◇SH0501◇法のかたち-所有と不法行為 第六話-2「フランス中世以来の土地の利用関係」 平井 進(2015/12/11)

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法のかたち-所有と不法行為

第六話 フランス中世以来の土地の利用関係

法学博士 (東北大学)

平 井    進

 

2  封建関係の変化-土地譲渡

 封建関係は、主君である領主と家臣(vassal)の軍事的な関係であり、本来、その地位と封土は一代限りのものであった。次第に、家臣の軍役関係を継続するために、長男に対する相続が認められるようになるが、その際に土地は一旦領主のものに戻り、領主が改めて家臣の相続人に授封することを許諾していた。さらに譲渡も認められるようになるが、その形式も同様であって、買主が新たに家臣として領主に忠誠を誓う儀式を行っていた。領主の諾否権限について、14世紀の慣習法では、この譲渡に際して証書が作成され、それが提出されると事実上、領主はその関係を拒否しないようになる。[1]

 このような変化は、最高レベルの封主である国王の権力が常備軍と官僚機構をもって集権化し、封建関係が形骸化することと関係する。

 ここにおいて、土地の利用関係の移転は、領主の諾否権限を離れて、公証人が作成する証書に表される当事者間の行為に変遷していく(領主の権限は、売買に関して課税するものとなる)。

 さて、オランダの(貿易による動産の)商業の発達を背景にして、グロティウスは所有権が合意によって移転するとし[2]、第一話ではこの関係について「取引的モーメント」と呼び、一方、農地利用の封建的な関係について「身分的モーメント」と呼んだ。

 「取引的モーメント」においては、その所有の観点は、占有の有無と無関係に商品の取引を決定する観念的な権能にある。一方、フランスのドマも売買は合意によって成立すると述べるのであるが[3]、これは、上記のように、土地利用に関する移転を封建的な関係から切り離す法概念として意味をもっていたように見える。彼は、(グロティウスにおけると異り、ローマ法の伝統により)引渡によって所有権が移転するとするのであり、その所有権の観点は占有による使用にあった。[4]これは、土地の利用関係を反映するものである。



[1] 参照、鎌田薫「フランス不動産譲渡法の史的考察(二)」民商法雑誌, 66 (4) (1972) 594-597頁。

[2] Cf. Hugo Grotius, De jure belli ac pacis, 1625, Lib. II, Cap. XII, 15, Richard Tuck, ed., The Rights of War and Peace, Book II, 2005. 鎌田薫「フランス不動産譲渡法の史的考察(四)」民商法雑誌, 66 (6) (1972) 1015頁も参照。

[3] J. Domat, Les Lois civiles dans leur ordre naturel, 1689, Œuvres complètes de J. Domat, Tome 1, 1828, Liv. 1, Tit. 2, Sec. 1, Art. 2, p. 156.

[4] 所有権を占有と享受(possession et jouissance)に見ることについて、Domat, supar, Liv. 1, Tit. 2, Sec. 2, Art. 3, p. 157.鎌田(四)・前掲, 1019頁も参照。

 

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