は示せないのか。(事務局:意見の内容にみて賛否の区分が付けづらいものもあり、意見の傾向については示していない。)
- • 別紙2はどのように取り扱うのか。(事務局:別紙2に書いてあることのみを今後の議論の前提にするわけではない。)
- • 事業者ヒアリングの中には、抽象的なおそれを述べるに過ぎないものや誤解に基づくものが多かったように思う。
- • 事業者の指摘が抽象的なのはどのように改正されるのかが抽象的であるからであり、改正により具体的に事業者がすべきことが明示されないと、委員と事業者の意見にズレが生じる。
- • 抽象的な意見でも反対意見を斟酌しないというのは短絡的。本調査会の外部にもわかってもらうようにすることが肝要。提案の意味が誤解されぬよう見せていくべきではないか。
- • 本調査会では、現状の課題に対する問題点は抑えていたと思うが、規制の網が広すぎないかという点から検討していくべきである。
- • 事業者側の心配の中には、本調査会の議論をよく見てもらえば誤解に過ぎないというものもあった。
- • 事業者が心配しすぎであるという先入観を持って議論をすることは避けるべきだ。
- • 法改正により事業者側でどのようなことが具体的に必要になるのか、実態として事業者が対応できるのかという視点が必要。
- • 法改正により具体的にどのような影響がでるのか、全方面から実例を具体的に提出してもらいたい。
- • 寄せられた意見の詳細を公表することで、気づきを得ることもあるのではないか。(事務局:全部を公表することはなかなか難しい。)
(2)消費者契約法専門調査会における今後の審議の進め方についての議論
- • 法改正の契機は、ネット・高齢化社会への対応、判例等の集積、民法(債権法分野)改正であったと思うが、民法の改正は早くて来年の通常国会であるから民法改正に関わる点は改正を待って、それ以外の点は先に、と二段階で議論してはどうか。
- • 民法改正に関わらず検討が必要な項目が並んでいるように思う。
- • 資料2で示されていない論点は議論が集約している等であると思うが、それらの論点をどのように取り扱うのかについて、事務局から示してほしい。
- • 人身損害の一部免責については論点に含まれているか。(事務局:不当条項の類型の追加に含めている。)
- • 資料2で示されていない論点は、議論しないのか。(事務局:当面優先的に検討すべき課題を挙げている。)
- • 資料2で示されている論点に派生してその他の条項(例えば目的規定等)も検討の対象になるものと考えられる。
- • 最終的な報告書には議論の内容もしっかり盛り込んでもらいたい。
- • 法改正により事業者に具体的にどのような影響がでるのか、事業者から実例を具体的に提出してもらいたい。
- • 消費者相談の現場では、消費者概念の拡張や法定追認について関心が高い。
- • 現在、解釈に拠り運用されている点について、仮に法文化が見送られるとしても、逐条解説等で明確化する方向が望ましいのではないか。
- • 資料2に挙げられている論点をみて、年内に議論が終わるのかと心配している。優先課題から議論してほしい。
- • 優先課題として、第4条関係を集中的に議論すべきではないか。
4.その他
次回開催予定:平成27年11月27日(金)15時~